眠れないので

友達のお母さんが亡くなったらしい。

25歳の男友達。お母さんは誰とでも仲良くなれる楽しい人だと聞いていた。

胃がんが見つかったのは去年のことで、既にだいぶ進行していた。一度は落ち着いたようだったけれど、最近になって容体が悪化したらしい。


ーーー

眠れないから聞いてくれるだけでいいと言われ、電話でこれまでの流れを小一時間聴いた。

悲しみに涙を流す時間は数時間前に終わっていたらしく、電話越しの声は意外と吹っ切れているように聴こえた。ここ1週間の出来事を淡々と、いつも通りの口調で話してくれた。

わたし自身、身近な人を亡くした経験(記憶)がほぼなく、また彼のお母さんのことを直接知っているわけではなかったので、特にかける言葉も見つからず、というか何を言うのが正解なのかわからなくて、ただひたすら相槌を打っていた。

いつも通りのくだらない話もキリがなく、しばらく話をしてから電話を切った。


ーーー

深夜2:30。眠りにつこうと布団に入ったけれど、なんとなく目が覚めてしまって眠れない。必要のない思考が止めどなく出てくる。

さっきまでは普通の声だったけれど、また起きてリセットされたらきっと悲しみが湧いてくる。だから「こわくて眠れない(笑)」と言っていたんだろう。
顔が広くてお母さんのご友人に連絡するのが大変だったと言っていた。彼の彼女とも仲が良かったらしい。明るくて素敵なお母さんだったんだろうな。一度くらい会ってみたかったかも。
下の階に動かない母がいるって、どんな感情なんだろう。想像はできるけれどやっぱりどこか他人事で、ふわふわしてうまく考えられない。
もしわたしの母がいきなり亡くなったとしたら。そう考えて少し怖くなったけれど、本質的な感情はわからなかった。当事者にならないとわからないことだし、人によっても違うだろう。


ーーー

「悪いことをした人にはバチが当たる」
「世の中ずる賢い人の方が得をする」

世の中は悪い人良い人に対していろんなことを言うけれど、彼のお母さんも彼も悪いことをしたわけでもない。けれど彼のお母さんはがんになり、彼に降りかかっているのは「母の死」という紛れもない不幸。

病気は運だ。

だって誰も悪くない。

そりゃ決定的な原因を外側から作ることだってできるけれど、それを除いた場合のはなし。もともとそういう遺伝子の人だっているし、いくら予防をしていても、偶然の積み重ねで患うことはある。目が悪くなりやすい人となりにくい人がいるのと同じ。


ーーー

とても不謹慎な言い方かもしれないけれど、自分の周囲が健康であることの幸せを少し感じた。大事にしなければ。

彼も自分の健康に気をつけてほしい。

少し考えさせられる出来事だった。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?