読書感想文「社会心理学講義<閉ざされた社会>と<開かれた社会>」

普通に生きていると、「なんでそうなるんだろう」と不思議に思うような言動をするときが、往々にしてある。
歴史を紐解けば、人間は戦争を繰り返し、残酷な殺戮を犯したり、現代でもその行動は続き、個人として猟奇的な殺人を犯す。

本書は、そういった「社会」という集団としての心理を研究する社会心理学を批判的に検証していく一冊である。
正直かなり内容としては難しく(自分の理解が愚かなのかもしれないが)、読むのにかなり時間がかかった。
すぐ内容忘れるのでノートを取りながら読んだ。それでも、かなり充実して読み応えがあり、終始新たな発見のある一冊であった。

本書の中で特に面白いなと思ったのは、モスコヴィッシの「少数派影響理論」を説明した回であった。

近年話題にあがる、「陰謀論」が跋扈する現象について、なんでこんなに勢力が強いように見えるのだろうか?と最近ふと疑問に思っていた。

その一つの答えかなとも思っているのだが、真っ当なことを言われている場合は、その意見に対して従属的に判断に従う。ただし、それに対して反対意見を唱える人が、それも複数(それでも全体の中では一部でしかないのだが)一貫性を持って現れた場合、既存の自分の認識に対して疑いを持ち、その少数派意見を納得するようになるというものである。

詳細な根拠や実験の詳細は、本書内を見ていただきたいとして、そういった揺らぎから確証バイアスが強まり、陰謀論が強まるという形になるのではないかと思っている。陰謀論でいうと迷惑な印象だが、少数派の影響というのはこと数で画一的になりがちな多数決に基づく民主主義の行き過ぎを抑止するのにも役立っている。

例えば、LGBTQ+の問題。数的にはマイノリティと言われる部分である。自分の意見と違う少数派の意見が現れた際に、「多数に従う」という認知機能だけでは、マイノリティの人々が淘汰されてしまう。「少数派影響理論」はこうしてマイノリティが影響力を持ちながら存続をし続ける理由をうまく説明できていると思う。

こういった、人間の集団としての生き方を、難解ながらも歴史を踏まえながら巧妙に論を進める本書は、新しい知見を得たい人におすすめの一緒と言える。

おわり。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?