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壊れそうな我が家のはなし(16)

ケアマネをしている従妹Yは、実父の妹の一番下の娘だ。
厳格な実父の元に、実父の弟・妹たちはあまり寄ってこず、祖父母の法事の時に「連れてこられる」従妹たちとの交流はなかったので、私自身には彼女と幼いころに遊んだ記憶は全くなく、大人になってからも必要最低限にしか交流しなかった。
それでも、実母は実父の弟・妹たちのことは常に気にしており、ことあるごとに連絡はしていた。
例のクラッシックのコンサートの時、Yが実母に気づいたのも、二人の間にしっかりとした交流があったからで、例えばこれが私とYが街でばったり、だとしても、私は彼女に気づかないし、もし彼女が気づいていたとしても声はかけづらかったかもしれない。

実父の認知症の話は常にYに届けられていて、彼女もいろいろと気にかけていてくれていた。
我が家からの「依頼」がないので、特に何かを勧められることはなかったが、それでも、実父が認知症専門の病院に行くようになったころには実母の質問に答えるアドバイザーであったようだし、ショートケアからデイケアに代わるころもその動きは把握してくれていた。

ここまで書くことをすっかり忘れていたことだが、認知症以前に糖尿病を患っていた実父は足がむくんでいてつまずくことも多く、家の中の段差が気になるようになったころ、Yに初めて依頼し介護保険を利用して、家の中のバリアフリー化を図ったことがある。
敷居を4カ所平らにして、手すりを玄関と風呂場に3本付けたり、更に床に布団を敷いて寝ていたのを変えようとベッドをレンタルしたりもした。

そんな彼女に、正式に、実父を委ねられる施設がないか、私と実母は相談し始めた。

まず、高齢者の施設の種類の多さに驚いた。

「老人ホーム」というそれは、介護対象や、介護の内容によって、いろいろと種類があるなど、Yに教えてもらうまで知らなかった。

当時の実父はかなり認知症は進んでいるものの、「要介護度1」だったことから、数種類ある「老人ホーム」の中から、特に認知症に対応している「グループホーム」を探すことにした。
「グループホーム」は「認知症対応型生活介護」とも言うらしく、自分のできることを職員さんに手助けされながら行うことで、生活するためのリハビリをする施設。もう少し要介護度が高い人なら「特別養護老人ホーム(特養)」、金銭的に余裕があるなら「有料老人ホーム」という手段もあるらしい。なお、実父よりもっと軽度の認知症の人が入れる「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」というのもあるようだ。
※種類については私自身も話は聞きつつもYにほぼお任せで、あまり詳しくないので、詳細を知りたい場合はご自分で調べてみてください。
このくだりを書くのに参考にしたのはLIFULL介護です。

いざ、グループホームを探そうという段階になり(それでも、何度も逃亡され、言い争ってきた実母でも、まだ難色を示すこともあったが)、Yに依頼して見学できるところを探そうという段階で、各施設、問い合わせても見学ができないところが多かった。

新型コロナウイルスの蔓延のせいだ。

特効薬もなく、予防接種もないそのころ、唯一の防御は「外部の人との接触を避ける」。マスクも十分な数が確保できなかったころだ。

幾つか見学したい施設はあったものの、ここは一旦とりやめて、様子を見ることにした。

やがて温かい時期が来て、息子も長めの春休みが終了。
実父も、物忘れとか徘徊とかがひどいながらも、心なしか落ち着いたと思っていたのだが、コロナ禍でも、事を性急に進めなければならない事態になった。

(続く)

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