第2回 プラマイゼロの幸福論 / Youtube用台本
イントロ
このチャンネルは、1978年生まれの就職氷河期世代の当事者である私が、目前に迫ってきた50代を見据えて「これから」を考える動画を投稿しています。
「これからを考える」とある通り、就職氷河期世代の過去についての言及や検証は、ほかのチャンネルにお任せし、あくまで我々当事者の現在と未来を見据えてお話する方針でやってまいります。
また、コメント欄などで、視聴者の方々と交流を図りながら、私一人では到達できない視点や知見を得られれば、これ以上有意義なことはないと考えています。
どうか、お気軽にコメントを書き込んで下さいますと幸いです。
何卒よろしくお願いします。
医療と繋がるメリット
第2回目は、メンタルヘルスをテーマにお話いたします。
私は精神科医でもカウンセラーでもありませんので、医療情報などについてはお話できません。もしより深い専門的な知識が必要なかたは、精神科を受診して、正しい情報を収集していただければと存じます。
本動画におきましては、あくまで私個人の体験であり、素人の所見となりますので、あらかじめご承知おきくださいますよう、お願いします。
それでは本編に入ります。
就職氷河期世代の負け組に、ほぼ初期デッキとして組み込まれているカードが「メンタルヘルスの不調」ですね。
私もきちんと精神科の先生からうつ病の診断書をいただいています。
現在は寛解していますが、精神科の受診のきっかけとなったパニック障害から数えると、おおよそ15年ほど治療を続けていました。
私から特におすすめしたいのは、少しでもメンタルヘルスに不安を抱える方は、早めに精神科を受診することです。
当チャンネルの視聴者は、40代以上のかたを想定していますが、この年齢になると何かしら体に弱点が生まれてきますが、その弱点をケアしてくれるかかりつけ医を見つけることは、非常に重要です。
色々な考え方や、ポリシーのかたがいらっしゃいますので、押しつけがましいことはお話したくありませんが、健康面で不安が生まれた場合は、やはり病院に行くのが最も効率が良いと思います。
情報も正確ですし、薬も安いです。
とはいえ、私も若い頃は、通院をやめてしまったり、服薬を勝手に中断したりと、あまり良い患者ではありませんでした。
その結果、余計に症状が悪化して、長期間治療を続けなければならなくなり、遠回りをしてしまったと反省しています。
私の主治医からの受け売りですが、40代以上は、上手に薬を使いながら体を整えた方が安全だ、と。
これはメンタルヘルスに限らず、生活習慣病全般に言えることですね。
生活習慣を正したり、食事を見直したり、定期的に運動するといったことも大切ですが、若い頃のような回復力は期待できないので、足りない部分は薬の力を借りていこうということです。
私は長年睡眠の質の悪さに悩まされていました。
寝つきは良いのですが、長時間寝続けることができませんでした。
ストレスでメンタルがやられていると、一旦寝付いても3時間くらいで目が覚めてしまうのですね。
同じ睡眠を助ける薬でも、寝付けない人と寝続けられない人では、適切な薬は変わりますので、それを正確に判断し処方してくれるのは、やはり病院の先生です。
また主治医と長期間コミュニケーションを重ねる中で、発達障害の検査を勧められ、ASDの診断がつきました。
そこからカウンセラーの力も借りながら、自分の特性と向き合うことも始め、長い時間はかかりましたが、かなり「生きづらさ」を減らしていくことができるようになりました。
医療機関に悪い印象を持つかたもいらっしゃることは存じ上げていますので、あくまで私の場合は、医療と繋がることで上手くいったし、問題解決に至る最短ルートを取れた、とだけお伝えします。
元気がなければ何もできない
うつ病を発症してわかったことは、人は元気がなければ何もできない、ということです。
どんなに理屈の上では正しいこと、合理的な判断だと、頭では理解できていても、やる気が起きなければ行動できません。
次の仕事を決めてから、今の仕事を辞めるべきだよね
→うん、わかるけど、気持ちが追い付かなくて行動できない。
仲間内の集まりには顔だけでも出しておいた方がいいよね
→うん、わかるけど、気持ちが追い付かなくて行動できない。
副業でも始めて、NISAやiDeCoに突っ込む分も稼ぎたいよね
→うん、わかるけど、気持ちが追い付かなくて行動できない。
リーマンショックで色々ズタズタになって、初期の適応障害を発症してからの15年余りを振り返ると、我ながら実に非合理的な行動を選択してきました。
何もメンタル面ばかりが原因ではなく、純粋に知識や経験が不足していて良い選択ができなかった、という点も認めるところではありますが、それを差し引いても「頭で理解していても、気持ちが追い付かない」という理由で損をしてきた実感が多々あります。
もしこの動画を視聴して下さっているあなたが、メンタル面で不調を抱えているのであれば、まずあなたがコミットするべきはその問題であることは明白です。
元気がなければ、全ての知識は無駄になります。
もっと言えば、外から吸収する知識やノウハウだけでなく、元気がない時に捻りだした、あなた自身の中から出てきたアイデアや思考や仮説やシナリオも、おそらくあまり良い結果を導いてくれません。
どんなに素晴らしいアイデアや思考も、それを実行するための精神が伴わなければ、ただの妄想です。
つくづく、人は活力あってこそ、なのです。
まずはプラマイゼロを目指そう
うつ病とまでいかなくても、「なんだかやる気が出ない」「朝目が覚めても気分が落ち込んでいる」「仕事が終わった後の予定を考えても、ワクワクしない」というようなことに当てはまれば、あなたの人生はマイナスゾーンにたゆたっています。
これをプラスゾーンに持っていくことを、当座の目標にするとして、ファーストステップはせめてプラマイゼロの地点まで整えるべきかと思います。
まずは、マイナスではない、というところからスタートです。
では、どうすれば人生をマイナスからプラマイゼロまで持っていけるでしょうか。
その具体的な道筋は、その人が置かれている状況により答えは変わるので、一概にこう、とは言えませんが、この動画では、できるだけ多くの人にとってヒントになるかもしれない「考え方」をお話してみようかと思います。
プラマイゼロは、朝起きても、良くも悪くも何の感情も湧いてこないくらいのコンディションです。
特別楽しい気持ちにもならないけど、憂鬱な気持ちにもならない。
今でも、はっきり覚えているのですが、私がうつ病の薬を飲み始めた時、だいたい2週間くらい経ったくらいに、こういう朝を経験しました。
これまで、「憂鬱な気分を和らげるお薬です」と言われても、効いているのか効いていないのか、よくわからない状態が続いていましたが、その朝は「あれ。なんか気分が下がってないな」とふと気づいたのです。
幸福感とは全く違います。
なんだか胸がざわざわする不安感のようなものが、その朝は1ミリも感じなかったのです。
今思えば、これが自分にとってのプラマイゼロの朝でした。
どこかの公園のベンチで、缶コーヒーでも飲みながら、落ち着いて、時間も他人の目も気にしなくて良い環境で、自分自身とじっくり語り合って欲しいのですが、まず自分に嫌な感情をもたらす要素を整理してみてください。
そして、自分をマイナスに貶める要素を排除した生活を想像してください。
嫌な上司に会わなくていい、カードの支払いもしなくていい、目覚まし時計をセットしないで好きなだけ寝ていてもいい…
それが、当座あなたが目指す生活です。
つらくて悲しい生活を、永遠には続けられない
目指すべき生活のイメージが出来上がったとしても、すぐにそれが実現できるわけではありません。
いくら嫌だからと言って、生活費を考えると明日からすぱっと仕事を辞めるわけにもいかないですし、自分にマイナスな影響を与えてくる人と縁を切るのも、それなりのプロセスがあります。
しかし、1つだけ心に留めていただきたいことがあります。
あなたは、あなたが心底望んでいることからは、自由になれないのです。
つらくて悲しい生活を、永遠には続けられないのです。
もし、自分の外側のマイナス要素を排除できず、心が限界を迎えたとするとどうなるでしょう。
そうですね、環境を変えられないならばと、自分の命を絶つという選択肢が浮かび上がるわけです。
私はコロナ禍で思うように仕事が見つからない時期、「いのちの電話」の電話相談員の活動をしていました。
そこで知ったことは、命を絶ちたくなるほど思い悩んでいても、それでもなかなか人は問題を解決するために合理的な行動を選び取るのは難しいということです。
配偶者の暴力に悩んでいても離婚を決意できないし、仕事がつらくて仕方がなくても退職届を出すまでには葛藤するし、明日の食費にも不安があっても役所の福祉課に相談に行かないのです。
私自身も、自分のうつ症状がひどくなる一方の状況で、母が末期がんに冒され余命宣告を出され、心労が限界に達しましたが、それでも仕事を続けようとして、周囲にも自分にも平気だと言い続けていました。
ある日、母ががんの影響で失明するかもしれないと言われてしまい、途方に暮れて、視覚障害者を支える福祉団体に相談に行きました。
そこで自分の状況を説明した席で言われたのです。
「お母さんも大変だが、あなたはもっと大変だ」と、自分のために役所の福祉課に相談に行くべきだと勧められたのです。
それから福祉課の担当者のアドバイスにより、一旦仕事を辞めて、生活保護を受けながら、母の闘病を支えることと、自分のうつ病の治療を進めることに専念する生活に入っていくことを決断できました。
ここまで他者に背中を押されて、やっとその決断ができました。
しかし、この動画をご視聴くださっているかたには、こんな風に背中を押してくれる人が周囲にいない人もたくさんおられるでしょう。
だから、私からお伝えします。
どうか、ご自身の生活を見直してください。
視野が狭くなっていないかを、確認してください。
つらくて悲しい生活を、永遠には続けられないことを知ってください。
できれば、自らの命を絶つという解決方法を選ばないでください。
楽しいことがあるから幸せなのではなく、苦しめることが見当たらないと安堵した時、幸福を感じる
朝目が覚めて、特段楽しくなくてもいいです。
「ああ、今日も面倒くさい…つらい…消えてしまいたい…」というマイナスの感情がそこにないのであれば、まずは良しとしましょう。
プラスではないけどマイナスでもない、プラマイゼロでいいじゃないですか。
まずは「ああ、今日も面倒くさい…つらい…消えてしまいたい…」という感情を排除するように行動や決断をしてください。
それ以上に、いまのあなたに重要なことは何一つありません。
その過程で、妥協と言いますか、これまで続けていた何かを諦めなければならない決断を伴うかもしれません。
大切にしたい人がいる。
追いかけている夢や目標がある。
お金だって失いたくない。
わかります。
痛いほどわかりますが、いずれも元気が出ない人が、守り通せるようなシロモノではありません。
むしろ手遅れにならないように、少しでも、手元に何か残るように、1日でも早く、プラマイゼロの朝を取り戻してください。
また社会に復帰するにせよ、少し早い隠居生活に入るにせよ、元気な心を取り戻してから、あれこれと未来を思い描けばいいことです。
マイナスゾーンから抜け出すために、仕事や人間関係など、様々な断捨離を行った結果、大切な人を失ったり、口座の残高がゼロになったり、何のために生きるのかわからなくなったとしても、あなたを苦しめるものが、何一つなくなったと安心できることは、何にも代え難い幸福です。
人は、楽しいことがあるから幸せなのではなく、苦しめることが見当たらないと安堵した時、幸福を感じるのだと思います。
私自身がプラマイゼロの朝を迎えた時は、築き上げたキャリアはなくなり、お金になりそうなものはあらかた処分し、多くの人間関係が途絶えていました。
それから月日が経って、母を見送った後は、自分の人生の棚卸を続ける日々でした。
随分とシンプルになった生活を、物が少なくなった静かなアパートの部屋で思い返していると、ふと「あ、もう、精神科に行かなくてもいいかもしれない」と思える日が訪れたのです。
それから、随分と久しぶりに、パソコンの電源を入れ、誰かに読んでもらうための文章を書き始めました。
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