見出し画像

映画「風が吹くとき」を見てきたけど!

現在、名作アニメ映画「風が吹くとき」がリバイバル上映中です!映画館で見られるまたとないチャンスとあって、僕も仕事前に見てきました。結果として、仕事前に見るべき映画では無かったのでした。

なんだか久しぶりに漫画「はだしのゲン」を思い出しましたね。漫画を思い出したというか、初めて読んだ時の気分が悪くなる感じを思い出しました。幼い頃、岐阜の祖父母の家に遊びに行くと田舎すぎて何もやることが無くて、仕方なく本棚にあったはだしのゲンをひたすら読んでいました。読めば読むほど気分が悪くなって食欲が無くなったのが懐かしいです。原爆は落ちた瞬間も恐ろしいけど、落ちたあとが最も恐ろしいんですよね。爆心地にいた人たちはあまりの高熱で瞬間的に蒸発してしまったそうですが、少し離れた場所で被曝した人たちは爆風から生き残ったとしても少しずつ身体を蝕まれる生き地獄が待っているわけです。原爆が恐ろしいのはこの部分ですよね。目に見えない放射線の恐怖です。

風が吹くときも核爆弾が落ちるまでは笑えるほど能天気です。主人公たち老夫婦は敵の核攻撃に備えるということで、政府のパンフレットにある全く役に立たなさそうな身の守り方を参考に準備を進めるんですけど、そのいい加減さが笑えますし(このパンフレットは冷戦当時、本当にイギリス政府が国民に配ったものだそうで笑えないが)。でも逆に言えば、核戦争が起きてしまったときの正しい対処法なんて、政府にも国民にも誰にも分からないということですよね。放射線の恐怖がある限り、こうすれば助かるかもしれないという望みは既に断たれています。二人が昔の戦争(第二次世界大戦)を懐かしむのが印象的ですね。昔はチャーチルがいてヒトラーがいてスターリンがいた。誰と誰が戦っているのか、分かりやすかった。つまりまだ理解の範疇にある戦争だったというのです。もし核戦争になるとしたら、やはりそれはソ連から爆弾が落とされるのだろう。そうしたら家にソ連兵がやってくるかもしれないから、その時は戦うしかない…と予想したりするんですけど、本当に攻めてくるのは人間ではなく放射線なのです。核戦争というものが如何に人の手から離れてしまっている戦争なのかを物語っています。

実際に核爆弾が落とされてしまいましたが、二人はかろうじて生き残りました。けれど、ここからが辛いですよね。少しずつ身体が蝕まれていく描写がとてもリアルです。結局政府のパンフレットにあった対処法は全然役に立たなかったんですけど、二人は最後まで政府を信じていました。二人の家はイギリスの田舎にあって、核爆弾が落ちてからは電気水道通信が止まり、新聞配達も無くなったことで完全な孤立状態になり、とにかく政府の救出作戦があるに違いないと信じるしか無いんですよね。このような孤立状態を映画館という密閉空間で見守るのはとても辛い体験でした。

結局核戦争に対応できる政府も人間も存在しないというお伽噺なんですけど、誰にも責任が取れない兵器で溢れている世界、怖いですね〜。博士の異常な愛情のブラックユーモアじゃないですけど、もう誰にも止められないでしょうね。やっぱり庶民に出来ることは家のドアを外して斜め60度の角度で立てかけておくことぐらいなんだと思います。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?