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映画「枯れ葉」を見てきたけど

2024年最初の映画はカウリスマキ監督の映画「枯れ葉」です。

最近、会社の先輩が日本の一部のドラマのことを「自分語りが多い女が出てきて泣いたり叫んだりする映像作品」とやや過激に総括しているのですが、とりあえずその是非は一旦置いておくとして、この映画はそんな演出とは対極にある作品になっています。

この決して派手ではないロマンス映画は連日満席になっているようで、僕が映画を見た元旦の夕方もかなり混み合っていました。上映時間は80分とコンパクトですが、その間に世界が終わるわけでもないし、大いなる陰謀と戦ったり、度肝を抜くような物語が展開されるわけでもありません。

それなのにどうしようもなく面白いんですよね。「自分語りが多い女が出てきて泣いたり叫んだりする映像作品」と言われている作品というのは、そうしなければ観客に演出的意図がちゃんと伝わらないのではないか?と演者も演出者も考えているからそうしているんですよねおそらく。つまり、観客のことも演じている役者のことも信じていないということなのかもしれない。

でも枯れ葉みたいな映画を見ると、そんなことをしなくてもちゃんと伝わるって分かります。基本的に登場人物は全員無表情。でも、どんな気持ちなのかは見ていればひしひしと伝わります。演出が良いからですね。

この映画の特徴として音楽の存在も欠かせないですね。いきなり竹田の子守唄がラジオから流れた時は驚きました。竹田の子守唄は日本の民謡というか赤い鳥の歌で、子守奉公に出た女の子の気持ちを歌ったものですが、フォークソングとしてささやかに有名なのだろうか?

こんな調子で心に沁みていく音楽が次々と流れます。パンフレットを確認すると14曲もの歌が劇中で流れているようで、80分という上映時間を考えたらかなりいろんな種類の音楽が使われているなと感じました。一方で、二人が食事をするシーンは一切音楽がなくて、唯一の音としてはウクライナ戦争の惨状を伝えるラジオだけという嫌がらせのようなシーンもあったりして、良い緊張感を味わうことができたりと、地味ではあるんですが80分全然退屈しませんでした。

映画で使われたなかでも特に印象が残るのがこの歌です。タイトルは「悲しみに生まれ、失望を身に纏う」という邦題になるらしいです。

家でゴロゴロしてるけど 理由もなく出かけない
私は忘れて 独りでいたい
生来の悲しみに 幻滅をまとって

私は囚人 永遠に
墓場すらフェンスだらけ
この世で寿命が尽きたら
地中深くに埋めてほしい

映画本編の歌詞翻訳より

みたいな歌詞の歌を主人公がバーで聴いているだけのシーンなんですが、じわ〜〜〜と主人公の気持ちが少しずつ動いていくのが分かったりして渋い。逆君の名はみたいな演出ですね。結構いい歌だなあと思ったりしたのですが、ネット上で歌詞の翻訳が全然見つかりません。この歌詞を知るためだけに映画のBlu-rayを購入しようか迷っております。

新年一発目の映画としては地味すぎるかもしれませんが、僕はむしろこんなに静かでちゃんと面白い映画を見ることが出来て静かにテンション上がりっぱなしでした。2024年を開始するキャリブレーションに最適な映画だと思います。

映画で使われていた歌がSpotifyのプレイリストにまとめられている。プログラムを知るためにパンフレットを買う必要もない、便利な時代になりましたね。

2024年こそは見た映画を全部noteに記録できたら良いな〜と思っております。(元旦に決意してすでに2週間が経っていますが…)
今年もよろしくお願いします。

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