「8年前の悪夢-1」潰瘍性大腸炎入院日記#2

長期間血便が止まらない地獄のような日々。今の状況は、あの8年前に苦しんだ悪夢そっくりだった。

あのとき自分は、まあまあブラック目な企業でグラフィックデザイナーのようなことをしていた。会社はマイナーなスポーツウェアのメーカーで、ECサイトや電話やFAXで注文を受けて、ママさんバレーのユニフォームや、学園祭Tシャツ、部活のトレーナーなどのプリントを希望に沿ってデザインしてあげる、といった業務内容だった。

社長は四六時中ヒステリックかつ理不尽な怒号を社員や電話の先の相手にぶつけていて、

「己は警察官部と知り合いだ」

とか

「亀井静香と知り合いだ」

とか

「殺したろか」

とか、だから何だということをいつも喚いていた。

自分はこういう人物とつかず離れず距離感を保ち、何故かあまり標的にならない特殊能力があるので直接の実害は無かったものの、其れでも相当のストレスを感じていた。

サービスの価格設定も社長が決めたのだがぶっとんでいた。

オリジナルプリントをデザインする部分はフルオーダーなのに本体価格に含まれていて、かつ他社がデザインデータ入稿でプリントする価格よりちょっと安いぐらいだった。それを成り立たせるために下請けのプリント業者に無理をさせて漸く利益が出るか出ないか、といった有様だった。

ちょっとまともな方ならすぐ浮かぶ疑問だが、じゃあデザイナーの給料はどこから出るのかという話だ。潰れるのは時間の問題だと思いつつ働いていた。だが、なかなかすぐには潰れない。

社長には、社長に必要と思われる資質の一つが群を抜いた高さを誇っていた。
資金調達能力だ。

社長をやったことがないから知らないが、自分が思うに社長に必要な資質とは、「事業がうまく広がるよう道を示すこと」「資金繰りがうまく回るようにすること」だと思う。

此れ等が出来ていれば会社に来なかろうが遊んでようが好きにしたらよいと個人的には思う。

社長は此の2つのうち片方は無茶苦茶であったが、どこからともなく金を借りてくる能力が非常に高かった。

会社は赤字になったら倒産するのではなく、借金ができなくなった瞬間に倒産するので、儲かってないはずのこの会社はしぶとく潰れずに生き残った。

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