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ドレイモンド・ウィスパラー

ウォリアーズのGMのボブ・マイヤーズが、プレーオフ進出のタイブレイカーがかかった大事なペリカンズ戦でコーチたちにブチギレてたドレイモンド・グリーンの態度を一瞬で180度変えてしまった投稿があまりにも反響が大きかったので、その事についてまとめてみました。

その日ドレイモンドにはキレる兆候が1Qから見られたとマイヤーズが明かしました。マイヤーズ:「私たちが良いプレーをしていたなかった1Qで、ドレイモンドは私に『私たちは集中していない!』と叫んでいたんだ。私の妻は『彼は何をやっているの?』と言った。私は『わからない。彼は私たちは集中していない!と言っている』と言った。私はそこに座って『私に何をして欲しいんだ?』と思っていた。そして私は『ただプレーし続けろ』と口にしていた。でも彼は悪くない。私たちのチームにはフォーカスがなかった」

そして前半の終盤にこのプレーでドレイモンドがテクニカルを受けます。これで、ドレイモンドのテクニカルは総合17本になり、この試合中にあとひとつテクニカルを受ければ、この試合退場+次の試合自動的に出場停止になる状況になってしまいます。

しかし、そのすぐ後に、ドレイモンドはハーブ・ジョーンズともつれてしまい、あやうくまたテクニカルを受けそうになってしまいました。

こうなると、もうドレイモンドは止まりません。彼はそんな事はおかまいなしにヒートアップしてしまったように見えます。このハーブとのマッチアップを見てください。

これを見たウォリアーズのヘッドコーチのスティーヴ・カーがドレイモンドをベンチに下げます。スティーヴ・カーはその事を振り返り、「アトキンソン(アシスタント)がやって来て、ドレイモンドのファウルが3本だと伝えられた。そして私はドレイモンドの目を見て、そして彼がどう振舞っているのか見て、『オーライ、ファウルが4つになる、彼を下げるべきだ』と思った。それが2つ目だったら変えていなかった」と話しています。ドレイモンドも興奮し過ぎたのか、自分の交代に気づかずに、トラッシュトークしていたハーブから「あなたのコーチがあなたを交代したよ」と知らされてしまいます。

また、カーによると、この試合でドレイモンドは「誰であろうと叫んでいた。相手チーム、自分のチーム、コーチたち、審判、彼の通り道にいる全員に叫んでいた」そうです。

このような経緯が冒頭の問題のシーンに繋がったように思います。それは試合4Q残り4:48で起きました。ファウルが5つになってしまうグリーンはベンチにチャレンジを頼みましたが、ヘッドコーチのスティーヴ・カーはチャレンジしませんでした。それでドレイモンドはなぜかキレてしまいます。この時、観客戦から試合を見ていたボブ・マイヤーズが自分の席から降りてきて、ドレイモンドに何かを言いました。最初は顔を横に降っていたドレイモンドですが、数秒後にはうなずきながら大人しくなり、マイヤーズとダップしてハドルに戻って行きました。

試合後にドレイモンドがこの時にマイヤーズから何を言われたのか明かしました。「彼は降りてきて、『聞いてくれ。わかった。あなたは自分が正しいと証明したし、あなたは正しいかもしれない。でももしあなたが離れてしまえば、みんながあなたの後ろに続く。もしあなたが今戻ってハドルに入れば、みんながそれに続く』と言った。私はハドルに戻ってチームメイトたちにリードをもっと広げるようにチャレンジした」

ドレイモンドは続けます。「あなたたちみんなはいつもボブの仕事をチームをつくっている以外には見ていない。でも彼は私たちがする全ての事にとても大切なんだ… 他のGMは、ボブがこのチームの状況を把握しているほどそれを把握していない。実際に席から降りてきて(選手に)何か言えるのは、今リーグで他にふたりいるくらいだろう。そして、彼は私が最大限リスペクトする人だ。もしボブがやって来て、私に何か伝えたら、それは私にとってバイブル(聖書)だ。私はそれを聞く。でもその関係は11年以上の時間でつくりあげてきたもので、その関係はこれからの40年成長し続けていく。その時に彼が降りてきて、私に何かを言う。それには尊敬の念を持つ、それは大きかった」

ステフ・カリーもそれについて、「それはまた良い例だ。それが19,000人の前かベンチか、電話かテキストか会話か、それがなんであれ、彼の見方には大きな信頼がある。彼はそんなによく降りてこない…タイミングがよかった。ドレイモンドはそれに反応した。なぜなら彼はボブの見ている事を信用しているからだ。私はその時彼が何を言ったのか知らなかったが、それがロッカールームの中だろうが、練習でだろうが、コートの外でだろうが、アリーナの外でだろうが、それがどこであれ、それは役立って、私たちは彼が言った事に応える」と言いました。

マイヤーズもあまりそんな事はしないそうで、この日は特別だったようです。マイヤーズ:「彼(ドレイモンド)は1Qに話し始めて、私が見たものはあなたたちが見たものと同じだ。彼は違う場所にいた。そして私はそれ(話をしに降りて行く)はしない。時々私は降りて行って、イグォダラがプレーしていない時に彼と話す。なぜなら彼はハドルにいるからだ」

カー曰く、マイヤーズは試合中には選手たちとは話しませんが、選手たちとは試合と試合の間に話をしているそうです。カーは、シーズンは長いため、自分の声だけで乗り越えるのは厳しいので、マイヤーズの声があるのはすごく助かっていると話をしています。「彼の仕事はただドラフトや選手との契約や選手たちのトレードする事をはるかに超えている。それは球団の全体的なマネジメントだ。彼の選手たちとのコミュニケーションが私がシーズンをうまく舵取りして行くのを助けてくれる。それは私にとってとても貴重なものだ。ボブはあらゆる方向に於いて優れたコミュニケーショナーで、素晴らしい友人だ」

私がマイヤーズのエピソードでもっとも印象的だったのは、マイヤーズは「ミーティングでは人が話す事に自分の考えの影響を与えたくないため、いちばん最後に話すようにしている」と言っていた事です。せっかく優秀な人たちを集めたのだから、彼らの素直な意見を聞きたいからそうしているそうです。ちょっとどのインタビューで言っていたのか思い出せないのですが、すばらしいリーダーだと感じたのを覚えています。他には、2016年のNBAファイナルズでドレイモンドが出場停止処分を受けて試合に出れなかった時、マイヤーズはドレイモンドを気づかって、アリーナ席ではなくドレイモンドといっしょにTVで試合を観ていたとか、2019年のNBAファイナルズのゲーム5でケヴィン・デュラントがアキレス腱を切った時も、彼につきそっていた時にマイヤーズはKDのために泣いていたとかありました。人間がすばらしく良くできていてEQが高いのだと思います。

そんなマイヤーズは今「Lead by Example」というポッドキャストのホストをしていて、様々な分野のリーダーをゲストに迎えてトークしています。これまでに、ディズニーのCEOのボブ・アイガーや、カリフォルニア州知事のギャビン・ニューソム、NBAコミッショナーのアダム・シルヴァーらが登場しているので、気になる方は聞いてみてください。シーズン1のラストは「部下」のスティーヴ・カーでした。

そんなマイヤーズの契約は今年限りです。まだ契約延長/再契約の交渉中らしいですが、契約がうまくまとまるといいですね。選手やコーチだけでなくファンもそれを望んでいると思うので、ぜひオーナーのレイコブにはマイヤーズにはケチらずに適正価格(リーグトップ)を払って欲しいですね。


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