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ステフ・カリーの50点:チームへのスピーチと約束

ウォリアーズのステフ・カリーが、カンファレンス・セミファイナルズ進出を賭けたキングスとのゲーム7で50得点してチームを助けました。プレーオフのゲーム7での50得点はNBA史上最多だそうです。しかもアウェーの試合で、プレー時間は38分、100ポゼッションに換算すると62.5点の大活躍です。

カリーがオフェンスモードに入ってオフェンスのマインドがマックスに達する時は、通常彼はスクリーンを必要としないそうです。カリーが試合の序盤で相手のウィークポイントをアタックするためにスクリーンをはらいのけていたのを見て、チームメイトのケヴォン・ルーニーは試合は決まったと感じたそうです。前のゲーム6から36時間しかたっていない厳しいスケジュールの中、負けたらシーズン終了になるようなプレッシャーが大きくかかる試合でそのような素晴らしいパフォーマンスを発揮できるのは流石だと思います。ESPNのスティーヴン・A・スミスは、カリーは史上最高のPGの議論があがるべきだと言っている程です。

このように、カリーはウォリアーズのシーズンを救った訳ですが、どうやらそれはゲーム7の前からはじまっていたそうです。The Athleticのシャムズ・チャラニアとマーカス・トンプソンが、カリーの50得点は「ウォリアーズへのスピーチと約束」で試合前からはじまっていたとレポートしていたので紹介します。

ウォリアーズへのスピーチと約束

ウォリアーズは3-2で迎えたキンスとのゲーム6をホームのチェイス・センターで118対99で落としてしまいます。得点差からもわかるように、試合内容もいいところありませんでした。The Athelticのアンソニー・スレイターによると、この試合でのウォリアーズの選手たちの息は重く、キングスは「彼らは疲れている、走り続けろ」と言っていたそうです。それ程ウォリアーズは劣勢に陥っていていて、ゲーム7でキングスをどう止めるのか答えが1日半で出るのか不安になるような内容でした。カリーはその試合での負け方も、プレーも、チームメイトたちの交流の仕方も気に入らなかったそうです。

The Athleticのティム・カワカミによると、その試合後のウォリアーズのロッカールームには、カリーとドレイモンド・グリーンとクレイ・トンプソンだけが残っていて、3人は何も話さずにただ座っていただけだったそうです。ドレイモンドも敗戦については「腹に一撃を食らったかのようだった」と認めていた程なので、それだけホームでの敗戦と試合内容がショックだったのでしょう。

その夜、カリーは自分たちのプレーにむかつき、チームが一致団結していなかった事に失望して寝られなかったそうです。

カリーは朝の3:45に寝るのを諦め、スマホを見るとメッセージが届いていたのに気づきました。それは同じように寝れなかったドレイモンドからでした。ドレイモンドは朝3:00にステフとクレイに「寝れない。またフィルムを観た」とメッセージを送っていました。カリーがドレイモンドに返信したのは朝6:00だったそうです。それからふたりは恥ずかしい試合の事や、キングスのマリック・モンクが彼らが年を取っていると言った事や、ハドルで集中力が欠けていたのを見た事などについてメッセージで話をしました。最初はドレイモンドがチームに話すと言っていましたが、うんざりしていたステフが「今回は私にやらせてくれ」と言ってチームに向けてスピーチをする事にしたそうです。

ウォリアーズは土曜にチェイス・センターの9階の「Above the Rim」と呼ばれるアトリウムで長めのフィルム・セッションを行ったそうです。そのセッションの前に、ステフがチームにスピーチをしました。彼のペップトークはほとんどが1対1で、チームの前で話すのは珍しい事なので、みんなが注目したそうです。

ステフは「私はあまり話さないが、今日は言う事がある」と言ってスピーチをはじめました。

そのスピーチについての記事をそのまま訳します。

「非公開のセッションに参加していた複数の情報源によると、カリーはチームに、彼らを信じていて、彼らには勝つための十分な力があると伝えたそうだ。カリーは彼らからの信頼を求めた。全員が同じ気持ちで一致団結して協力すれば、カリーは彼らに勝利をもたらすと約束した。彼らにすべての感情を脇に置くように頼んだ。それはプレー時間や役割などの理由で不満を持っているかもしれないジョーダン・プール、ジョナサン・クミンガや他の選手たちに直接向けたメッセージのようだった。感情にとらわれる人は家に残って、バケーションを楽しむつもりの人は、サクラメント行きのバスに乗らないように伝えた。しかし、バスに乗った人は目標に承認してミッションに賛同することになると考えた。そして、もし彼らがそれをやって、バスに乗ったなら、彼は勝利をもたらすと約束した。信念と団結心があれば、勝てる」

その後、カリーは他に何か言いたい人はいるか聞きましたが、誰も何も付け加える必要はなかったそうです。その時、ドレイモンドは「チャンプ、よく言った!誰も何も言う事はない。それだ。それ以上何が言えると言うんだ?」

アンドリュー・ウィギンスがステフのスピーチについて:「ゾクっとした。No.30は違う」

ゲーリー・ペイトンII:「彼が話す時は、みんな聞いた方がいい。なぜなら30は普通静かで、自分のゲームで言いたい事を訴える。でも、彼は何かを言わなければならなかった。彼はこれをあきらめたくなかったと思う。だから彼は導き、私たちはその後を追った」

ドレイモンド:「あきらめるか、立ち向かうかの状況だった。でもステフがスピーチをして、選択肢は立ち向かうしかなくなった。彼は全員をロックインさせた。『もしバスにのれば、それはチームへのコミットメントだ。プレー時間が0分だろうが、40分だろうが関係ない。なんでもするというコミットメントをする事になる。心と体をこのチャンスに向けて準備するんだ。私たちは前の夜に恥ずかしいプレーをして、私たちはそのようにして終わらない」

それからウォリアーズはチームにコミットした全員がバスに乗ってサクラメントへと向かったそうです。マーカス・トンプソンは「その時には、彼らは静かにこれで終わりだとわかっていた」と話しています。

そして試合ではステフがチームに約束した通りチームを勝利に導きました。ヘッドコーチのスティーヴ・カーは、この試合のゲーム・ディシプリンがとても良かった(TOもたったの7つ)ので「これまででベストゲームのひとつだ」と言っていました。スターターは23分で+26と信じられないような数字です。彼の熱い?スピーチがチーム全体の士気と団結を高め、素晴らしいチーム・パフォーマンスを引き出したのでしょう。この調子でカリーに試合前にスピーチを続けてもらえればファイナルズへ行けちゃうんじゃないでしょうか(笑)。

また、オーナーのジョー・レイコブは試合から去る時に「まだ終わっていない!」と叫んでいたそうです。これで最低でもチェイス・センターで2試合開催され、チケット収益が増える事になりました。レイコブも嬉しいでしょう。カリーはダイナスティーを救うだけではなく、球団の財政も潤してくれました。

サラリー&タックスが$352のウォリアーズは、プレーオフを勝ち進む事でしかその価値を正当化できませんが、次のレイカーズとのシリーズはどうなるのでしょうか。今から楽しみです。


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