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ケヴィン・デュラントのトレード

2/8の深夜(米東部時間)にケヴィン・デュラントがサンズにトレードされました。ついにブロックバスターです! オールNBA選出確実な選手がシーズン中にトレードされたのは、2008年のチャンシー・ビラップスがピストンズからナゲッツにトレードされた時以来だそうです。しかもデュラントはリーグでもトップ10に入る選手です。その破壊力はまさにマイク・ブリーンがプレーオフ・ファイナルズのゲーム7で「バンッ!」と叫んだかのようで、NBA全体に衝撃が走りました。

その衝撃はウェストで優勝を目指すチームを飲み込み、ケヴィン・デュラント(以下KD)を守れるラプターズのO.G.・アヌノビーの獲得を目指すのではないかとさえ言われていた程です。

また、これがまったくのリークなしで突然のトレードだった事もその衝撃を大きくしました。 情報通で知られるESPNのブライアン・ウィンドーストもこのトレードについて「それはショックだった …これはリーグの歴史でも異例のトレードのひとつだ」と言っていました。

その後もジョー・クラウダーを狙い続けてきたバックスがトレードに入って来た事により、最終的にKDのトレードは4チーム・トレードにまで拡大しました。

KDのトレード全貌

🏀 サンズ獲得:
• KD
• TJ・ウォーレン

🏀 ネッツ獲得:
• ミケル・ブリッジス
• カム・ジョンソン
• 2023年のサンズの1巡目指名権(プロテクションなし)
• 2025年のサンズの1巡目指名権(プロテクションなし)
• 2027年のサンズの1巡目指名権(プロテクションなし)
• 2029年のサンズの1巡目指名権(プロテクションなし)
• 2028年の1巡目指名権スワップ
• 2028年のバックスの2巡目指名権
• 2029年のバックスの2巡目指名権
• Juan Pable Vauletのドラフト権

🏀 バックス獲得:
• ジョー・クラウダー

🏀 ペイサーズ獲得:
• ジョージ・ヒル
• サージ・イバカ
• ジョーダン・ウォラ
• 2023年のバックスの2巡目指名権
• 2024年のバックスの2巡目指名権
• 2025年のペイサーズの2巡目指名権(ブログドンのトレードでバックスに送っていたもの)
• ネッツからのキャッシュ$1.36M

ネッツはサンズから得たクラウダーをバックスにまわした事よって、更にアセットを獲得する事ができました。ESPNのラモナ・シェルバーンによると、ネッツがトレードがまとまりかけたところでクラウダーも要求したため、交渉は一時決裂状態に入ったそうです。

KDのトレードについてESPNのラモナ・シェルバーンが素晴らしい記事を書いていたので紹介します。みなさんもできたらクロムの日本語翻訳機能で読んでみてください。


2/6 (月曜) Part 1:KDのトレード・リクエスト

ネッツがトレード要求をしていたカイリー・アーヴィンをマーヴェリックスにトレード。その時ネッツは勝利を優先していて、そのトレードではKDのお気に入りの3&DのDFSとPGのスペンサー・ディンウィディーを獲得しました。ESPNのザック・ロウによると、ネッツはKDが気に入っているラプターズのパスカル・シアカム獲得にも動いていたそうです。

その日の午後、KDとKDのビジネス・パートナーのリッチ・クレイマンがネッツにミーティングを要請。KDはそのミーティングでネッツのGMのショーン・マークスにネッツから出て行きたいと伝えたそうです。それはカイリーのような要求ではなくリクエストだったとの事。しかも、トレード希望先はサンズのみでした。

彼らはその場で、サンディエゴの家にいたオーナーのジョー・サイとFaceTimeで話をして、そのトレードに向けて動く事を決めました。

トレードに関しては、夏のようなリーグ全体を巻き込んでの入札競争は避け、KDに精神的な負担をかけないようにするため秘密裏に進める事にしたそうです。

また、KDはサンズにトレードで行けなければ、2022-23シーズンの残りをネッツでプレーアウトするつもりだったようです。ただ、両サイドとも今シーズン中にトレードがなければ、シーズンが終了後に再びトレード話が出てくるとわかっていたそうです。シェルバーン:「疲弊だけがあった。いつからかドラマばかりで、不透明なことばかりになっていた」

2/6 (月曜) Part 2:KDのトレード交渉

ネッツのオーナーのジョー・サイはサンズの新オーナーのマット・イシュビアと知り合いだったそうです。シェルバーン曰く、ふたりは「お互いを気に入っていた。イシュビアがNBAオーナーになりたがっていた頃、ネッツの試合にサイのゲストとして観戦していたり、どうネッツがビジネスをしているのかを見ていた。彼らはお互いの電話番号を知っていた」仲だったそうです。

サイが月曜の午後にイシュビアに電話をしてKDががサンズへ行きたがっている旨を伝えたそうです。その後に、フォローアップでマークスがサンズのGMのジェームズ・ジョーンズに連絡を入れ、夏と同じリターンを要求をしたとの事。ネッツとサンズが夏にKDのトレードで交渉をした時からネッツの求めるリターンは変わっていなかったと言う事ですね。その内容は:

  • 4つのプロテクションなしの1巡目指名権。交渉の余地なし。


  • 2028年の1巡目指名権のスワップ。交渉の余地なし。


  • ミケル・ブリッジス。交渉の余地なし。


  • カム・ジョンソン。交渉の余地なし。

この要求に対し、もちろんジョーンズは1巡目指名権を3つにしようとしたり、最後の方の指名権にプロテクションを掛けようとしたりネゴったそうですが、マークスの答えはノーだったそうです。

そして、タイミングが良い事に、イシュビアがサンズのオーナーになる承認をNBAから得た正式発表はこの日の夜でした。

そうなると、発表前にイシュビアを巻き込んでのトレード交渉がはじまっていた事になります。イシュビアがどのタイミングでNBAから承認を得たのかはわかりませんが(アミノ・エルハッサンは午前中だったと言っています)、サイはイシュビアのサンズ買収に了承する投票をしたので、サイがイシュビアにKDの件で連絡した時はすでにイシュビアがオーナーになる事がわかっていたのかもしれません。もしイシュビアの承認が1日遅れていたら、KDのトレードはなかった可能性もあります。

2/7 (火曜)

KDの交渉がはじまった翌日、偶然にもサンズは試合のためにブルックリンに来ていました。ジョーンズもチームに帯同していたそうです。試合はサンズが116対112で勝利。ブリッジスはとジョンソンはそれぞれ21得点と14得点をして試合に貢献しています。試合後、ジョーンズはイシュビアのオーナー初日に間に合わせるためブルックリンからフェニックスへ帰って行ったそうです。

この時点でネッツはサンズが他のトレードをしようとしているのか知っていて、実際にKDのトレードがどうなるかはわからなかったそうです。マークスはこのような大きなトレードがオーナーの「イエス」まで辿り着くまでの過程を経験していたので、すぐに答えは出ない事を理解していたそうです。

この日、ESPNのWojは、「ネッツはトレード・デッドライン前にKDをトレードするつもりはないとサンズや他の多くのチームに伝えていて、KDを中心としてロスターをアップグレードしようとしている」とレポートしています。Wojを信じてKDのトレードはないと思った人も多かったのではないでしょうか。

Wojはマークスと同じエージェンシーなので、このような真逆の情報を発信してネッツを守っていたのかもしれませんし、サンズとの独占交渉を隠すためにネッツから利用されたのかもしれません。Wojは昨シーズンもハーデンのトレードで同じような事をしていて、他のレポーターたち(ウィンドーストやジェイク・フィッシャー)がハーデンのトレードの可能性を指摘していた時にも、それは「正確ではないと思う。ジェームズ・ハーデンは再びネッツにいる事になるだろう。それは流動的だが、ブルックリンがジェームズ・ハーデンとベン・シモンズのトレードをする気があるようには感じない」とレポートしていました。


2/8 (水曜)

イシュビアがサンズの本拠地のフットプリント・センターでオーナーとしてはじめて紹介記者会見を開きました。

その会見後、イシュビアはKDのトレードを議論するため、弟で共同オーナーのジャスティンと一緒に15分離れた練習場に行き、フロントオフィスのミーティングに参加しました。ジョーンズはそのミーティングで新オーナーにある数字を提示する事にナーバスだったそうです。その数字はKDをトレードした場合に払う事になるタックスの「$40M」。ケチとして知られていた前のオーナーのロバート・サーヴァーはサンズのオーナー時代の19年でタックスを$14Mしか払ってきませんでした。しかし、イシュビアはそれに数秒でOKを出したそうです。シェルバーンはそれについて「結局のところ、これは本当にフェニックスに新時代が訪れたのかもしれない」と表現しています。

議論はタックスよりも選手と指名権だったそうです。サンズはKDの要望で独占交渉をしていますが、夏になればまた入札競争がはじまり、残りのリーグが参戦してきます。そうなった時にサンズのオファーがベストになる保証はありません。ESPNのザック・ロウによると、グリズリーズがKDのトレードですべての1巡目指名権とすべてのスワップの準備をしていたそうなので、KDが市場に出れば今よりも争奪戦が激しくなるのは確実です。そうなれば、オファーする1巡目以外のすべての1巡目にスワップもつけなければいけない可能性も出てきます。

サンズはネッツの要求を受け入れようとしていたそうです。

しかし、交渉がまとまりかけたところで、ネッツがジョー・クラウダーも欲しがってきたました。サンズはクラウダーをホークスとの3チームトレードで使おうとしていて、ジョン・コリンズを得る交渉をしているところでした。サンズはネッツの条件は飲めなかったそうです。

交渉は一旦決裂。イシュビアはミーティングから抜け出して、サンズ買収を祝うホテルでのディナーに向かっいました。ディナー中でもイシュビアの電話は鳴り続けたそうです。サンズは、クラウダーのトレードでホークスとピストンズと交渉を続けていて、この数ヶ月狙っていたジョン・コリンズ獲得の交渉がまとまろうとしていたところでした。

でもそれはデュラントではない」イシュビアは心の中でそう思っていたそうです。

ディナーの席で、イシュビアは友人に「トップ5の選手をトレードできる機会はとても稀だ」と何度も言っていたそうです。ビリオネラの彼もかなり迷っているのが伝わってきます。そして、フェニックス時間の10:45pm、ブルックリン時間の12:45am、イシュビアがジョーンズにクラウダーをトレードに含める許可を出しました。交渉がまとまった運命の瞬間です。

その連絡をもらった時、マークスとネッツのフロントオフェスはすでにオフィスから帰ってホテルへと向かう車内にいたそうですが、彼らはオフィスへとユーターンして行ったそうです。そして、その1時間以内にトレードが終わりました。

2/8 (木曜)

トレードはまだ終わった訳ではありません。トレード・デッドラインまで後1日あります。ネッツはサンズから得たミケル・ブリッジスやクラウダーを他チームに売り出して更なるアセット確保も可能です。ネッツが交渉終盤でクラウダー獲得に動いたのもそれが狙いだそうです。

フィッシャーによると、グリズリーズがサンズからトレードされる前からミケル・ブリッジスを狙っていたそうで、ESPNのザック・ロウはペイサーズがネッツに3つの1巡目指名権をオファーしたと話していました。また、ザックは「あるチームは4つの1巡目指名権をオファーした」と言っています。HoopsHypeのマイケル・スコットは、グリズリーズが4つの1巡目指名権をオファーしたとレポートしていました。

また、New York Postのブライアン・ルイスは、「複数のチームがDFSに2つの1巡目をオファーした」とレポートしています。

ネッツはブリッジスをキープする事にしたそうです。ブリッジスは2025-26シーズンまで契約があるのでまだ価値は落ちなさそうです。彼を狙うチームは多そうなので、この夏にまたトレードの噂が出るかもしれません。

ミケル・ブリッジスとカム・ジョンソンをキープしたのは正解だと思います。ブリッジスのトータル・ユーセッジはサンズでの26.9% → 29.6%までアップし、SCU(スコアリング・ユーセッジ)は17.8% → 25.7%までアップしています。ネッツでは使われ方が変わり、点も取れはじめているのがわかります。このまま行けば、カワイやヤニスを超えるトップ2wayプレーヤーになれるかもしれません。

カム・ジョンソンもトータル・ユーセッジが25.8% → 32.4%、SCUも19.1% → 22.8%とアップしています。(*2/24時点)

結局ネッツは翌日にクラウダーをバックスにトレードしただけでデッドラインを迎えました。ネッツはタックスラインまであと$8Mのところまで来ていましたが、サラリーダンプしてタックス回避する事なくシーズンを終えます。KDがいなくなり、ネッツはもうタックスを払う理由がないのですが、まだジョー・ハリスやセス・カリーに価値を見出しているのだと思われます。

セス・カリーはシーズンが終わればFAなので、彼を動かさなかった事も意外でした。彼なら良い2巡目は取れたと思いますし、どうせいなくなるなら2巡目をつけてサラリーダンプしても良かったと思います。夏にカリーとの再契約も視野に入れているのでしょうか。

プレ・KDトレード:カイリーのトレード要求からKDのトレード・リクエストまで

シェルバーンはKDのトレード前にあったカイリーのトレードにも触れています。

カイリーはKDが膝のMCL捻挫で欠場している間でもチームを優勝候補レベルまで引っ張れる事を見せていました。そのおかげで彼の価値はこの数年でいちばん高くなり、カイリー陣営は今がネッツとの契約延長の交渉をする完璧なタイミングだと判断したとの事です。まずエージェントが公に「カイリーはネッツに残りたいが、ボールはネッツのコートにある」と声明を出しました。

ネッツはカイリーに3年の契約延長をオファーしたそうです。また、カイリーはネッツに移籍してから100試合以上欠場しているため、ネッツはその契約に出場試合数を保証条件をつけていたそうです。カイリーはそれよりも長く条件なしの契約を望んだため、結局交渉は決裂し、カイリーは2/3(金曜)にエージェントを通してネッツにトレード要求をしました

その時、サイは香港にいて、テキストの嵐で目覚めたそうです。シェルバーン曰く、その時「ネッツが進むべき道はハッキリしていた」そうです。シェルバーンは「いろいろな事があったにも関わらずこのタイミングでトレード要求をした後、ネッツは動く時だと決めた」とも書いています。

ネッツがカイリーのトレード相手をレイカーズでなくマブスを選んだのは、a)ウェストブルックの$47Mを受け取ってタックスの支払い金額をあげるのはあり得ない、b)そうなると3チーム目を探さなくてはいけなくなりトレードが複雑になる上に、c)マヴスのリターンの方が価値があると判断したからだったそうです。

フィッシャーによると、実はサンズもカイリーのトレードについてネッツに問い合わせをしていたそうで、リーグまわりでは、どうにかカイリーとKDのふたりを獲得できないだろうかと考えていたという噂が出回っていたそうです。もしイシュビアのオーナー承認が5日早ければ、それも実現していたかもしれません。突然のKDのトレード・リクエストに関わらず、わずか数日の交渉でトレードがまとまったのは、両チームが夏からずっと話をしてきたのも大きな理由のひとつだと思われます。

KDはカイリーのトレード状況に満足してはいませんでしたが、「自分の未来をカイリーとすぐには結びつけなかった。その時点ではデュラントを競争力強化を選んだ」そうです。

また、KDはサンズが自分を欲しがっているのを知っていて、サンズのスターのデヴィン・ブッカーとプレーしてたがっていたそうです。ジェルバーンによれば、KDは「サンズのスターのデヴィン・ブッカーとは2021年の東京オリンピックで仲が良くなり、NBAでもいつかそうなる(同じチームにいる)ように思いを巡らせた」そうで、お互いバスケジャンキーなので、気が合ったのではないかとの事。

KDは去年のオールスター・ゲームの指名でも、スターターの次にブッカーを真っ先に指名していました。本当に仲が良さそうです。


フェニックス・サンズ

KDの加入により、538のRAPTOR予想では、サンズは46勝36敗でプレーオフ進出確率は93%、優勝確率は4%になっています。

しかし、レポーターたちからは、サンズはデンバー・ナゲッツとともにウェストの覇者になるという声が多く聞こえてきます。元マブスのアナリストのボブ・ヴォルガリスはサンズのオフェンスを止めるのはほぼ不可能だと言っていますし、ESPNのケヴィン・ペルトンも同じような意見です。

確かに、クリス・ポール、デヴィン・ブッカー、ケヴィン・デュラントとミドルレンジは脅威で、特にナゲッツとのマッチアップでは、ニコラ・ヨキッチのディフェンス相手にミッドレンジの効果は抜群だと思われます。

ただ、ディフェンスは別の話で、ウィングとポイント・オブ・アタックのディフェンスに疑問が残ります。まだ$5M以上MLEが残っているので、バイアウトでその辺りの戦力強化を積極的に競り勝ちたいところです。

個人的にはサンズのディフェンスがどう5アウトのマヴスやクリッパーズとマッチアップするのか、どうやってバックスとセルティクスのオフェンスを抑えて行くのかに興味があります。

また、ケガもしがちな選手たちなので、その辺り(特に筋肉系のケガ)も心配だとの声も良く聞こえてきます。

そしてサラリーキャップは、KD、ブッカー、エイトン、CP、シャメット、ペインの6人で$170.2Mになり、すでにタックスを$8M以上超えています。ベイズリーとランデールはRFAですが、安く契約できるでしょう。課題のウィングやPGの強化はCPやシャメット、またはエイトンのトレードでやりくりするしかありません。トレード・デッドライン前は、サンズはCPに代わるポイントガードを探していたと良く言われていました。バスケ以外にもこれからどういったチームづくりをするのか楽しみです。


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