見出し画像

八村塁のトレード特集!

The Athleticのジョヴァン・ブハによると、八村塁はローテーションが固まった後「レブロンとADと一緒にスタートすると見られている」そうです。まさか日本人がレイカーズのスターターになる日が来るとは(気が早い)!しかもレブロンと!これでNYとLAのビッグマーケットに日本人選手がふたりプレーする事になりました。アカデミー賞主演女優賞にはじめてアジア人がノミネートされたニュースよりも大事件だと思います。ちょっと八村さんのトレードでかなり興奮していますが、気持ちを落ち着かせて八村さんのトレードのブレークダウンしたいと思います。

トレードの内容

The Athleticの1/19にウィザーズの八村塁のトレードを模索しているとのレポートからほぼ1週間後にウィザーズが八村塁をレイカーズにトレードしました。トレード内容は以下のようになります。

レイカーズ獲得:

  • 八村塁($6.26M+バードライト)

ウィザーズ獲得:

  • ケンドリック・ナン($5.25M→モントレズ・ハレルのTEで吸収)

  • 2023年のブルズからの2巡目指名権(ウィザーズがウェストブルックのトレードでレイカーズに出したもの)

  • 2028年の2巡目指名権(レイカーズの指名権かレイカーズがウェストブルックのトレードでウィザーズから得た指名権のどちらか低い方)

  • 2029年のレイカーズの2巡目指名権。

  • このトレードでウィザーズは$6.26M(八村塁のサラリー分)のトレード・エクセプションをつくった

ESPNのWojによると、トレードの前日の夜までサンズも入って3チーム間での交渉だったそうです。またWojは「八村は出て行きたがっていた。この夏ウィザーズと契約延長に合意ができなかった。試合もクローズしたがっていたが、カイル・クズマがこのチームのフロントラインで大きな役を担うようになったので、それも起きなかった。ウィザーズには八村から先へ進むチャンスだったと思う」とレポートしています。

また、Yahoo Sportsのジェイク・フィッシャーは、ウィザーズは八村さんのトレードをサンズとバックスと模索していて、その内容は八村さんがサンズへ行き、クラウダーがバックスへ行き、バックスはグレイソン・アレンと2巡目指名権のパッケージを使おうとしていたとレポートしていました。

このウィザーズ、サンズ、バックスの3チーム・トレードに関しては、B/Rのクリス・ヘインズも同じような事をレポートしています。内容はフィッシャーと同じで、サンズは八村さんを得て、バックスはジョー・クラウダーを得るものだったそうですが、ヘインズはそれに「ウィザーズはもうそのトレードは終わったものかと思っていた」とつけ加えています。どうやら交渉がまとまる直前にサンズとバックスの間で何か起きたようです。ヘインズも何が起きたかはわからないとの事でした(または知っていても言えないか)。八村さんはひょっとしたら今頃サンズのユニフォームを着ていたかもしれません。NBAは本当に何が起きるかわかりませんね。

八村さんのウィザーズとの契約延長に関しては、ESPNのザック・ロウとボビー・マークスによると、ウィザーズはシーズン前に八村さんのルーキー契約延長の交渉で$12M(ボビー・マークスの記憶)か13~14Mあたり(ザック・ロウの記憶)のオファーをして、デッドラインのギリギリまで交渉していたそうですが、八村さんはそれを受け取らなかったとの事です。来シーズンのMLEが$11Mなので、彼がオファーを拒否した判断は理解できるとも。SIのクリス・マニックスも交渉合意は近いところまで行ったと話していました。ひょっとしたら、八村さんはゴンザガ大で一緒だったブランドン・クラークの$12.5M(4年50M)の契約を意識しているのかもしれません。

ソースがあるのかわからないのですが、B/Sのエリック・ピンカスは「八村はキャップホールド($18.79M)のレンジの契約を求めていると信じられている」と言っていたりします。ピンカスもリーグのフロントオフィスに精通しているので、どこかで聞いた情報なのかもしれません。

また、アンソニー・アーウィンは、レイカーズはウィザーズとクズマについてシーズンずっと話してきていましたが、ウィザーズはクズマをキープできると信じていて、クズマを出す事を拒否していたと言っていました。

また、The Athleticのシャムズによると、このトレードの交渉は24時間~48時間かかったそうです。

と言う事は、トレード前に八村さんがウィザーズにトレードしてもらいたいか聞かれて「わからない」と答えたり、トレードを求めたかどうか聞かれ「ノーコメント」だと答えていた時は、チームがレイカーズと交渉している事を知っていた事になります。含みがある答えだったため、何かありそうだなとは思っていましたが、まさかその翌日にトレードがあるとは思いませんでした。

レイカーズから見たトレード

Yahoo Sportsのジェイク・フィッシャーによると、レイカーズは最初はケンドリック・ナンと2つの2巡目指名権で何が得られるか市場を試していたそうです。そのパッケージでニックスのウィングのカム・レディッシュが取れたかもしれないとの事。レイカーズとカム・レディッシュの噂は以前からありましたが、レディッシュのエージェントのクラッチが一枚噛んで、レディッシュの市場活性化を狙っていたのかもしれません。しかし、結局レイカーズは八村さんを選びました。

レイカーズはシーズン通してサイズが不利になっていたので、サイズのあるウィングを狙っていたようです。レブロンもグリズリーズ戦の後「彼らには6”8’〜6”9’以上の選手が9人いて、今私たちには3~4人しかいないと思う」と遠回しにサイズの不満を口にしていたので、以前からウィングのサイズが課題だったのでしょう。

八村さんはレディッシュとサイズもほぼ同じで、ウィングスパンは長く、肝心のスリーはレディッシュの30%よりもだいぶ良い確率です。契約的にもふたりとも同じで、夏にRFAになる状況です。レイカーズが八村さんを選んだ決め手はスリーだったかもしれません。

結局レイカーズは7つあった2巡目指名権の内の3つを使って八村さんを獲得しました。

八村さんの加入により、レイカーズに6”6’より高いウィングがレブロンと八村さんのふたりに増えました。同時にレイカーズはあまり使っていなかったガードのケンドリック・ナンを出すことによって、バックコートの混み具合を解消する事ができました。あまり使っていなかったロスター枠を確実に使えるウィングに変えた事により、ロスターのバランスはかなり改善したと思います。

また、ESPNのオーム・ヤングミサックが、レイカーズのGMのロブ・ペリンカは2019年のドラフトで八村さんを気に入っていて「私はゴンザガの子をとても気に入っている」と言っていたとレポートしています。ペリンカは、ウィザーズに指名された八村さんの事を「彼はとても良いから見ていろ」と言っていたそうです。ペリンカは元々八村さんのポテンシャルを気に入っていたので、レディッシュよりも八村さんを選んだのかもしれません。

ウィザーズから見たトレード

カイル・クズマとクリスタプス・ポージンギスは今シーズン終了後にオプトアウトしてFAになれます。ウィザーズはこのふたりと再契約するため、RFAになる八村さんをトレードに出したと言われています。

The Athleticのシャムズとデイヴィット・オルドリッチによると、ウィザーズはクズマとの再契約を検討しているらしくフィッシャーによると、今ウィザーズはクズマのトレードの問い合わせしてきたチームに、クズマはトレードしないと伝えているそうです。

現在ウィザーズのサラリーキャップは、KPとクズマのキャップホールド込みで来シーズンは12人ですでに$157.7Mになっていて、このまま行けば$162Mのタックスラインギリギリになり、戦力補強にMLEも使えない状態です。しかもクズマがキャップホールドの$19.5Mで再契約してくれるとは限りません。KPがいくらで再契約してくれるかにもよりますが、実質タックスチームになっていると言っても良いのではないでそうか。これで八村さんのサラリーが入れば、タックス超えは確実で、今プレーイン圏内にも入っていないチームにとっては金額が大き過ぎます。

せっかくナンをモントレズ・ハレルのTEに入れて、$6.2MのTEをつくりましたが、せっかくの飛び道具も使う事なく終わりそうです。もちろんKPが$25Mくらいで再契約してくれれば、大きな武器になり得ます。これはオーナーのテッド・レオンシスがどこまで金を使うかにかかっています。

また、戦力的にも、ナンが八村さんよりもウィザーズをプレーオフにプッシュできるような選手だとは思えません。ロスター的にもナンは他に大勢いるガードとも被ります。

タイミング的にも、ウィザーズが勝つためにこのトレードをしたとは思えません。KPがケガでしばらくの間離脱らしいので、勝ちに行くなら八村さんのトレードをギリギリ2/9まで引っ張って、八村さんに活躍してもらった良かったと思います。それで八村さんのトレードバリューもあがったかもしれません。ウィザーズにとっては、今八村さんをトレードするメリットはないので、おそらくレイカーズが早くトレードを成立したかったのだと思われます。または、これらの2巡目の3つの指名権が他チームに取られると焦ったのかもしれません。

それらの要素を総合して考えると、ウィザーズにとってこのトレードは来シーズンに向けてのキャップ調整の一環とアセット集めなのは間違いなさそうです。

八村さんはレイカーズにフィットするか?

八村さんはレイカーズにフィットするかがこのトレードで肝心なポイントです。

ESPNのボビー・マークス:「フィットはいいんじゃないか」

The Athleticのジョヴァン・ブハ:「AD-レブロン-八村のフロントラインはレイカーズに、良いサイズ、長さ、運動能力を兼ねたヴァーサタイルを与える」

レイカーズはレブロンのチームなので、ウィングの八村さんには主に3&D能力が求められます。オフェンスではレブロンのスペースを与えられるスリーが重要になるでしょう。八村さんのコーナースリーはこの2シーズンで41.3%で、レイカーズのコーナースリーの37.2%よりもかなり上なので間違いなくレイカーズにとって必要な武器になります。Dでも7”2’のウィングスパンを持つ八村さんが入る事により、スウィッチやゾーンの精度があがり、攻守でチームに貢献できるでしょう。

AD-レブロン-八村のフロントコート(ADとレブロンの次に日本人の名前が続くなんて信じられません。凄い!)では、レブロンの負担を少しでも減らすため、相手のエース級ウィングのマッチアップはまちがいなく八村さんの担当になります。カワイ、ザイオン、テイタム、ヤニス相手はウィザーズ時代にもしていたかもしれませんが、ディフェンスでの期待値は高くなっています。ただヘルプにレブロン、リムプロテクションにADがいるので、八村さんを後ろからうまくナビゲートしてくれそうです。デビュー戦でも、ディフェンスの時間帯にヘルプサイドにいる八村さんに「塁!コーナー!」という声が飛んでいました。

また、レブロンがベンチにいる間は高さを保つため八村さんが出る時間が増えそうです。そうするとウェストブルックとADとのプレー時間も増え、スタックPnRなどもやってくるのではないでしょうか。ウィザーズ時代もウェストブルックとのPnPもやって来たので、またふたりの活躍が見れるかもしれません。

八村さんのフィットに関しては全体的にポジティブな意見が多いと思います。その声をいくつか紹介します。

ESPNのリチャード・ジェファーソン:「このトレードは目立つ変化をもたらすか?レイカーズは8位から6位になれるか?そうは思わない。だがこれは正しい方向へのステップだ」

ESPNのスティーヴン・A・スミス:「八村はNBAのアスレチックな体があり、言うまでもないが、この数年でスリーを40%で決めている。キャリアのスリーポイント%は35%だ… ラッセル・ウェストブルック、アンソニー・デイヴィス、レブロン・ジェームズが八村のような選手にボールを与えて、彼はオープン・スリーを決められる。彼らにはシュートが必要で、彼は簡単に毎晩チームに25~30分与える事ができる。私はレイカーズにとって良いと思う。本当にそう思う」

スミス氏からポジティブな意見をもらえると、内心ホっとします(笑)

ESPNのジェイレン・ローズは八村さんのトレードがレイカーズとレブロンにとってどうなのか聞かれ:「私はこれを気に入ってはいない。私はこれをすごく気に入っている。彼らはレブロンがとても支配的なプレーをしていて、今勝とうとしているポジションにいる。でもそれを証明された選手でやろうとしている。こんどの2月で25歳になるとしても、6”8’で230ポンド、7”2’ウィングスパン、あなたはこれをとても気に入るだろう。彼のキャッチ&シュートは素晴らしい。レブロンとプレーすればオープンショットを得る機会がある。そして、彼はこの間30分で30得点した。彼はロサンゼルス・レイカーズにピッタリとハマる。これはロブ・ペリンカにとって勝利だ。このオフシーズンに長期契約延長があるだろう」

そして、レイカーズのSpectrum Sports Netのマイク・トゥルーデルがコーチのダーヴィン・ハムも八村塁の獲得によろこんでいると言っていました。ハム:「ペリメーターでもよりサイズが得られ、ポストでも選手達を守れる。ショットを決められ、またシステムにもフィットする。彼は(いくつかのエリアでの)条件を満たす。そのような才能を加えられるのは良い事だと考えるまでもない」

ただ、八村さんのゲームに関してはレポーターたちの評価は割れていて、ESPNのザック・ロウやケヴィン・ペルトンはそれほど高い評価をしていません。ペルトンによると、八村さんの36分でのブロックとスチールの合計平均が1.1で、少なくても250分プレーした369人の中で309番目だそうです。また、八村さんは「コンボ・フォワードとしてもディフェンシブ・リバウンドとプレーメイクは平均以下で、価値を生み出すのを得点に頼っている」と評しています。それでペルトンがこのトレードでレイカーズにつけた評価は+Cでした。ただ、調べてみると、八村さんのディフェンシブ・リバウンド%は16%で若干平均以上です。

ザック・ロウは結構直球で「彼はロング2とスウィッチした時にポストアップするのが好きだが、レイカーズではそれは少なくなる。彼はスリーを決めなければいけない。また彼はキャリアのほとんどでエンプティー・カロリー・スコアラー(ボックススコアの見栄えはいいけど勝利には貢献しない)でいる。彼はパワーフォワードのアラン・ヒューストンだ。アラン・ヒューストンはエンプティー・カロリー・スコアラーじゃなかったが、20/1/1のキングだ。ボックススコア・ラインは20/2/2だ。それが塁だ。ひどいパッサーで、悪いリバウンダーで、ディフェンスはフィールが欠けている。ディフェンスでのポジションはレブロンと被る4だ」と言っていました。「(トレードが)1巡目指名権じゃなかったのも、リーグは彼が12/0/0なのを見ているからだ。だからフェアなトレードだと思う」とも。

ザック・ロウは人気のコラムの「10 things」の最新版でも八村さんのパスについて次のように書いています。「八村は良いディフェンス相手に対してパスを改善しなければいけない。彼はキャリア平均アシストが1.4だ。それは懸念材料で、意思とビジョンの組み合わせのように見える。八村はパスが遅く、彼の多くのパスは遅れている—ディフェンスがどうローテーションするのか理解せずに。ここにカイル・クズマへのロブがあった。簡単なパスではないが、八村が出さなければいけないパスだ。プレーオフ・ディフェンスを破るには、全員が動いているゲームの中で良い判断をしなければいけない」

The Athleticのブハも、八村さんのデビュー戦でコート・ビジョンの改善の必要性があり、下の映像では、八村さんがレブロンがオープンだと気付いたのは1.5秒ほど遅れたと指摘しています。ただ、ブハさんは、このプレーも「彼はこのように他の選手のためにオフェンスをクリエイトする能力もある…これはシンプルな読みだが、遅れた。しかし、機能した。これは八村がレブロンやウェストブルックらの世代を代表するパッサーたちから練習して身につけて行く八村のゲームのひとつだ」とポジティブに締めくくっています。

また、The Athleticのロビンスは、八村さんのプレーメイクの数字を「八村は目隠しをしたようなプレーをする傾向があり、チームメイトが決めたショットの彼のアシストは8.2%だった…それはリーグの他のフォワードと比べると平均以下だ。彼のアシスト/ユーセッジのレイショはリーグのフォワードで最下位近くの12パーセンタイルだ」と言っており、ブハの言うように、まだ成長の余地はかなりあると思われます。

ブハの八村さんのディフェンス評は高く、ディフェンシブRAPTORは+0.3の平均以上で、ディフェンシブEPMは+0.9で良いディフェンダーだと言っています。実際、ディフェンシブEPMの+0.9は上位25%に入る数字です。

また、The Athleticのオルドリッチは、八村さんはラッセル・ウェストブルックがいた時は、ウェストブルックがせっついていたのもあり、攻守に於いて努力を尽くしていたので、レイカーズはふたりが再会する事で同じような効果を得られると信じているのかもしれないと言っていました。

ブハによると、レイカーズは、ダーヴィン・ハムのシステムとレブロン、AD、ウェストブルック、ベヴァリーのベテランが八村のポテンシャルを高めると楽観視しているそうです。ブハ曰く、レイカーズは「八村を高く評価していて、ウィザーズがクズマとデニ・アヴディアを優先したために、まだ未開発のポテンシャルを見せられていなかったと信じている」との事です。確かに、ウィザーズ時代は良きリーダータイプのベテランが少なかったように思いますし、若手の育成もうまく出来ていなかったように感じます。いずれにせよ、レイカーズは八村さんに期待している事は間違いありません。

また、アレックス・カルーソやオースティン・リーヴスを見る限り、レイカーズはウィザーズよりも若手の育成がうまそうです。レイカーズのアシスタント・コーチのフィル・ハーディーも八村さんのような選手の育成はうまいそうで、レイカーズでの八村さんの成長に期待が高まります。

八村さんの4大アドバンス・メトリックスのEPM、RAPTOR、BPM、PERの数字はあまり良いものではなく、Dunc’d Onのダン・フェルドマンによると、八村さんのこれまでのすべてのシーズンでこれらのメトリックスの数字は平均以下だそうです。ちなみに調べてみると、今シーズンこれまでの数字は:EPMが-1.8で平均以下、RAPTORは-1.8で平均以上、BPMは-2.4でベンチプレーヤー並みに低く、PERは13.8で平均以下になっています。

EPMもRAPTORもディフェンスはプラスなのですが、オフェンスが足を引っ張って低い数字が出ています。

八村さんのオフェンスの効率がなぜ悪いか、その理由をThe Athleticのサム・ヴィセニーさんが次のように指摘しています

ヴィセニー:八村のTS%とeFG%はリーグ平均よりも3%低い。八村はミッドレンジでセトルし過ぎるというのもある。この映像のように、リムまでドライブしてヘルプを強いてからタジ・ギブソンに簡単なパスを出さず、モンテ・モリスにキックアウトもせず(またはドマンタス・サボニスが残っていれば、単に自分で決めてもいい)、彼は19フッターのプルアップにセトルした。

また、ヴィセニーは、八村さんはパスをしないのとヘビーなミッドレンジの組み合わせで良くないポゼッションに繋がっているとも行っています。また、ファーストステップ、ハンドルのタイトさ、シュートのリリースの遅さ、シューティング・ベースも課題があると指摘しています。

特にシュートのブレに関しては、「彼のシューティングベースはいつも違っている。足元を見ればわかる。これは1/12のニックス戦だ。左の写真では足は肩幅で、真ん中の写真では足は肩幅よりも狭く閉じている。右の写真では右足が肩幅よりも出ている。それぞれのショットのバランスは完全に違うように見える。もちろんNBAはとても速いので、足を揃えて撃つ準備をするのはむずかしいが、そこからリズムが生まれる。八村が外す多くのショットはリズムがなく別々の方向に行っている。しかし、これはミッドシーズンの修正ではなく、オフシーズンのものだ」

(八村さんのシューティングベースの違い by Sam Vecenie)

トレード後のレイカーズのアセットとサラリーキャップから考える八村さんの今後

レイカーズはそんな八村さんを得たことでタックスがほぼ$3M増え$43.8Mになりました。成績は現在(1/14時点)でウェストの12位で22勝25敗ですが、球団は勝ちに行っていると見ていいでしょう。なにしろプレーオフ確実圏内の6位のクリッパーズまでたったの3ゲーム差で、プレーインチームとは1ゲーム差です(1/14時点)。まだまだひっくり返せる希望は残されています。それに、これでレイカーズのトレードが終わった訳ではありません。まだパット・ビヴァリー($13M)、ロニー・ウォーカー($6.4M)が残っています。ウェストブルックのトレードもないとは言い切れません。ESPNのウィンドーストは、大きなブロックバスターのトレードよりも小さなトレードをする可能性の方が高いと話しています。

ただ、気になるのはレイカーズがウィザーズに出した2028年の2巡目指名権2029年の2巡目指名権です。この2巡目指名権を手放した事により、1巡目指名権にかけるプロテクションに制限がかかります。プロテクションがかかった1巡目指名権の譲渡が成立しない時は、その1巡目が2つの2巡目指名権に変わる事が多いのですが、レイカーズは2028年と2029年の2巡目指名権を手放してしまったので、2027年の1巡目指名権が2つの2巡目に変わるようなプロテクションはかけられません。また、同じように、2029年の1巡目指名権もドラフトまでは、それが2巡目指名権に変わるプロテクションがかけられなくなっています。そのため、これらの1巡目指名権のプロテクションの制限が今後のトレード交渉でも影響してくるでしょう。私が相手チームならプロテクションなしを求めてゴネまくります(笑)

しかも、レイカーズは2024年と2025年の2巡目指名権も持っています。なぜこちらの2巡目を温存して、球団の未来を変えられるような1巡目指名権に制限をかけるような事をしたのかは謎ですが、今後これについて何かレポートがあればツィートなどで取り上げていきたいと思います。

そして今年で契約が切れる八村さんは来シーズンどうなるかも見ていきます。

八村塁のルーキー契約とRFA

Wojによると、レイカーズは八村さんをこの先もキープするつもりで獲得したそうです。ただ、それも確定している訳ではなく、状況次第ではレイカーズから契約を得られずにFAになる可能性もあります。

それがどう言うことなのか、八村さんを取り巻く状況をいちど整理したいと思います。

八村さんはウィザーズとルーキスケール契約延長合意ができなかったため、所属チームのレイカーズから今年のNBAファイナルズ最終日~6/30までにクオリファイン・オファーを受ける事ができます。

クオリファイン・オファーは$7.7Mで、スターター・クライテリアになれば$8.6Mになります。41試合に達する事はなさそうなので(または2年の平均が41試合)、オファーは$7.7Mになるでしょう。八村さんがそのオファーにサインすれば、来シーズンはレイカーズで1年$7.7M契約をする事になります。

クオリファイン・オファーにサインすると、八村さんは他チームからのオファーシートにサインできるようになります。例えば、八村さんがピストンズの4年$40M契約のオファーシートにサインしたとします。レイカーズはクオリファイン・オファーにサインした八村さんが受けたどのようなオファーシートにもマッチする権利があるので、レイカーズはその契約内容で八村さんをキープする事ができます。

オファーシートがない場合は、八村さんとレイカーズは新しい契約をする事ができます。一般的にNBAではこのパターンが多いような気がします。ネッツのニック・クラクストンは2年$10Mの契約をしました。オファーシートがないと言う事は市場で需要がない事を意味し、そうなるとかなり格安で複数年契約をする事になるかもしれません。ローテーションの最後の方の選手だと、クオリファイン・オファーより少し上の金額での複数年契約とかあったりします。

また、レイカーズはFA前に八村さんへのクオリファイン・オファーを取り下げる事もできます。そうなると八村さんはFAになります。今チームメイトのロニー・ウォーカーのパターンですね。彼はスパーズに$6.3Mのクオリファイン・オファーを取り下げられた後、レイカーズと1年ミニMLEの$6.47Mで契約しました

このケースで成功した選手は当時のセルティクスにいたケリー・オリニクです。2017年にセルティクスがゴードン・ヘイワードとFA契約するために、ケリー・オリニクへの$4.19Mのクオリファイン・オファーを取り下げました。その後、オリニクはFAとしてヒートと4年$50Mの契約をしています。

もちろんレイカーズが八村さんにクオリファイン・オファーを出すかは、レイカーズのキャップ状況にも左右されます。

レイカーズの来年のサラリーキャップを見てみると、レブロン、AD、デミアン・ジョーンズ、マックス・クリスティー、八村さんとオースティン・リーヴスのキャップホールドで$112.3M(6人、1巡目指名とロスターチャージ除く)になり、キャップスペースはおよそ$15Mになります。八村さんを手放せばキャップは$31.3Mに増え、6年目までの選手とマックス契約可能になります。ただし、カイリーのような10年選手のマックス($46.9M)のキャップは空けることができません。

話がレイカーズに変わりますが、この状況でレイカーズが最も効率的に多くの選手を集められるのは、キャップスペースを捨ててオーバーキャップのままでいる事です。

まず、ウェストブルックと再契約して、彼をふたりの大きな契約の選手とサイン&トレードするとします(例えば、しばらく話題になっていたペイサーズのマイルス・ターナー($25M)&バディー・ヒールド($19.2M)の合計$44.2Mをウェストブルックとトレードします)。キャップスペースの$15Mではマイルス・ターナーとも契約できませんが、オーバーキャップならこのような大きな契約も可能です。更にオーバーキャップでいれば、$11.3MのMLEも使えます。

その上で、レイカーズがその気ならバードライトを持つ八村さんと長期契約延長もできます。ジェイク・フィッシャーによると、仮に八村さんがFAになれば、サラリーは$10Mになると言われているようです。ただ、八村さんはすでに$12Mレンジのオファーを蹴っているようなので、それで納得するかわかりませんが、市場での自分の需要を見極めながらどうするか決めていくでしょう。

しかし、もしレイカーズがカイリーと格安の$28Mで契約が可能になった場合、前述したオリニクのようにレイカーズはカイリーと契約するために八村さんへのクオリファイン・オファーを取り下げるかもしれません。その場合、八村さんはFAとして市場に出て新しいチームを探す事になります。

このように、外的要因が八村さんの未来に大きく影響してきます。しかし、それは八村さんがコントロールできるものではないので、自分でできる事をやって行くのみです。トレード前に八村さんは「私はただ私を信じて、信用してくれて、自分自身でいれるところにいたいだけだ。それが私のゴールだ」と言っていましたが、それにはそうしてもらえるだけの実力が必要です。八村さんにはぜひディフェンスもオフェンスでも大活躍して、ザック・ロウやケヴィン・ペルトンを驚かせ、レイカーズをプレーオフまで導く原動力になって欲しいです。そうすればおのずと希望近くの契約が手に入ると思います。八村さんの未来はこれからのレイカーズでの活躍にかかっています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?