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NBAのトレンド:オフェンシブ・リバウンド

前回のNBAトレンド紹介では、ミドルレンジの契約延長というチームづくりのトレンドを取り上げましたが、今回はプレースタイルの新たなトレンドを紹介したいと思います。

私が聞いている今シーズンのトレンドは以下のようなものがあります。

  • ビッグ同士のPnRの増加

  • スリップの増加

  • ガードのスクリーン増加

  • アクションがリムから遠くなっている

  • オフェンスの速さ

  • 2-for-1を狙いに行く頻度の減少

  • OTのラインアップをレギュレーションのクロージング・ラインアップから変更する

  • ヨキッチやエンビードを代表とするエルボーからのオフェンスの増加

  • ポストアップの減少

  • オフェンシブ・リバウンドの増加

他にもピストルアクションからのハンドオフをフェイクが増えている等細かいプレーでもたくさんのトレンドがあると思いますが、今回はウォリアーズのヘッドコーチのスティーヴ・カーが積極的にやっているという発言をして話題になったオフェンシブ・リバウンドについて取り上げます。

オフェンシブ・リバウンド

数字を見てもリーグ全体でオフェンシブ・リバウンドをクラッシュしに行くチームが多くなっています。

過去2シーズンと今シーズンの数字を比べてみます:

2021-22シーズン
オフェンシブ・リバウンド(上位10チームの1試合総合平均):11.7本
オフェンシブ・リバウンド率(上位10チーム1試合総合平均):27.1%

2022-23シーズン
オフェンシブ・リバウンド(上位10チームの1試合総合平均):11.91本
オフェンシブ・リバウンド率(上位10チーム1試合総合平均):30.6%

2023-24シーズン
オフェンシブ・リバウンド(上位10チームの1試合総合平均):12.2本
オフェンシブ・リバウンド率(上位10チーム1試合総合平均):31.5%

こうして見ると、徐々にオフェンシブ・リバウンドが多くなっているがわかります。このトレンドは攻守での理由があるようです。

オフェンスから見たオフェンシブ・リバウンド

通常はオフェンスでウィークサイドのコーナーにいる選手は相手トランジションを止めるためにすぐにディフェンスに戻る事が多いと思います。それが今はPnRが主体のオフェンスが増えて来ているのもあり、ウィークサイドの相手ディフェンスのローマンがカバーに入るようになっています。すると、システム上そのコーナーにいる選手がフリーになり、オフェンシブ・リバウンドを取りに行きやすくなっています。これはペース&スペース時代に進化しているPnRオフェンスのカタチのように見えます。

この場合、ディフェンスは相手ドライブのカバーに入るだけではなく、コーナー・クラッシャーに対応し体を入れなければなりません。そうなるとウィークサイドのチームディフェンスはますます重要になり、スリーへのクローズアウトやオフェンシブ・リバウンド阻止とますます気を抜いたりできなくなります。

https://cdn.theathletic.com/app/uploads/2023/11/14191810/2-pointer-by-Rui-Hachimura.mp4?_=1

セルティクスがウィークサイドにビッグを置く理由には、ビッグをローミングさせてリムプロテクションさせる他にも、オフェンシブ・リバウンドを取りにくる選手に体を当てさせて相手のポゼッション獲得阻止のためもあるのではないでしょうか。また、ビッグが体を入れる事によってトランジションへの参加が遅れても、オフェンスにはさほど影響がない事も考慮されたものだと思われます。

ディフェンスから見たオフェンシブ・リバウンド

スティーヴ・カーによると、アナリティクス部門からオフェンシブ・リバウンドを取りに行けば相手のファーストブレイクを止められる確率が増えるという数字があがってきているそうです。そのため、トランジション・ディフェンスが決して良いとはいえないウォリアーズはオフェンシブ・リバウンドを取りに行っているとの事です。

実際のウォリアーズのオフェンシブ・リバウンドと相手のファーストブレークの数字を見てみると(*すべて1/15時点の数字)…

  • オフェンシブ・リバウンド数:12.9本 (リーグ3位、昨シーズンは10.5でリーグ14位)

  • オフェンシブ・リバウンド率:32.3% (リーグ3位、昨シーズンは27.7でリーグ16位)

  • ポゼッションはリーグ12位

  • 相手のファーストブレイク得点:14.7点 (リーグ23位、昨シーズンは14.0でリーグ14位)

確かにウォリアーズはオフェンシブ・リバウンドを積極的に取りに行っています。今シーズン、カーが強調しているポイントのひとつではないでしょうか。ただファーストブレイクの数字に関しては、ウォリアーズはTOがリーグ23位と悪いので、その影響がありそうです。そのため、参考にしているNBAのスタッツではオフェンシブ・リバウンドが相手トランジションを止めているといった相関関係はわかりません。

実際に試合を見ていると、オフェンシブ・リバウンドに行くと、相手ディフェンスが対応しなければいけないため、数秒レベルで相手がオフェンスに入るのを止められて、その間に他の選手がディフェンスに戻っているように見えます。

また、去年からジャズがオフェンシブ・リバウンドを取りに行って実際に機能させていたのも流行りになった理由もあると思います。

みなさんも次の試合を観るときは、ぜひオフェンシブ・リバウンドとディフェンスの相関関係にも注目してみてください。

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