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ジェームズ・ハーデンのトレード:ブレイクダウン

ついにジェームズ・ハーデンがクリッパーズにトレードされました。シクサーズのプレジデントのダリル・モリーは忍耐強く行こうとしていたようですが、オーナーからトレードをするように指示されたようです。

シクサーズはこのトレードを叩き台にして、今シーズン中にジョエル・エンビードの助けになるようなスター選手を得ようとしているようなので、今回はトレードでチームがどうなるかの評価は極力控え、その詳細とキャップへの影響、そしてシクサーズとクリッパーズが次にどうするのかを検討していきたいと思います。

トレードの詳細

これは最終的にシクサーズ、クリッパーズ、サンダーの3チーム・トレードになりました。

シクサーズ獲得

  • ニコラス・バトゥーム

  • ロバート・コヴィントン

  • マーカス・モリス

  • KJ・マーティン

  • 2026年の1巡目指名権(サンダーが持つクリッパーズ、サンダー、ロケッツの中でいちばん順位が低いもの。ロケッツの指名権にはトップ4プロテクションがかかっている)

  • 2028年の1巡目指名権(クリッパーズの。プロテクションなし)

  • 2024年の2巡目指名権(ペイサーズかラプターズの良い方)

  • 2029年の2巡目指名権

  • 2029年の1巡目指名権スワップ(トップ3プロテクション)

  • キャッシュ(クリッパーズから$2M)

シクサーズはこのトレードで得る選手が入る枠を空けるために、ダニー・グリーンをウェイブします。

シクサーズはまた$11Mのトレード・エクセプション($6,831,413と$559,782)をつくっています。

クリッパーズ獲得

  • ジェームズ・ハーデン

  • PJ・タッカー

  • フィリップ・ペトルセヴ

サンダー獲得

  • 2027年の1巡目指名権スワップ(クリッパーズから)

  • キャッシュ(クリッパーズから$1.1M)

クリッパーズはサンダーに2027年の1巡目指名権スワップを送り、サンダーから2026年の1巡目指名権を得て、それをシクサーズにまわしました。サンダーの2026年の1巡目指名権にはサンダー自身の指名権以外にも、ロケッツ(トップ4プロテクション)とクリッパーズ(プロテクションなし)からの指名権があり、その中でいちばん順位が低いものがシクサーズに回される事になります。もちろん、このロケッツの指名権は、モリーがロケッツ時代にクリス・ポールとラッセル・ウェストブルックのトレードで送ったものです。それがまたモリーの元に戻って来る可能性は低そうですが、結果的にオタク心をちょっとくすぐられるトランザクションになりました。

また、面白いのが、このクリッパーズの1巡目指名権をめぐるサンダーとシクサーズの思惑です。クリッパーズは2028年の1巡目をふたつの1巡目指名権に変えて、2つの1巡目指名権を望んでいたシクサーズにオファーしようとしましたが、シクサーズはクリッパーズの2028年の1巡目指名権を望んでいたとの事。シクサーズは明らかにクリッパーズが2028年にはロッタリー級になっていると予想しているのがわかります。現在ジェームズ・ハーデンも34歳、ポール・ジョージは33歳、カワイ・レナードはケガしがちな32歳で、優勝を狙えるようなプレーができるのも後数年で、その後は順位が落ちて行くと考えるのも無理はありません。

サンダーも同じように2027年のクリッパーズは自分のチームよりも弱くなっていてドラフト順位があがっていると計算しているはずです。そうでないとクリッパーズの2027年の1巡目指名権スワップのために、2026年の1巡目指名権を出す意味がありません。たとえその賭けに負けても、$1.1Mを得ているので問題はなさそうです。

シクサーズのリターン

シクサーズはジェームズ・ハーデンを2つの1巡目指名権、1巡目指名権スワップ、2つの2巡目指名権、3つの切れる契約、安い若手ひとりに変える事ができました。
これが良いのか悪いのかいまいち判断できないので、ハーデンと同じように契約が最後だったジュルー・ホリデー(プレーヤー・オプション)とカイリー・アーヴィンのリターンと比較して見ましょう。

ブレイザーズのホリデーのリターン:

  • マルコム・ブログドン

  • ロバート・ウィリアムズ

  • 2024年1巡目指名権

  • 2029年1巡目指名権

ネッツのカイリー・アーヴィンのリターン

  • スペンサー・ディンウィディー

  • ドリアン・フィニー=スミス

  • 2029年1巡目指名権

  • 2027年2巡目指名権

  • 2029年2巡目指名権

アーヴィンはトレード・デッドラインでのトレードだったので、指名権が少なめですが、こうして夏にはフリーエージェンシーになるかもしれないエリート選手のトレードを比較してみると、シクサーズのリターンは割と妥当なものだと思います。むしろ、シクサーズはスワップをひとつ多くもらった印象です。クリッパーズはテレンス・マンをトレードせずに済んで良かったという声も多いですが、シクサーズからしてもハーデンの需要がない中で、これだけの成果をあげる事ができて良かったと思います。モリーの交渉の忍耐と粘り強さの勝利と言ったところでしょうか。

トレードの経緯

少し前までWojがクリッパーズがトレード交渉から引き下がって、しばらく動きはないだろう的なレポートをしていたので、急になぜこのタイミングでトレードがあったのか疑問が残っていましたが、The Athleticのシャムズやブランドン・ロビンソンがNBAやオーナーがトレードを仕切ったとレポートが出てきました。ロビンソンのレポートがもっとも詳細だったので紹介します。

クリッパーズとシクサーズのジェームズ・ハーデンのトレード・タイムライン:

木曜:NBAがシクサーズになぜハーデンがチーム機から追い出され、全国放送の試合でプレーしなかったのか調査すると伝えた。

金曜:NBAがシクサーズにハーデンのシチュエーションをすぐに改めるように伝えた。

金曜の夜:モリーがクリッパーズとの交渉を再開した。

土曜:クリッパーズのGMは手加減せずに、シクサーズからハーデン以上のものを欲しがった。

土曜の夜/日曜の朝:他のNBAオーナーたちが、ジョッシュ・ハリスにNFLチーム(最近買収したワシントン・コマンダーズの事だと思われます)への執着をやめて、NBAチームに注意を払えと不満を伝えた。

日曜:モリーはカウンターオファーを出した。

日曜の夜:NBAがクリッパーズのハーデンへの興味は確かなのかどうか確認するために、スティーヴ・バルマーと話した。

月曜:シクサーズのオーナーとクリッパーズのオーナーが彼らのGMたちにトレードを終わらせるように指示を出した。(これはYahoo Sportsのヴィンセント・グッドウィルも、ハリスがモリーに今あるベストなオファーを取ってトレードを終わらせろと指示したと言っていました。)

月曜の夜:Wojはトレードが「もうすぐ終わりそうだ」と警告を受け、Wojは最初にニュースをブレイクするためにロスへの飛行機に乗らなかった。

2:00amに、シクサーズとクリッパーズがトレードに合意し、飛行機に乗らなかったWojは空港のラウンジから追い出されて家に帰った。モリーは4:00am ESTにベッドに入った。

シャムズは、「シクサーズのオーナーのジョッシュ・ハリスとクリッパーズのオーナーのスティーヴ・バルマーが電話でハーデンのトレードの詳細を詰めたそうだ。シクサーズはシーズン2勝1敗でスタートした後月曜に、球団はハーデンとのチームの関係はもはやうまくいかないと判断した」とレポートしていました。

シーズンがはじまっても何も動きがなかったにも関わらず、急にトレードがあったのは、前科のあるハーデンがまた何かやらかすのを恐れてと言うよりも、NBAやオーナーが初のインシーズン・トーナメントを成功させたいからではないかと思ってしまいました。これが成功すれば、これからディズニーやアマゾンら相手に本格的にはじめるメディア権の交渉でも切り売りできるイベントとして売れそうです。インシーズン前にシクサーズの不安定な状況をリセットして、リーグ全体が万全な状態でNBAカップに臨むようにしたと思うのは考えすぎでしょうか。

シクサーズ

このトレードにより、シクサーズのタックスが$19.8Mから$6.4Mに減りました。今はタックスを$4.8M超えていますが、The Athleticのジョン・ホリンジャーによると、ファーカン・コークマスの$5.4Mをトレード・デッドラインまでにトレードして、残りの2ヶ月をミニマム選手でやり過ごせば、タックスを17セントだけ回避できるようです。タッカーもトレードに入ったのはそのためだと思われます。

タッカーがいなくなって助かったのは今シーズンのタックス節約だけではなく、来シーズンのキャップスペースもです。タッカーの$11Mがなくなり、残っているのはエンビードの$51.4Mとタイリース・マキシィのキャップホールドの$13M、それにポール・リードの$7.7M(来年は無保証ですが) のみで、開けられるキャップスペースはなんと$69.9Mにもなります。10年選手のマックスが$49Mなので、もしカワイ・レナードやポール・ジョージがFAになれば、どちらかひとりとマックス契約が可能な数字です。もし今季クリッパーズがプレーインレベルなら再建やリツールもあり得るので、その可能性もあり得ます。もし他のオールスター級の良きフリーエージェントが得られなければ、ミルトンやハリスと再契約をしても良いでしょう。

また、今後のシクサーズの大きなトレードは今回のトレードで得た契約をアグリゲイトできるようになる1/1以降になると予想されます。シクサーズが狙うであろう選手には、ブルズのザック・ラヴィーン、ラプターズのO.G.・アヌノビー、ウィザーズのカイル・クズマ、ブレイザーズのジェラミ・グラント、ピストンズのボーヤン・ボグダノヴィッチ、ペイサーズのバディー・ヒールドの名前があがっています。

クリッパーズ

クリッパーズはこのトレードでタックスが$99.3Mから$29.1M増えて$128.4Mになりました(ペトルセヴのトレード前)。

さすが世界長者番付5位のオーナーだけあります。セカンドエプロンのタックスも意に介していません。ブルームバーグによると、彼の総資産は$117B (10/31時点)もあるので、その0.1%の$100Mのタックスはどうって事ないのかもしれません。

また、来年になれば、いくら金があってもエプロン超えのチームはトレードで契約をまとめて出す事ができなくなります。そのため、今のうちに金を使って来年以降のキャップシートに数字を補充しておこうと思っているかもしれません。

また、ハーデン、ジョージ、レナードは来年3人ともフリーエージェンシーになる事ができます。とは言っても、クリッパーズもハーデンのたった1シーズンのレンタルにこれだけのアセットとタックスの犠牲は払わないと思うので、何らかの事前合意はしてあると予想されます。ハーデンもバードライツで、シクサーズがオファーしたと言われている1+1の2年契約以上の契約をする事も可能になります。

クリッパーズもこの先この3人がどうメッシュして行くのか見極めた上で、今後どうして行くか決めるでしょう。$18Mのノーマン・パウェルや2030年の1巡目指名権を使えば更なるトレードが可能です。


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