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ウォリアーズはなぜロードで勝てないのか

ウォリアーズはホームは30-8とリーグ5位ですが、ロードではタンク中のピストンズと並び9-29のリーグ28位タイで、その下にはタンクチームのスパーズ、ロケッツしかいません。(*以下のスタッツすべて3/27時点のものになります)

3/21のロケッツに勝つまでは、なんとロード11連敗!あと1敗でディフェンディング・チャンピオンの史上最多ロード連敗記録に並ぶところでした。

なぜウォリアーズはロードで勝てないのでしょうか。The Athleticのジョン・ホリンジャーの分析を紹介しながら考えていきたいと思います。

● 問題はオフェンスなのか、ディフェンスなのか

ウォリアーズのロードの課題を絞っていくために、まずは問題がオフェンスにあるのかディフェンスにあるのか見てみようと思います。ウォリアーズのオフェンスは、ホームは15位でロードは13位とあまり違いがありません。オフェンスがホームよりロードの方が良いと言う事はオフェンスが問題という訳ではなさそうです。

◼️ ホームでのアドバンス・スタッツ:
・オフェンシブ・レイティング:115.3(15位)
・ディフェンシブ・レイティング:107.3(3位)
・ネット・レイティング:7.4(6位)
これはチームのホームの成績とほぼマッチしています。

◼️ ロードでのアドバンス・スタッツ:
・オフェンシブ・レイティング:113.3(13位)
・ディフェンシブ・レイティング:119.8(28位)
・ネット・レイティング:-6.5(27位)
こちらもロードの成績とほぼマッチしています。

ステフがいるウォリアーズのオフェンスがリーグ中間というのはあまりピンと来ませんが、ホリンジャーも「これでGMを含むショックを受ける人もいるだろうが、ステフが素晴らしくてもウォリアーズのオフェンスはKDが抜けてからミドル(普通)だ」と指摘しています。確かに調べてみると、優勝した昨シーズンもレギュラーシーズンでのオフェンスは16位でした(その前のシーズンは20位)。

やはりロード問題は、ホームの3位→ロードの27位にまで落ちてしまうディフェンスにあると思われます。

● スリーポイント

ホリンジャーがあげているポイントにまず、「スリーポイントの分散」があります。

ウォリアーズはロードでは相手のスリーポイントに関してはかなりアンラッキーです。例えば、シーズン通してスリーの成功率が27.1%のジョン・コリンズは、ウォリアーズ戦では57.1%(4-7)と爆発。グリズリーズのディロン・ブルックスは3/19のウォリアーズ戦まではスリーの成功率が31.7%でしたが、試合では4本中4本決めていました。またグリズリーズ自体もスリーポイント成功率はリーグ全体で24位ですが、ウォリアーズ戦では38本中18本と47%以上を決めて試合に勝っています。

◼️ 相手チームがスリーを撃つ本数
ホーム:35.7本(リーグ24位)
ロード:35.7本(リーグ21位)

これは同数ですが、スリーが決められている本数に大きな違いが出てきます。

◼️ スリーを決められている本数
ホーム:11.6本(10位)
ロード:14.5本(29位)

ロードでは相手のスリーポイント成功率が41.1%とリーグ29位で、その数字が39%より悪いチームにはウォリアーズとスパーズしかいないくらい高過ぎる数字です。ちなみにリーグの中間値は36.7%になっています。

反対にウォリアーズはホームでは恵まれていて、チェイスセンターでは相手スリーポイント%が32.4%とリーグ30位になっています。

また、BBall Breakdownのコーチ・ニックが調べたところによると、ウォリアーズが相手に許すコーナー・スリーもホームとロードとで大きな違いがあるそうです。(*データがいつまでのものか不明)

◼️ コーナー・スリーを決められている%

ホーム:29.5%
ロード:45.6% !!

相手のスリーが決まった場合、相手のディフェンスはほぼ戻っていると考えていいでしょう。その上、後述するフリースローもかなり与えているので、アウェーの試合ではセットディフェンス相手のポゼッションが多くなり、ゲーム・マネジメントもよりむずかしいものになっていそうです。

● 2ポイント・ディフェンス

ホリンジャーはふたつ目に「2ポイント・ディフェンス」をあげています。ウォリアーズの2ポイント・ディフェンスはロードで55.2%(リーグ13位)と平均的で、ドリブルドライブを防げていない事が見てとれます。ホームの53%(リーグ7位)と比較すると2.0%悪くなっています。

これ以外にもウォリアーズのロードでの悪い数字や、ホーム vs ロードでの顕著な数字の違いがたくさんあります。

● ファウル

◼️ パーソナル・ファウル
ホーム:20.9本(リーグ21位)
ロード:22.2本(リーグ30位)

それに比例して相手のフリースローもあがります。

● フリースロー

◼️ 相手のフリースロー・アテンプツ
ホーム:24.7本(リーグ21位)
ロード:26.3本(リーグ29位)

◼️ 相手のフリースロー・メイド
ホーム:18.7本(リーグ17位)
ロード:20.6本(リーグ28位)

ホリンジャーはこれを「大量出血」と呼んでいます(笑) 。たしかにウォリアーズが得る平均フリースロー得点は16点なので、これだけで2ポゼッションの差が出てきます。それに前述したように、スリーも多く決められているます。そうなると、いかにウォリアーズがスリーをリーグトップレベルで決めたとしても、結局そのアドバンテージが相殺されてしまいます。それにロードでのターンオーバー数が平均16.7本とリーグ最下位です。ウォリアーズはなんだかんだで試合を3~6ポゼッションのマイナスから始めるような状態になってしまっています。

● ペイント内ディフェンス

またディフェンスでホームとロードの数字が顕著に違うのに相手のペイント内での得点があります。

◼️ 相手ペイント内得点
ホーム:49.3(リーグ3位)
ロード:50.3(リーグ27位)

ペイントから更にバスケットに近くなるリストリクテッド・エリアでの数字も悪くなっています。

◼️ 相手リストリクテッド・エリア内アテンプツ(*コーチ・ニック調べ)

ホーム:14.24本
ロード:25.84本

相手がスリーを外した時、相手のオフェンシブ・リバウンドが増えてペイント内の得点があがるとも考えられますが、下のデータのように相手オフェンシブ・リバウンド数はホームもロードも変わっていません。むしろホームの方が悪いくらいなので、原因はオンボールのディフェンスを突破されて、バスケット近くまでドライブされている事が考えられます。

◼️ 相手のオフェンシブ・リバウンド数
ホーム:10.7(18位)
ロード:10.4(16位)

● アシスト数

相手のアシスト数もかなりの違いが生まれています。

◼️ 相手のアシスト数
ホーム:24.0(リーグ7位)
ロード:27.5(リーグ29位)

◼️ 相手のキャッチ&シュートのスリーポイントメイク
ホーム:8.5本(リーグ12位タイ)
ロード:10.9本(リーグ30位タイ)

このように相手のスリーのキャッチ&シュートにもこのようにホームとロードで差があるとなると、スリーのアシストも増えている事が見てとれます。

以上の数字から仮説を立てると…

(a):ドリブルで切り込まれる。
(b):(a)の結果、止めるために手を出してファウルをしてしまう。
(c):(a)の結果、フリースローを多く与える。
(d):(a)の結果、ペイント内やリストリクテッド・エリアで決められる。
(e):(a)の結果、守備のローテーションが崩され、パスをスリーポイントラインにキックアウトされてスリーを決められる。
(f):単なるアンラッキーで、相手のスリーがランダムに決まりすぎる。

というような可能性が考えられます。ドリブルで切り込まれるところまではリーグ平均ですが、これらの数字からはその後ディフェンスがもろもろ崩れているのが感じ取れると思いますが、いかがでしょうか。

● 選手のパフォーマンス

ここまでロードの成績に影響を与えていそうな数字を見てきましたが、その数字が悪くなっているのは特定の選手によるものなのでしょうか?

まずはステフ、クレイ、ウィギンス、ドレイモンド、ルーニーのウォリアーズ最強ラインアップの数字から見ていきます。このラインアップはシーズン開幕からリーグトップレベルのネット・レイティング(21.9!!)を叩き出しています。そのラインアップのホーム vs ロードを見てみると…

◼️ ステフ、クレイ、ウィギンス、ドレイモンド、ルーニーのホーム

・オフェンシブ・レイティング:132.2
・ディフェンシブ・レイティング:98.1
・ネット・レイティング:34.0 !!

◼️ ステフ、クレイ、ウィギンス、ドレイモンド、ルーニーのロード

・オフェンシブ・レイティング:123.5
・ディフェンシブ・レイティング:114.9
・ネット・レイティング:8.6

ホームでは34.0という圧倒的強さを誇っていますが、ロードの数字は8.6へと急激に落ちてしまっています。落ちていると言っても、この数字は今リーグベストのチームのネット・レイティングに匹敵する数字なので、これが素晴らしいラインアップである事には変わりありません。そんなチャンピオンシップ・ラインアップでもロードの数字が悪いと言う事は、問題の中心は特定の選手ではなく、チーム全体の問題なのかもしれません。

次に、ウォリアーズのディフェンスが良いと言われている選手を個別に見ていきます。

ディフェンスの要のドレイモンド・グリーンがいる時でもロードでは119.6点(チームディフェンスは119.8点)を許していて、ホームでは102.4点(チームディフェンスは107.3点)を許しています。また、昨シーズンはドレイモンドのオン/オフが+2.6だったのに対して、今年は+13.3と改善しています。ドレイモンドの個人的なディフェンスも良く、ディフェンシブEPMは+3.2で99パーセンタイル(昨年は1位)です。それにチームのディフェンスがリーグトップだった昨シーズン、ドレイモンドは46試合しか出場していません。

こうして見ると、ドレイモンドのディフェンスはまだ衰えておらず、彼がロード不振の原因とは言えなそうです。むしろ彼がいなければもっとディフェンスは悪くなるのではないでしょうか。

では、ウィングのウィギンスのディフェンスはどうでしょうか。

感覚的には、相手チームのエースにマッチアップできるウィギンスがいないのは大きいように思われます。今シーズン彼が出場していた時はウォリアーズのホームのディフェンシブ・レイティングは109.9でリーグトップレベル、ロードでのディフェンシブ・レイティングは115.9でリーグ25位前後になっています。これを見るとウィギンスがいてもいなくてもロードの数字は悪く、彼が問題になっているとは言えなそうです(チームのロードのディフェンシブ・レイティングは119.8)。

では、ペリメーターディフェンスが得意のゲーリー・ペイトンIIが帰ってくればディフェンスは良くなるのでしょうか?

昨年ペイトンが出場していなかった時のウォリアーズのディフェンスは5位ですが、ペイトンがいなかった今シーズンは19位だそうです。ちょっとだけ期待が持てます。ただ、気になるのは、今年のウォリアーズのディフェンスがこれほどまで落ちた理由はペイトンがいなかったからなのかと言う事です。ペイトンの代わりに獲得したディヴィンチェンゾがマイナス・ディフェンダーだとは思えません。オフボールのディフェンスのローテーションが遅い時もありますが、ここまでディフェンスが落ちる原因とまではいかないと思います。

では、ローテーションの時間の多くを占めるステフ、クレイ、プールらのガード陣が問題なのでしょうか。

プールはディフェンスがオンボールもオフボールも得意にはしていませんが、それはチームディフェンスがトップクラスだった昨年も同じです。クレイの守備の衰えも良く指摘されていますが、ウォリアーズはクレイが本調子ではなかった昨シーズンの方がチームディフェンスは良かったのです。しかも、今シーズン、クレイはオフボールのヘルプやウィークサイドのローテーションにも慣れてきて、ディフェンスは良くなっているように見えます。

こうして見ると、特定の選手のパフォーマンスでロードの成績が悪くなっている訳ではなさそうです。仮にそんな選手がいたら、数字に顕著に出てきてすぐにわかると思います。

そうなると、ウォリアーズのロード不振はメンタル的な要因や、相手チームがディフェンディング・チャンピオンに対してやる気を出している事などの数字に出てこない要素が原因の可能性もあります。

数字に出て来ないと言えば、今シーズンからディフェンシブ・コーチがマイク・ブラウンからケニー・アトキンソンに変わった事も影響がありそうです。

今シーズンにキングスのヘッドコーチに就任し、コーチ・オブ・ザ・イヤー確実と言われているブラウンは、昨シーズン、ウォリアーズのディフェンシブ・コーチを任された時、独自のディフェンスのアドバンス・メトリックスを開発して、ディフェンスが良かった選手を試合ごとに表彰するなど工夫をしていたようです。ひょっとしたらブラウンがかなり優秀だった可能性もあります。

確かに試合を見ていると、今年はゾーン系のディフェンスやピールスウィッチなどブラウン時代と比べてスキームの手数が減っているように感じますが、それでもなぜホームとロードでこれだけディフェンスに差が出るのか説明はできません。もしウォリアーズがプレーオフに進出して、ロードでのディフェンスが良くなれば、問題はスキーム&メンタルだったと言えますが…

(マイク・ブラウン:Photo by Andy Lyons/Getty Images)

仮にウォリアーズのオフェンスがこのままだとすると、彼らが優勝するにはディフェンスを去年レベルまで持って行く必要があります。ホーネッツはオールスター前はディフェンスが25位でしたが、オールスター後には1位に飛躍して話題になりました。昨年ディフェンスがリーグ2位だった時の主力選手がまだ残っているウォリアーズもそうなれるポテンシャルはあると思います。しかし、プレーオフももう間近です。このまま行けば、ロードで勝たなくてはいけないプレーオフ・シリーズでの苦戦は必至です。早急にディフェンスのアイデンティティーを立て直す必要があります。

● ウォリアーズのロード問題をまとめ

ウォリアーズのロードでの悪い数字をまとめると:

  • ディフェンシブ・レイティングが28位

  • 相手チームにスリーポイントを与える率がリーグ29位

  • ディフェンシブ・リバウンド率がリーグ23位

  • ファウル本数がリーグ30位

  • 相手にフリースロー本数を与える数がリーグ28位

  • 相手チームにペイント得点を許す確率がリーグ27位

  • 相手にアシスト数される本数がリーグ29位

  • 相手のキャッチ&シュートのスリー本数がリーグ30位タイ

  • ターンオーバーはリーグ30位だが、それはホームも変わらない。またクラッチでのTO数はリーグ29位。


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