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ニックスとラプターズのトレードについて

12/30に訴訟でもめているニックスとラプターズがO.G.・アヌノビーを中心としたトレードをしました。しかも、トレード・デッドラインまであと6週間近くもあり、ラプターズは引き手数多であるはずのOG・アヌノビーのトレード交渉でまだまだ良いアセットを引き出せる可能性がありました。なぜこのタイミングでトレードが成立したのでしょうか。詳しく見ていきたいと思います。

トレード内容:

ニックス獲得:

  • OG・アヌノビー($18.6M)

  • プレシャス・アチウワ($4.3M)

  • マラカイ・フリン($3.8M)

ラプターズ獲得:

  • RJ・バレット($23.8M)

  • イマニュエル・クィックリー($4.1M)

  • 2024年のピストンズの2巡目指名権

こうしてみると、オーソドックスな選手同士のトレードのようです。内容を詳しく見て行きましょう。

ニューヨーク・ニックス

ニックスは昨シーズンからウィングにサイズを求めていて、3&Dのアヌノビーを狙っていたと言われていました。昨シーズンのトレード・デッドラインでは複数の1巡目指名権をオファーしていたとも言われています。ニックスとしては1年越しにやっと狙っていた選手を確保する事ができたという感じでしょうか。

その布石として、アヌノビーは去年の6月末にエージェントをクラッチ・スポーツからCAAのサム・ローズに変えています。サム・ローズの父親は元CAAのトップで今ニックスのプレジデントのレオン・ローズなので、かなりがっちりとアヌノビーを抑えに行った感があります。このような水面下での動きがやっと実を結んだトレードだったと見てもいいでしょう。

もちろんドラフト指名3位のRJ・バレットと有望な若手のイマニュエル・クィックリーを諦めなければなりませんでしたが、アヌノビーがSFに入った事により、チーム構成的にはより理にかなったものになったと思います。

まずSFのポジション的に以前よりもサイズも長さも出てきて、スリーが37.4%(バレットは33%)になり、オフェンス面でジェイレン・ブランソンのためにより広いスペースを空ける事もできるようになりました。もちろんディフェンスのレベルもあがり、優勝候補チームのジェイソン・テイタムやヤニス・アデトクンボ、ジミー・バトラーらのウィングにも以前よりもかなりマッチアップできるようになります。アヌノビーは1や5も守る時もあり、ディフェンスのスキームの幅も広がりました。

ニックスの2019年の3位指名だったバレットの評価は割れていたようです。彼のハイキャラクターや才能、懸命に練習する姿勢はプラスでしたが、コート上では非効率で、リムまわりの得点ができず、ジャンプショットも良くなく、時にトンネルビジョンになってしまうと言われていて、ここから更に成長できるのか疑問視されていたようです。バレットの大きな支持者だったGMのスコット・ペリーがいなくなった事もあり、バレットのトレードは不可避だったのかもしれません。

クィックリーですが、彼のスリーは39%以上で、ブランソンとの2マンゲームは100ポゼッションでプラス5とそこそこ良いものでした。クィックリーの問題はサイズでした。ブランソンは6’2”でクィックリーは6’3”で、バックコートとしては小さなものになります。ニックスには他にも2でプレーできる6’4”以上のウィングが多くいます。スリーもサイズもクィックリーよりも良いディヴィンチェンゾがいるので、クィックリーがいなくなってもそれほど困らないという判断をしたのだと思われます。

またニックスにはクィックリーに対するジレンマがありました。彼はこの夏にRFAになりますが、そのサラリーはスターターレベルの$20Mは行くと言われていて、すでにブランソンがいるニックスにとって、未だスターターになれていないクィックリーにそのようなサラリーを払う事はためらわれます。

ミッシェル・ロビンソンを失った(少なくても長期的に)ニックスにとって、4も5でもプレーできるプレシャス・アチウワ獲得はサラリー面でもニックスに自由度を与えてくれますし、もし控えのアイゼィア・ハーテンスタインが夏にFAで出て行ってしまった時の保険にもなり得ます。

また、ニックスにはオビ・トッピンのトレードでつくった$6.8MのTPEと今回のバレットのトレードでつくった$5.2MのTPEがあります。タックスまで$6Mほどなので、バイアウト市場で誰かをピックアップする可能性もあります。

ニックスに残っているのはTPEだけではありません。指名権も全て残っています。それに加え、他チームからの指名権が3つあるため(プロテクションがかかっていて実質マブスの1つしか貰えなさそうですが)、トレードをする気があるならまだ動けそうです。しかし、ESPNのWojによると、ニックスは次のスター獲得には慎重に動くとの事なので、次の大きなトレードはドラフトかFAシーズンがはじまった時になりそうです。夏になれば、切れる契約のフォーニェ、ハート、ディヴィンチェンゾ、グライムスの組み合わせでマックス契約のトレードができるようになるので、それを狙っているのかもしれません。

ニックスにとってこのトレードはサイズとディフェンスのスキームの幅が広がる3&Dのアヌノビーと、バックアップ・ビッグマンのアチウワを得られたのはプラスだったと思います。


トロント・ラプターズ

昨シーズンからトレードの噂が出ていたアヌノビーがついにトレードされました。昨シーズンはデッドラインでグリズリーズから1巡目指名権3つのオファーを受けたと言われているので、今回のリターンは少なすぎると思われるかもしれませんが、彼はこの夏にフリーエージェントになる事ができるので、トレードしたチームは数ヶ月のレンタルになってしまう可能性がありました。

実際に夏のウィングのFA市場を見てみると、ポール・ジョージやカワイ・レナード、レブロン・ジェームズが現在の所属チームと再契約すれば、アヌノビーがウィングでトップのFAになる可能性もあります。そうなれば、キャップがあると言われているピストンズやシクサーズなどと総取り状態になって、彼を失ってしまう可能性もあります。そのリスクを考えれば、事前に再契約を握っていない限り、チームとしては1巡目は出せないでしょう。

そういった意味では、アヌノビーはニックスとの再契約にほぼ合意していると思われます。前述したようにアヌノビーのエージェントはCAAのサム・ローズで、ニックスのプレジデントのレオン・ローズの息子です。むしろ握っていないとおかしいでしょう。

また、FAになる選手がシーズン途中にトレードに出された時に出された1巡目指名権の数を比較すると、最近だとカイリー・アーヴィンで1つ、ジェームズ・ハーデンで2つでした。ピストンズの2巡目指名権はこのままいくと31位か32位になり、ほぼ1巡目と言ってもいいでしょう。まだスターではなくロールプレーヤーのアヌノビーのリターンとしては妥当だと思います。

キャップ的にはラプターズはこのトレードでタックスまでわずか$1.9Mになりました。このトレードにフリンを含めたのはタックス対策のためだと考えられます。

ロスター的には、クィックリーはガードポジションでスリーが撃てて、チームディフェンスもできるため、ラプターズのバックコートにこれまでになかった次元を与えてくれます。RJ・バレットはディフェンスもスリーもアヌノビーよりも劣りますが、オフェンス的には良くなっています。何より二人とも、年齢的にもプレースタイル的にもスコッティー・バーンズと合いそうです。現在6’6”のバレットは2でプレーしているようですし、今後チームに残るかわからないアヌノビーを出してふたりのバックコートのスターター獲得できたので、総合的なロスター構成はプラスになったと思います。

しかし、ラプターズはなぜ需要が多いアヌノビーのトレードをデッドラインまで引っ張って、リターンを最大限にできるか試さなかったのでしょうか。

その理由のひとつに、ラプターズには2024年の1巡目指名権がないため、再建よりも今シーズンは少しでも良い成績を残す事を優先した事が考えられます。バーンズ、シアカム、アヌノビーではプレーイン争いしかできず、オフェンスは17位で、ネット・レイティングは22位とロッタリーチームのレベルでした。チームが機能していなかったのは間違いありません。

ラプターズは手遅れになる前に早めに手を打って(デッドラインの1ヶ月前)、プレーオフを目指そうとしているのだと思います。スモール・サンプルですが、このトレードからラプターズは4試合して3勝1敗で、オフェンスは6位、ディフェンスは21位、ネット・レイティングは10位になっています(1/9時点)。

こうなってくると、契約が今シーズンまでのシアカムのトレードも気になります。ラプターズはデッドライン前までシアカムがどうバーンズ、クィックリー、バレットとフィットするか様子を見ると言われています。もしフィットすれば契約延長(最高サラリーは4年で$190M)、フィットしなければトレードになりそうです。

また、シアカムが夏にラプターズと再契約するかも不明ですし、ラプターズがシアカムにタックス覚悟で大きな契約をするのかも微妙です。それであれば、シアカムをトレードして、バーンズやクィックリーのタイムラインにマッチした選手を得た方が良さそうです。それにトレード・デッドラインまでの期間中に、バーンズ、クィックリー、バレットを中心としたチームづくりに必要なのはどのような選手なのか評価もできます。

現在、シアカムに興味を持っているチームにはキングス、ペイサーズ、マヴス、ホークス、ピストンズと言われています。クリス・ヘインズは大穴でウォリアーズもトレード候補だと言っていました。シアカムを欲しがっているチームは多くありそうですが、問題はトレードした後でシアカムが再契約してくれるかです。

シアカムがチームを変えて得られるマックスは4年で$183.1M、初年度のサラリーは$42Mになります。シアカムはマックスを払えないチームには再契約しないと伝えていて、それもキングスが交渉から撤退した理由のひとつになっているそうです。シアカムの2月から4月のレンタルにチームもそこまで出せませんから、ラプターズがシアカムのトレードで多くを得ることは厳しいと思います。現状高く売りたいラプターズと安く買いたいチームの間の価格の開きが多すぎて、トレード交渉もなかなか進んでいない状態です。シアカムのトレード噂はいろいろ出て来ているのですが、今後トレードが成立した時に詳しく取り上げていきたいと思います。

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