テリー・ロジアーのトレードについて
オフシーズンからブラッドリー・ビールやデミアン・リラードのトップレベルのガードたちからの移籍希望先になっていたマイアミ・ヒートがテリー・ロジアーをトレードしました。ビールやリラードのネームバリューと比べると見劣りますが、オフェンスEPMではトレード市場に出されているデジョンテ・マレーやザック・ラヴィーン、タイラー・ヒーロー、ビールよりも良い数字(+2.0)を出しているので、それほど悪くないように見えます。
しかし、キャップシートを見てみると、このトレードのポイントはヒートとロジアーのフィットだけではなく、夏以降の未来を見据えたものになっています。米国メディアもロジアーのヒートへのフィットだけを取り上げて、ヒートの本来の狙いはあまり語られていないようなので、今回はこれについて解説していきます。
ますはトレードの内容から見ていきましょう。
マイアミ・ヒート獲得
テリー・ロジアー
*ヒートは$6.4Mのトレード・エクセプション。
シャーロット・ホーネッツ獲得
カイル・ラウリー
2027年1巡目指名権(ロッタリープロテクション)
ヒートは2025年のロッタリープロテクションがかかった1巡目指名権をサンダーにトレードしていて、それが2025年に渡らなければ2026年の1巡目指名権に変わります。その場合にホーネッツが得られる1巡目指名権は2027年ではなく2028年のものになります。
ヒートは1巡目指名権を使ってプレーメイクもあるロジアーを獲得してPGポジションを補強しました。同時に、$29.7Mと大きなサラリーの割には生産性が急激に落ちたカイル・ラウリーに1巡目指名権をつけてサラリーダンプをしたようにも見えます。これはヒートが戦力補強とサラリーダンプを両立させたトレードと考えていいでしょう。
チームの補強的には、ドライブする選手がいなかったヒートにとって、バスケットまで切り込めるロジアー獲得により、オフェンスの幅が広がります。ロジアーのスリーは平均的なので、マイナスにはならないでしょう。ディフェンスに関しては、ホーネッツ時代のロジアーは数字的にも良いとは言えませんでしたが、セルティクス時代は悪くなかったので、ヒートカルチャーに入れば昔のようなディフェンスも取り戻せるのではないかと言われています。
キャップ的には、ラウリーをロジアーに変えてタックスを$12M節約できました。トーマス・ブライアントのようなミニマムの選手をサラリーダンプできればファーストエプロンも回避できます。更に、夏にFAになってサラリーが$15~$20Mは行く言われているケイレブ・マーティンをトレードに出せばタックス回避も可能です。ハメスの台頭もある中、来シーズンにマーティンに$20Mレベルのサラリーを払ってタックスに入るべきなのかの悩ましい問題もあります。デッドラインやドラフトでヒートがどう判断するのかにも注目です。
また、来シーズンにラウリーがいなくなっても、ヒートにはキャップスペースがありません。そのため、スター級の選手獲得はトレード以外にあり得ないのですが、現状そのためのトレードに使えるミッドレベルの契約はダンカン・ロビンソンだけです。マーティンと再契約できればいいのですが、彼もFAで他のチームに行く可能性もあり得ります。また、再契約できたとしても、彼をトレードできるのは12月に入ってからしかできません。そうなると、夏のトレード市場でスーパースターが出てきても思うように動けない可能性もあります。
しかし、ロジアーの$24.9Mの契約があれば、ジミー・バトラーとバム・アデバヨ、タイラー・ヒーローを含めずにスーパースターとのサラリーマッチができるようになります。他のミドルレンジ級のトレードになっても、相手チームはロビンソンよりもロジアーの方が価値があると見るでしょう。同時にロジアーのサラリー的にも今シーズン終われば2年$51Mなのでキャップ的な負担はあまり感じられません。
それにシーズンが終われば、6月のドラフトで2024年の1巡目指名権と2030年の1巡目指名権も出せるようになります。2029年と2031年のスワップも可能です。サラリーマッチできるサラリー+若く有望なハメスを入れるとほのめかせば、スーパースターのトレード交渉の場にはつけるでしょう。Yahoo Sportsのジェイク・フィッシャーによると、ロジアーのトレード前にヒートのホワイトボードにはデマー・デローザンの名前が書いてあったそうで、まだヒートはスター級の選手のトレードを狙っているはずです。これは未来のブロックバスターに備えた動きでもあります。
このトレードを通してわかる事は、ヒートはロジアーをゲットして現在のチームを強化しつつ、財政的にもアセット的にも今シーズン以降の未来を見据えていると言う事です。ブロックバスターのようなハデなトレードではありませんでしたが、ヒートにとっては1石で3鳥を仕留める素晴らしい内容だったと思います。
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