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ジェームズ・ハーデンのトレード要求

ジェームズ・ハーデンが$35.3Mのオプションをオプトインしてからのトレード要求!

ハーデンがトレード要求をするのは2年半で3チームに対して3回目。The Ringerのビル・シモンズの言うように、違うチームにトレード要求した数は史上最多かもしれません。21世紀では間違いなく最多でしょう(同じチームに何度もトレード要求するのは除く)。

しかも、シクサーズとの再契約がほぼ確実で、問題は契約の長さだけだと言われていただけに、いきなりのトレード要求はショックです。

なぜハーデンはトレード要求をしたのでしょうか?

それを理解するためには、まず次の疑問を解消しておく必要があります。

(A) ハーデンはなぜ契約をオプトアウトしてフリーエージェンシーになって、気に入ったチームに行こうとしてなかったのか?

(B) なぜシクサーズと契約延長してサイン&トレードができなかったのか?

(A)に関しては、ハーデンのFA市場はなかったようです。キャップルームがあったチームは以下になりますが、彼が望んでいるような数字と契約年数が出せるチームはロケッツしかありませんが、ロケッツもこの数週間はハーデンを追わない事にしたと言われています。

これが6/30時点のキャップスペース順位です。

  1. ロケッツ:$60.4M

  2. スパーズ:$30.9M

  3. ペイサーズ:$30.4M

  4. ピストンズ:$26.3M

  5. マジック:$21.8M

  6. サンダー:$16.6M

  7. キングス:$16.5M

  8. ジャズ:$12.3M

また、スパーズやペイサーズのようなチームも再建中なので、ベテランのハーデン獲得のためにトレードしてキャップスペースを空けようとするとは考えられません。

(B)にはテクニカルな問題があります。サイン&トレードは最低3年の契約延長をしてからでないとできない決まりになっているのですが、ハーデンは肝心な契約延長ができません。CBAでは契約延長は契約してから最低2年経っていなければならないので、今の契約からまだ1年しか経っていないハーデンは契約延長ができないのです。そのため、このサイン&トレードの選択肢も外されます。

そうなると、ハーデンが希望するチームに行くためには、現在の契約をオプトインして、シクサーズにトレードしてもらう以外に方法はありません。

なぜハーデンはトレード要求をしたのか

優勝したいと言い続けているハーデンですが、なぜシクサーズから出て行きたがっているのでしょうか。シクサーズにはMVPのジョエル・エンビードもいますし、ヘッドコーチもハーデンが嫌いだったと言われているドック・リヴァースから策士のニック・ナースに変えています。このままいけば、シクサーズは間違いなくイーストの優勝候補に入るでしょう。

どうやらハーデンが問題にしていたのは「優勝できるか」ではなく「リスペクト」だったようです。The Athleticのサム・エイミックによると、FAを迎えようとしているハーデンはシクサーズの対応に「かなりアプセットしていて」シクサーズに「ハッキリと不満を伝えていた」そうです。Yahoo Sports!のジェイク・フィッシャーも同じように、ハーデンと彼のエージェントはシクサーズから「ディスリスペクト」されていたと感じていたとレポートしています。

シクサーズはハーデンに何をしてしまったのでしょうか?

ハーデンは昨年の夏に$47.4Mのプレーヤーオプションを取り下げてシクサーズと$33Mで再契約しています。シクサーズのために$14Mも犠牲にしたにも関わらず、シクサーズはハーデンに今回はどのようなオファーになるのかを伝えずに、今年市場に出て自分の価値がどのようなものなのか試すように促していたそうです。見てきた通り、市場にはハーデンに大金を出すチームはありません。

もし、ハーデンが市場に出て、キャップスペースが1日で干上がってしまえば、ハーデンはバードライトがあるシクサーズと契約するしかなくなります。しかも、シクサーズからはかなり足元を見られるでしょう。エイミックによると、ハーデンサイドは交渉のレバレッジがなくなるような妥協はしたくなかったため、オプトインからのトレードを要求したようです。

シクサーズが恩義があるハーデンに対してドライな対応をしたのは、プレジデントのダリル・モリーが「タンパリング」をしたくなかったからだと言われています。シクサーズは昨シーズンNBAからPJ・タッカーとダヌエル・ハウスの契約でタンパリングの調査に入られて、黒認定されてしまい、2023年と2024年の2巡目指名権を没収されています。今回もそれと同じ事にならないように、裏交渉はせずにきちんとFAが開始してから交渉しようとしていたようです。

とは言え、シクサーズが無計画でFAに望む訳はなく、ハーデンに払いたいサラリーと契約年数はすでにわかっているはずです。エイミックは、シクサーズは短期的且つチームフレンドリーな契約をオファーする準備をしていたとレポートしています。フレンドリーなサラリーがどのくらいな数字なのかわかりませんが、その響きからマックス近くではなさそうです。EPSNのウィンドーストは、シクサーズが考えていた金額はマックス近い数字で問題は契約年数だと言っていました。

ジェイク・フィッシャーは、シクサーズは「ハーデンが優勝候補になるようなチームに貢献したにも関わらず、彼にそれに見合うような複数年をオファーするつもりがある事を示唆しなかった」とレポートしています。そのため、ハーデンサイドからはシクサーズはハーデンをそれほど連れ戻そうとしたがっていないように見えていたそうです。

金額はレポーターたちによってブレがありますが、全員が共通してシクサーズのハーデンへのオファーは短期契約だと伝えています。ソースがハーデンのエージェントかもしれないので当たり前かもしれませんが… ハーデンも来シーズン開幕前には34歳になっているので、シクサーズが長期契約をしたがらないのも理解できます。去年のハーデンとの再契約の時も、同じようにシクサーズは長期契約を避けていたそうなので、それがシクサーズのハーデンに対するスタンスなのでしょう。また、シクサーズには今年か来年の夏にはRFAになるタイリース・マキシィの契約延長も控えています。新CBAも金を使うチームのチームづくりをむずかしくしまう。シクサーズとしてはハーデンにあまり大きな金額をかけたくなかったのかもしれません。

ちなみにハーデンはシクサーズとはマックスで4年$214.5Mの契約ができます。1年目は$47.6Mです。バードライトがありますが、38歳ルールがあるため5年契約はできません。

昨シーズン、ハーデンはチームの司令塔として活躍し、1試合平均20得点以上、アシストも10本以上を記録しています。ハーデンはその成績をベースにして、最低でもトバイアス・ハリスの$39.2M以上を望んでいたのではないでしょうか。そうなると$42M~マックスの$47.6Mの間くらいの金額が希望するサラリーだったのではと思います。3+1でだいたい$190M~くらいでしょうか。最低でもFAのカイリー・アーヴィンがマブスと合意した3年$126Mくらいは出さないと話にならないかもしれません。

モリーが説破つまったハーデンを追い込むような事をしたのは、交渉を有利に進めてハーデンに大金を払わないようにしたかったのか、または本当に裏交渉をしたくなかったのかはわかりませんが、ハッキリしているのはハーデンとシクサーズの間には大きな溝ができている事です。ハーデン的にはリスペクトが見られないならシクサーズではプレーしたくないのでしょう。

ハーデンのトレードはどうなるか

Wojによると、クリッパーズとニックスがハーデンのトレードに興味を持つと見込まれているようです。ただニックスはどちらかと言うと、ジョエル・エンビードの方に興味を持っていそうです。シクサーズがハーデンのトレードでいいリターンが得られずにチーム・ビルディングに失敗すれば、今度はエンビードがトレード要求をするかもしれません。その時は狙い目です。また、ハーデンとジェイレン・ブランソンのフィットも微妙です。

シャムズはクリッパーズとヒートがハーデンのトレードに興味を持つだろうと伝えています。エイミックはロス出身のハーデンはクリッパーズでプレーしたがっているとレポートしています。

エイミックによると、ハーデン側はシクサーズが望みを叶えてくれると「強い楽観的見方」をしているそうです。クリッパーズのエースのカワイ・レナードとポール・ジョージもハーデン加入には乗り気だと言われています。

ここでの問題はモリーが安くハーデンをトレードに出すかどうかです。モリーは最初の交渉は強気にふっかけるそうですが、Wojによると、ここでもクリッパーズからは若い選手たちを含む良いリターンを欲しがっているとの事。逆にクリッパーズは焦っていないので、交渉で強気に出れます。また、ハーデンは来年の夏にFAになってしまいます。クリッパーズとしても、ハーデンの1年レンタルになりかねないので、クリッパーズにとってタックスが減るなどのメリットがなければ良い指名権も選手も出さないと思われます。

モリーと仲が良いビル・シモンズによると、モリーは「2スター・セオリー」を信じていて、これまでずっとスター選手2人を揃えて来ているそうです。そのため、ハーデンのトレードのリターンはポール・ジョージを要求しているのではないかとの事。

The Athleticのジョン・ホリンジャーは、クリッパーズはノーマン・パウェル、マーカス・モリス、ボーンズ・ハイランド、1巡目指名のコービー・ブラウン、軽いプロテクション付きの2028年の1巡目指名権でハーデンとPJ・タッカーをトレードを提案していました。これならシクサーズはモリスのサラリーをストレッチすれば、ポール・リードと再契約でる上に、フルMLEも使えるようになります。実際にはマーカス・モリスとロバート・コヴィントンだけでもサラリーマッチはできてしまいますし、クリッパーズとしてはこの2人あたりでハーデンをゲットできるなら最高でしょう。

フィッシャーによると、クリッパーズはメイソン・プラムリーをキープできると考えているので、スターティング・センターのイヴィツァ・ズバッツをトレード交渉に出しているそうです。また、テレンス・マンやボーンズ・ハイランドのような若手のトレードは拒んでいるそうです。クリッパーズはPJ・タッカーにも興味があるようで、もしハーデン+タッカーのパッケージを得てタックスを減らせるようなトレードになるのであれば、指名権を付けなければいけないだろうとの事です。

もしシクサーズがクリッパーズからのパッケージに満足しない場合、他チームを引き込んで3チーム・トレードに発展する可能性もあります。

しかし、フィッシャーによると、シクサーズは必ずしもハーデンを彼の行きたいチームに動かさなくても良いと考えてもいるようです。モリーはすでにクリッパーズ以外とのトレードの可能性を積極的に模索しているとの事。フィッシャーはブルズとのトレードの可能性にも触れています。ブルズには、モリーの「2スター・セロリー」に当てはまるザック・ラヴィーンやデマー・デローザンがいます。

モリーはハーデンの要望を叶えてあげるのでしょうか?それともこのまま自分のチームづくりの原則を貫くのでしょうか?どうなるのか気になります。

もうひとつこの状況で気になるのは、モリーとハーデンのトレードへのアプローチの相性が悪い事です。ひとつ間違えばベン・シモンズ以上の大惨事になるかもしれません。

モリーはシモンズのトレード要求時にはリターンを最大化させるために忍耐強さを見せていました。そう考えると、今回もいいパッケージが得られるまでトレードデッドラインまで待つ可能性もあります。

ハーデンの過去2回のトレード要求を振り返ると、ハーデンはトレード要求をした後、チームから離れてベガスに遊びに行ったり、試合でも気を抜いたプレーをしたりして、フロントに早くトレードしろとプレッシャーをかけていました。それに比べれば、まだベン・シモンズのようにプレーを拒否して完全にチームから消えてしまう方がロッカールームにとってはいいかもしれません。

このまま行くと、モリーとハーデンが衝突してチーム・ケミストリーや成績にも影響が出てしまうかもしれません。それを避けるためにモリーは素早く問題解決できるのでしょうか?またはシーズン中にハーデンに残るように説得を試みる事もできます。最悪なのは中途半端なハーデンのプレーにエンビードがキレてしまう事です。モリーはハーデンのトレードでチームのリターンを最大化すると同時にエンビードをハッピーにしなければなりません。それは並大抵のことではありませんが、来シーズンもエンビードのプライムがかかっているので何とかしなければいけません。ひょっとしたら、カイリーと同じ契約を提示すればハーデンは何事もなかったかのように戻ってくるかもしれません。

果たして全員がハッピーになれるのでしょうか。今後のシクサーズの動きに注目です。


ハーデンの過去2回のトレード要求についてのまとめはこちらから

ハーデンのロケッツへのトレード要求について

ハーデンのネッツへのトレード要求について


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