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文藝MAGAZINE文戯11 2020 Summer 掲載の作品です。お題は「あの世」 ◆彼岸の蜉蝣(ひがんのかげろう)◆ ──池の向こう側が彼岸 ──ひがん? ──そう、「あの世」 深く暗い森のような庭の隅にその池はあった。花の時期を外れた蓮池は、水面とそこから突き出す葉ばかりでひっそりとしている。彼女が指さした「彼岸」側の木々の隙間から見える空は、ほんの僅かの間に夕焼けの色を広げている。茜色に染まった世界は引き込まれるように美しかった。 ** 「おさだかなこです