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特定行政書士という資格をどう活用するか

我々行政書士には、資格内資格として「特定行政書士」という制度がある。平成26年に施行された行政書士法改正により出来た制度であるが、おいらはその”第1号”特定行政書士でもある。何のことはない、制度が出来た最初の年に、特定行政書士を「付与」されるための研修を受け、試験を受けただけなのだが。

で、この特定行政書士という制度、何なのかというと、行政書士は他人からの依頼の受け、官公署に提出する書類を作成し、申請・届出を行うことが仕事なわけだが、この作成・申請・届出に加え、申請等が「不許可」になった際の「不服申立て手続き」が行えるようになるのが「特定行政書士」なのだ。

意義はある。つまり行政書士はこれまで、書類を作成し申請等を行うまでが業務であったわけだが、そこに「不許可」という、私人と官公署との間におきた「紛争」について、「代理人」として携わることが出来るようになったわけで、この「紛争」の分野に一歩、行政書士が足を踏み入れることが出来たことは、今後の業務を広げていくための一歩と考えることもできるわけだ。

しかし問題もある。そもそも我々が申請等の書類を作成する際「不許可」となる前提で書類を作ることは無い。そもそもそのような処分をくらってしまうことが、行政書士の落ち度である場合もある。

そうなるとせっかく法改正を経て、得た資格である「特定行政書士」という資格を、活用する場がないのである。

あくまで個人的な意見であるが、これは決してよろしいことではない。

つまり「法改正」というのは「必要であるから」行われるわけで、行政書士法の構造上、我々が議員の先生方に「お願い」をして「改正してもらった」ものが、実は必要のない使えないものでしたというようなことはあってはならないことなのだ。

そこで様々なところで、その活用について検討が行われているわけで、神奈川県行政書士会でも「特定行政書士検討ワーキンググループ」が設けられている。で、おいらはその「副座長」を2年間努めさせて頂いた。

実は前々期、つまり6年前~4年前にかけて、神奈川県行政書士会には「特定行政書士特別委員会」という委員会が設置されており、その委員会においても委員を努めさせて頂いていた。その際に行ったのは、まずは事例研究。神奈川県そして横浜市等、地元自治体ではどのような不服申立が行われているのか、そしてその不服申立から行政書士が業務とし得る事例があるか研究を行った。その研究を通じて、ひとつ示された方向性は、「不服申立ての代理」という業務が本筋ではあるが、その周辺業務を行うことに、活路を見いだせないかということであった。

そしてその続きの2年間においては、ちょっとグレて、委員をお断りしたのだが、今期2年間は再び、特定行政書士検討ワーキンググループの委員を、副座長として努めさせて頂いた。

この2年間においては、6年前~4年前にかけての「特定行政書士特別委員会」での議論をベースに、まずは、様々な方からご意見を伺うこととした。

そのひとつとして、神奈川行政書士政治連盟の顧問を務めて頂いている、神奈川県議会議員・長田進治先生からご意見を伺った。これはある種、行政への「不服申立て」である「陳情・請願」を議員の方が担っていることから、お話を伺い特定行政書士活用の路を見いだせないかと考えたからだ。コロナ禍でお忙しいなか、わざわざ神奈川県行政書士会の事務局まで長田先生にお越し頂き、お話を伺い、長田先生からのご意見、ご提言は大変参考になった。

もう一つが、佐賀県行政書士会副会長の徳永浩先生に、わざわざ横浜までお越し頂き、講演をお願いした。徳永先生とは、日本行政書士会連合会での著作権関係の会議でご一緒させて頂いている。佐賀県をはじめ各自治体等で、多くの委員等をつとめ、行政書士法をはじめとする法制度に大変お詳しい先生だ。その講演を通じて、「不服申立て」だけではなく特定行政書士の資格を活かせるのではないかと、これも大変参考になるご提言を頂いた。

様々な方からお話を伺った上で、今期の「特定行政書士検討ワーキンググループ」では、「不服申立て」という紛争分野に活路を見出す研究から、少し視点をかえて、研究を行うこととした。

その理由のひとつは神奈川県下では、行政書士が不服申立ての代理人を務めた事例があまりに少ないこと。(おいらも制度開始以来、代理人に名を連ねたことが1件あるのみである)全国組織である日本行政書士会連合会が、全国からの事例収集を行い、検討を重ねていることもあり、決して多くない予算、人的リソースを、有効活用する上でも、別の視点からの検討を行うことが、有効であろうという結論になった。

そこで行ったことが、行政不服審査法、行政手続法をあらためて解釈し、許認可申請を行う上で、神奈川会の会員が、一段とクオリティーの高い許認可申請を行えるよう「戦略的許認可申請ハンドブック」と題した冊子を作成した。

そもそも不服申立てを行う上で根拠となる「行政不服審査法」はその目的の一つとして「行政の適正な運営を確保すること」を掲げている。そして行政手続法は「行政運営における公正の確保と透明性の向上」を目的の一つとして掲げている。

その上で行政不服審査法は「国民の権利利益の救済を図る」ことが目的であり、行政手続法は「国民の権利利益の保護に資すること」を目的としている。

そして我々行政書士は、行政書士法により「国民の権利利益の実現に資すること」を目的としているのだ。

実際の許認可申請等の実務においては、役所等より公表されている手引きや、各種書籍等に掲載されているマニュアル的なものを参考に、業務を進めてしまうことが多い。しかし建設業許可においても、医療法人設立に関しても、産廃処理・収集運搬に関する許認可においても、いずれもその手続きが行政手続法の規定が、その制度の根幹をなしており、行政不服審査法が、その制度上に瑕疵がおきた場合の担保となっているわけだ。

このことを行政書士がしっかりと認識、理解し、業務を行うことにより、顧客の皆様より依頼を受け、行政と対峙し業務を進めることが、より一層高いレベルでのサービス提供を行うことが出来るようになるのではないだろうか。

と、いうわけで今期、神奈川県行政書士会・特定行政書士検討ワーキンググループでは、『戦略的許認可申請』というハンドブックを、小出秀人座長・副会長の下、作成しました。正直に言うと、今期のワーキンググループのメンバーは座長含め6人であり、そのような小人数でこのような研究を行うよりかは、もっと知見をもった多くの人に関わってもらい作成したかったと、思うところではなります。

しかしこのような研究の積み重ねが「特定行政書士」という制度の発展の一助にはなるかなと考えております。

とりあえず2年間の活動が終わるので、備忘録的に記してみました。

那住行政書士事務所・雑記帳
https://www.nazumi-office.com/post/【雑記帳】令和5年4月の徒然-桜の季節-今宵逢う人-みなうつくしき

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