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お空の上の物語 第2部「COSMOS」#1

ひまわり銀河にある星 

地球から2670万光年離れた宇宙の果てにひまわり銀河があります。大きく渦を巻く腕の模様や黄色み掛かった非常に明るい中心がひまわりの花に似ているのでそう呼ばれています。そのひまわり銀河には太陽の何万倍も明るく光り輝くグレートセントラルサンがありました。そのグレートセントラルサンを地球のように1年かけて公転している惑星がありました。その惑星の名前は「COSMOS」見た目は地球にそっくりです。違いと言えば少し地球よりも紫に光り輝いて見えるところでしょうか。このCOSMOSに、ピットとピッチは生まれました。そんなピットとピッチが何故地球へ旅をすることになったのか。さーお話のはじまりです。

COSMOSに住む人々

今日もグレートセントラルサンは、優しく温かく生きるもの全てを愛で包んでくれます。グレートセントラルサンのまばゆいほどの美しい光は愛の光でした。その愛の光を浴びれば、どんなに悲しくても、イライラしていてもすぐ笑顔にしてしまう力を持っています。

グレートセントラルサンのそばには、地球にとてもよく似たきれいな星がありました。名前はCOSMOS(コスモス)です。

グレートセントラルサンの愛の光が降り注ぐCOSMOSに住む人々は、ひまわのように明るく、元気で陽気な人々です。争いなどは無縁で、星に住む人々はみな仲の良い家族のように平和に過ごしていました。
COSMOSの人は、人間のような体がなく透明です。でも、鏡のように光を反射することができるので、グレートセントラルサンの愛の光を浴びると、いろいろな色で光り輝きます。地球の人間がちょうど自分のオーラに体全体を包まれているように見えるのです。夜になると、光はなくなるので、透明な体は闇に溶け黒くなります。

COSMOSは夜の光は星だけです。わずかな星の光だけでは、誰がどこにいるのかわからないので、初めて訪れる宇宙人ならば、きっと誰も住んでいない星だと勘違いをするでしょう。COSMOSの人たちは、地球の人間のように電気を使いません。技術が遅れているわけでもありません。むしろ、宇宙技術はトップクラスです。

人々は、夜の美しさを知っているのです。空に輝く星を一番きれいに見ることができるのは暗闇です。その美しさを電気で台無しにしたくはなかったのです。自然を愛し、感じることが大好きなのがCOSMOSの人々なのです。

夜になると、人々は透明カプセルを用意して空を見上げながら寝ころびます。宇宙にある数えきれない星々の様子を想像しながら、家族と語り合う静かな時間を誰もが楽しみにしているのです。昼間とは対照的に夜は優しく穏やかになるのもCOSMOSの人々の特徴です。

COSMOSの人たちは、特殊な能力がありました。それは、頭でイメージするもの全て目の前に物質化する力です。例えば、お腹がすいたら食べたい物を頭にイメージすれば食べることができます。欲しいものがあれば、同じようにイメージすればよいだけなのです。なので、物欲というものがCOSMOSの人々にはありませんでした。


グレートセントラルサンの光がCOSMOSの大地を照らし始めると、COSMOSの人々はいつもと同じように昇る朝日に感謝し、宇宙の全ての平和を祈ります。そして誰もが楽しくハッピーな1日が始まることに喜ぶのです。

COSMOSの人々は、自分の好きなこと楽しいことだけをするのが決まりです。やりたくないことはやらなくていいし、やりません。

野菜を作るのが好きならば野菜を作り、絵を描くことが好きならば絵を描く。おもちゃを作るのがすきならばおもちゃを作ればいいのです。できた物は、欲しい人へ分け与えます。もちろん、欲しい物があればもらうこともできます。

そうやって楽しいことをしていると、星の人々が必要なものはたいてい賄うことができます。わざわざイメージをしなくても欲しい人にバランスよく分け与えることができるのです。もちろん、足りない時はイメージをすればいいので、人々の心はいつも満たされていました。

人々が愛情をこめて作ったものは、その人の愛のエネルギーがたくさん入っているので、もらった人は愛のエネルギーで満たされます。そして、あふれた愛を別の人へ分け与えたくなります。愛があふれ循環するとても平和な星。それがCOSMOSなのです。

COSMOSの王子様

COSMOSには人一倍黄金に光り輝く王子様がいます。名前はピット。

ピットの家族は、王様と王妃様とピットの双子の弟の4人家族です。
ピットの双子の弟のピッチは、数年前、グレートセントラルサンの調査のために宇宙船ででかけたまま連絡がとだえ、まだ戻ってきてはいません。

ピットはピッチの捜索をしながら、COSMOSがいつまでも平和でいられるように、宇宙の星を観察したり調べたりしています。それが王族の仕事です。

ピットとピッチは小さい時から、宇宙に詳しい王様に壮大な宇宙について学んできました。今では、COSMOSの中ではピットとピッチより宇宙について詳しい人は誰もいません。二人で王様を助け、COSMOSを守っていくはずだったのですが……。

「ピッチは絶対無事だよ。だって、だれよりも宇宙について詳しいからね。最新の宇宙技術でつくった宇宙船ででかけたんだ。きっと、新しい発見をして何かを調べているんだよ。ピッチらしいよ。だから安心して帰りを待とう。」

そう、ピットは心配をしている王様や王妃様を毎日励ましました。そんなある日のことでした。
「ピット様、ピット様!!」
宇宙担当大臣のシュバルツが慌てて書斎に入ってきました。
「何事だシュバルツ。珍しいなそんなに慌てるなんて。新しい星でも見つけたのかい?」
ピットは、慌てふためいているシュバルツとは対照的に落ちついて返事をしました。

シュバルツは、COSMOSの普通の人と光の色や光り方がちょっと違います。
普通は虹の七色のどれかの色の光なのですが、シュバルツはグレートセントラルサンの光を反射しているのではなく、白く青く優しい光が内面から光っているのです。これは、シュバルツが聡明な優しい人であることを意味します。

COSMOSの人は、心にかげりがひとつもなくなると、グレートセントラルサンの光を反射しなくなります。その代わりに内面の光を輝かせ、暗闇でもその光が消えず輝くようになります。その輝きが周りを照らすようになった時、このCOSMOSで学ぶことはもう何もなく、神さまステージへレベルアップします。ですので、シュバルツはもうすぐレベルアップする、魂レベルが高い人なのです。そんなシュバルツが、慌てて書斎に入ってきたのですから、ただごとではないのは確かです。

「先程、エメラルド星から調査隊が戻ってまいりました。それが、大変なのです。」

「エメラルド星は何回も調査に行っている場所だよね。そんな慌てるような情報は今さらないんじゃない?」

ピットは優しく、シュバルツを落ち着かせるように言いました。

「はい、ピット様のおっしゃる通りなのですが。とりあえず、調査隊の話をお聞きになった方がよろしいかと‥。」

「わかったよ、シュバルツが慌てるくらいだからね、急ごう。」

そう言うと、ピットは
「たいしたことじゃないといいんだけど。それとも、ピッチの手がかりが見つかったのかな?そしたら、シュバルツが慌ててもしょうがないな……。」
心の中でそう思いながらシュバルツと宇宙船ターミナルへ急ぎました。

調査隊の帰還

ピットはシュバルツと宇宙船ターミナルへ急いで向かいました。宇宙船ターミナルでは、9年間の任務を終え、エメラルド銀河から戻ってきたスペースシップがちょうどデッキに収納されている所でした。

COSMOSでの1年は地球の1週間になります。ですので、9年間は3か月ほどです。

ピットがスペースシップに近づくと、ちょうどスペースシップから青い大きな光を放つ隊長らしき人を先頭に隊員たちが降りてきました。彼らは真っすぐ、ピットとシュバルツの方へ向かって歩いてきます。

「ピット様ただいま前戻って参りました。シュバルツ大臣行ってまいりました。」

「お帰りなさい。ロドリゴ隊長、9年もの間ありがとう。本当はゆっくりしてほしいんだけど、僕が呼ばれたのは何か大切な報告があるんだよね?」

「はい。ピット様に見てもらいたいものがございます。シュバルツ大臣、早速報告をしたいので会議室をお借りしてもよろしいですか?」

「大丈夫だロドリゴ。スペースシップからのデータ処理を済ませ、すでに会議室に用意してある。疲れているとは思うがよろしく頼むよ。」

ロドリゴは頷くと、くるりと背を向けロドリゴの支持を待っていた隊員たちに話しかけました。

「みんなご苦労様。君たちは帰りを待つ家族のもとへ帰ってゆっくりしてくれたまえ。もし何かあった時は連絡をするから。ビオレッタ。申し訳ないが君は一緒にきてもらえるかな。」

「もちろんです。」

ローズピンクに包まれた淡い優しい光に包まれているビオレッタが答えました。ビオレッタは今回の調査隊の副隊長であり、情報処理担当の女性のCOSMOS人です。

「ありがとう、それでは参りましょうピット様。」

ロドリゴがピットに声をかけると、ピットは隊員たちに歩みよりました。そして、ひとりひとりに、無事に帰って来てくれたことや長い間任務を成し遂げてくれたことへの感謝のハグをしました。ピットのハグは、グレートセントラルサンの愛の光と同じ効果があります。隊員たちの疲れは癒され、みるみる元気になっていきました。

「ありがとうございます。ピット様。私たちの調査結果がピット様に幸運をもたらしますように。」

そう言って、隊員たちはその場をさりました。
4人は会議室へむかいました。9年間の間、ピッチの無事を祈り、絶対大丈夫だと自分を信じてきました。ピットは、はやる気持ちを抑えながら長い廊下を歩きました。

会議室につき、ピットが椅子に座ると同時に、ロドリゴがモニター画面のスイッチを入れ説明をし始めました。ピットの気持ちが痛いほどわかったからです。

グレートセントラルサンの光の変化

「今回私たちは、ピッチ様の消息がとだえた後すぐ、エメラルド銀河へ旅立ちました。

ピッチ様が乗られておられたスペースシップは、この9年間レーダーに一度も現れることはありませんでした。

ピッチ様の捜索と同時に、グレートセントラルサンの観察もしていたのですが、ピット様にお伝えしなければならない情報はこのグレートセントラルサンに関してのものでございます。」

そうロドリゴが言うと、ビオレッタが説明をしはじめました。

「エメラルド銀河はいつものように見た目では何も変わった様子はありませんでした。しかし、この数年間のデータであることに気づきました。それを解析したところ、9年前、グレートセントラルサンの光が不安定になり、急激に弱まった時期があったことがわかったのです。ちょうど、ピッチ様が消息を絶たれた時と重なります。その後、光の強さは元に戻ったのですが、去年からまた光の強さがどんどん弱くなっていることがわかりました。このままでは、500年後には、COSMOSに愛の光は届かなくなります。」

「COSMOSにグレートセントラルサンの光が届かなくなるということは、闇の星になる可能性があるということだよね。」

ピットが尋ねました。

「はい。しかし、前回はグレートセントラルサンの光の強さはもとに戻りました。今回もその可能性はないとは言えません。」

ビオレッタは慎重に言葉を選びながら言いました。

「きっと、何か変化が起こったのではないでしょうか。普段では考えられないようなことが……。」

ピットは、ビオレッタが何かを確信しているのがわりました。だから、疲れているにもかかわらず、自分に報告をしているのだと思いました。

「ロドリゴ。君たちは何が起きたのかがだいだいわかったから、僕に報告をしているんじゃないの?」

的を得たピットの質問に、ロドリゴは安心しました。これから話すことはあくまでも仮説でしかないからです。でも、ロドリゴとビオレッタには確信がありました。きっと報告すれば、ピット様も同じようにお考えになるはず。そう思ったからです。

「はい。その通りでございます。先日、このようなものが突如、エメラルド銀河に現れました。これを見て私たちの仮説は正しいのではないか。そう思ったので、急いで帰還しピット様に報告をしているのです。」

そう言うとロドリゴはモニター画面のスイッチを押しました。

宇宙の伝説ゴールデンフォール

モニターには、美しいエメラルド銀河が映りました。しかし、いつものように楕円の形ではありません。砂時計のような形になろうとしているエメラルド銀河がありました。

「これは、もしかしたら伝説のゴールデンフォールなのか……。」

ピットはやっとのことで言葉を絞り出しました。

「はい。エメラルド銀河の中央に、ゴールデンフォールがあったのです!エメラルド銀河の本当の形は砂時計銀河だったのです。今までは、グレートセントラルサンの光に包まれゴールデンフォールを中心に楕円銀河に見えていたのでしょう。グレートセントラルサンの光が弱まったため、本当の姿を現したのだと思います。」

ピットは初めて見る、ゴールデンフォールに目を奪われました。この広い宇宙で見ることができるのは奇跡といわれる伝説のゴールデンフォール。この輝きの先には、宇宙ではけして経験ができない、とてつもない楽しみが体験できる楽園の星がある。と言われているのです。

「もしかして……。ピッチはこのゴールデンフォールの先へ行ったのでは……。」

「はい。ピット様の考えは正しいと思います。私もそう思いました。ちょうど9年前グレートセントラルサンの光が弱まった時に、ゴールデンフォールが今のように現れたのではないでしょうか。ピッチ様は光の先にある楽園の星を調査しようとしたのではないでしょうか?そう考えると全てつじつまが合います。」

ロドリゴが静かに言いました。

「普段では考えられないようなこと…。それは、ピッチ様がゴールデンフォールに飛び込んだことと私たちは考えたのです。」

ビオレッタの言葉を聞き、ピットはいろいろなことを考えました。

ゴールデンフォールに行けば、ピッチに会えるかもしれない。そしてグレートセントラルサンの光がもとに戻り、COSMOSが闇の星になることを防ぐことができるかもしれない。でも、伝説のゴールデンフォール。戻って来られるという保証もない。王子が2人もいなくなったあと、このCOSMOSはどうなるのだろうか……。いや、こうしている間にもしかしたら、ゴールデンフォールはまた消えてしまうかもしれない。そしたら、今見えている希望はまたゼロになる……。

しばらく黙って考えこんでいたピットを3人は黙って見守っていました。

天空の間へ

「シュバルツ。今までゴールデンフォールに、COSMOS人は誰も行ったことがないのだろうか」

やっとピットがシュバルツに尋ねました。

「いえ、確かピット様のひいおじいさまは行かれたことがあるようです。しかし、そのまま戻って来られなかった。と、歴史書には書かれています。」

「ひいおじいさまか。父上なら何か知っているかもしれないな。ロドリゴ・ビオレッタ疲れているのに報告ありがとう。あとは、僕がいろいろ調べてみる。また、君たちの力を借りるときには連絡をするから。今日は、もう家へ帰ってゆっくりして。」

「ありがとうございます。ピット様。そうさせていただきます。何かございましたらなんなりとお申し付けください。ビオレッタありがとう。では行こう。」

そう言って二人は会議室から出て行こうとしました。

「ちょっと待って。」

ピピは二人を呼びとめハグをしました。

「こんな素晴らしい報告が聞けるなんて夢のようだよ。本当にありがとう。」

そう言って、抱きしめました。

「シュバルツ。一度にいろいろなことがわかったね。良い知らせなのか、悪い知らせなのか。ぼくの頭の中はごちゃごちゃさ。でも、ワクワクはしている。希望が見える。だからとっても良い知らせなんだと思うよ。」

あれほど、慌てていたシュバルツは、いつものように落ち着いています。ピットの言葉を聞き安心したようでした。

「王様は、天空の間から夜空を観察している時間でございます。」

「ありがとう、シュバルツ。父上と話をしてくるね。」

そう言ってピピは天空の間へ急ぎました。


ピッチに会えるかもしれない。それも、楽園の星で。何があるかわからないこれからの冒険を考えるだけでピットの心は不安という言葉がなくなるほどワクワクしています。

天空の間に続く螺旋階段をのぼりながらピットは考えていました。

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