唯一のお酒の失敗【ゲロの話】

私は全くお酒の場の失敗をしたことがない。

そもそも私はメチャメチャお酒に弱いので、外でお酒を飲むことは無い。

また、初めてお酒を飲んだ時に大失敗を犯したため、以来お酒の節度というものをわきまえているのである。


それは20歳になった誕生日のこと。

地元の友達と2人で居酒屋に行き、飲酒の解禁を祝ったのだ。

気の置けない友と初めて飲む酒は、美味しさは分からずとも、とにかく楽しかった。

加えて、大学の期末テストを終えた直後であり、徹夜の勉強から解き放たれ、開放感に舞い上がっていた。

ビール、ワイン、梅酒のお湯割り、ジントニック、、、
初めて外で飲む酒だから、色々な種類を飲んでみたくなるもの。

アルコールのメニューを見て、
このお酒飲んでみたいね、どんな味なのかな?
などと友達とはしゃぎ、自然とチャンポンにチャンポンを重ねてしまった。
お酒の経験の無さ故の所業である。愚か也。

居酒屋のご飯もやたら美味しい。
アジフライやら漬物やだし巻き卵、全部美味しくて味が濃くて酒が進む。

そうしていつのまにか私は、お酒を5杯も飲んでいた。
これは大変な量である。

この時、私は自分の限界値というものを知らなかった。
お酒の経験の無さ故である。

今は自分の限界値を知っているが、
ビールをコップ1杯飲むこともできない。
「ほろよい」も1缶飲みきれない。

つまり私は、自分の許容量の10倍の酒を飲んでしまったのだ。しかもチャンポンして。
完全に飲みすぎてしまい、居酒屋のテーブルに突っ伏した。

そしてついに、
お会計の時、店員さんと友達がやり取りをしてる横で私はテーブルに場ゲロした。

『場ゲロ』とは、トイレに間に合わずその場で吐くゲロのこと。
現場ゲロ。
お店に大迷惑の行為、楽しい飲みも場ゲロで台無し。場ゲロだめ絶対。

なんてこった。お店でなんてことを…!
顔面蒼白で店員さんに謝り倒し、自分でできる限りの処理をした。

ゲロをティッシュでかき集め持っていたビニール袋に入れ、トイレで流した。

店員さんは
「お酒、慣れてないと飲みすぎちゃいますよね。
俺も先週飲みすぎて吐いちゃったんですよ。」
とフォローしてくれた。

飲みに慣れてないとはいえ、場ゲロの迷惑度は察するにあまりあったため、店員さんの優しさがよりいっそう申し訳なかった。


次の日になっても胃はムカムカするしなんか口がゲロ臭い。

自分に酒は向いてない。
酒を飲むのはやめようと決心した。

しかし、2日過ぎ、3日過ぎ、1週間過ぎても自分がゲロ臭い。

もちろん毎日歯磨きしてるし風呂も入っている。

流石に何かがおかしいと思った。
酒の後のゲロ臭さって、こんなに続くものか?

ゲロ臭をなんとかすべく、どこからゲロ臭がするのかを突き止めようと身体中を嗅いだ。

どうやら手が臭い。
しかし手を洗ってもしばらくすると臭うようになる。

次にスマホが臭い事に気づいた。
アルコール除菌シートでくまなく拭く。
しかしまだ臭い。

なぜだ!?なんでまだ臭いんだ!?

スマホをよくみて気づいた。

『スマホケース』…??

白いレザーのスマホケースを外す。

すると、なんという事だろう。

スマホとスマホケースの間に
薄〜くゲロが挟まっていた。

こんなところに…なぜゲロが…!?
突如現れた1週間ぶりのゲロに困惑し、脳がフル回転した。

そう、場ゲロしたときにテーブルの上に置いておいたスマホにゲロが届き、スマホとケースの隙間に入り込んでいたのである。

こんなこと…ある…!!??

全てを理解した私は全身の力が抜け、自室で膝から崩れ落ちた。
そして思った。

もうお酒は飲まない。
いや、飲んではいけない。
改めてそう誓った。

スマホケースは捨てた。


30歳になった今も、誓いは守られている。

お酒を飲みたくなる時はあるが、スマホに挟まったゲロを思い出すと自然と飲む気が失せるのだ。

禁酒したい皆さまにおかれましては、一度ゲロをスマホに挟んでみてはいかがでしょうか?

自然と飲む気が失せます。

以上、禁酒ライフハックでした。

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