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パンドラの箱を開けろ<結>

「人生はチョコレートの箱みたいなもの。開けてみるまで中身は分からない」(フォレスト・ガンプ/一期一会より)


「意見箱」の設置から約3週間が経った。

本日は箱を開封する予定日だ。

「必ず1人1枚以上は入れるように」と説明していたので、意見箱はずっしりと重量感を出していた。


男は少し緊張していた。

この気持ちはなんだろう。

期待と不安が入り混じる。


男は唾を飲み込みながら「カッター」で開け口を開き「意見箱」を開封した。


中身をみると大量の意見が書かれた紙が入っていた。

男はその数十枚の紙を1枚1枚読んでいった。


・・・・・・・。

男はとてつもない「ショック」を受けた。

そこに書かれていたのは、8割が「会社への不平不満」「誹謗中傷」「名指しクレーム」。

残りの2割が「改善案」としての真っ当な意見が書かれていた。

直筆で書く者もいれば、PCで作った者をいる。

面白いことに「直筆」が真っ当な意見。

「PC」で印刷してあるものが会社への不平不満だった。



「匿名」という条件が人をこのようにさせる。

人の群れに紛れ「石」を投げろ。

このような考えを持った人達と、男は一緒に働いている。

男は改めて「ショック」を受けた。


この内容を仮に「会長」が知ったら、おそらく「病院送り」になるだろう。

男が「忖度無し」でまとめた「問題点」よりも10倍刺激が強かった。



それから数時間後


男は「新社長室」へ行き、意見箱の中身の報告をした。

包み隠さず「意見書」を見てもらった。

新社長は「苦虫を噛み潰したかのような顔」になりながら、1枚1枚の紙を2カテゴリー別に分ける作業をおこなっていた。

新社長
「こっちは報告会で発表して、こっちは止めましょう」

机に分けられた紙をみると「約30枚(件)はNG」「約5枚はOK」という比率になっていた。

あくまでも「会長」の耳に入れさせないようにと、新社長は平然と「隠ぺい」を指示する。


「社長、これでは作業者の人数に対して意見が少なすぎます」

「コンサルの先生に追究されてしまいます」

新社長は黙り込んでしまった。

新社長はこの「QC活動」を自己啓発として社員に行わせたのを後悔している様子だった。

新社長
「では、私がコンサルの先生に男さんのQC活動をやめさせ別の課題をするように言います」

「大丈夫なのですか?」
新社長
「どうにかします」


その数日後、男は別の安易な課題をやることになった。

新社長がコンサルの先生にどのように説明したのかは不明である。

イチ社員の前で平然と「隠ぺい」の指示を出す「新社長」

この人が舵を取る船は次第に「泥船」に変わるだろうと男は感じていた。



その後の男以外の社員の「QC活動」はどうなったのかを説明しよう。

男以外の社員は「会社に忖度し」非常にソフトな問題点を上手くまとめていた。

男とコンサル先生/新社長とのやり取りを横目に「自分の襟を正していた」のだった。

そして各ステップをクリアして「QC活動」を終了させて、年末の忘年会にて「会社」から正式に評価を受けた。


男と他の社員との違いはシンプルにこうだ。


例えば「現場」に危険な物はないのか「お題」を出されたとしよう。

男はいつ爆発死するか分からない「不発弾」を見つけたが、評価されなかった。(隠ぺい指示を受けた)

だが他の社員は触れたら怪我する「ナイフ」を見つけ評価された。

よく見つけたな!と会社から感謝されたのだ。


男のいつ爆発死するか分からない「不発弾」にはフタをし、公にできる物を評価する。

男の評価は下がり、他の社員の評価は上がった。

まったく「不毛」すぎる。


結局のところ、真実は「陰」でささやかれ、嘘が「公」に大声で話される社会がそこにあった。


そしてその後の「意見箱」の内容に対しての「会社の対応」は、真っ当な意見に対しては対応し、その他の各クレームに対しては完全「無視」を貫いた。

この対応が良いのか悪いのか、男は「経営者」では無いので深く考えるのを止めていた。

ただ言えることは「意見箱」の設置以降、現場の雰囲気が確実に悪くなった。

箱に意見書を入れた「名も無い者たち」は自分の意見を無視されていると苛立ち、その感情が仕事振りに表れてしまっている。

方や新社長/管理者達は意見書の内容を知り、その後現場作業者を「色眼鏡」で見ている。

会社として良いことをしようと試みたが、結果悪化してしまった。

問題を解決する活動なのに、新たな問題を産んでしまったのだった。

それが「モノやシステムや金」ではなく「人」なのだから厄介なのだ。

何故なら人には「感情」があるからだ。


これは「問題」ではないでしょうかね?


男はけして開けてはいけない「箱」

「パンドラの箱」を開けてしまったのだった。

<パンドラの箱を開けろ~ 起・承・転・結~終わり>

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