アトランティス幻視 崩壊前夜24

銀の船は静かに停止する

唖然とする隼の目の前で
するすると桟橋が延び
沢山の人影が
ゆらゆらと海岸に降りてくる

人々は半ば眠ったような様子で
ゆっくりと桟橋を降りて
少し離れた森に向かい
ひたひたと歩いていく

隼ははじめ呆然とその様を眺めていたが
降りる人波に見知った神官の姿をみて
思わず駆け寄った

雲雀

風の主上は
星読みさまはどちらにあられる!

しかし彼らの瞳に反応はなく
隼の声も届かぬ様子で
ゆらゆらと歩き去っていった

思わず肩を落とす隼の耳に
突然なにかが割れるような衝撃音が届き
世界が光を失いはじめた

隼は空を降り仰ぐ
空の真ん中で
見る間に太陽が消えてゆく

隼の体が硬直する

そして消えた太陽の近くに
青いきらめきが高く飛び去った

その瞬間
バリバリという音と共に
隼のいる砂浜近くの海に
青い破片がばらばらと散りはじめ
白く凍った大きな樹が
突如その姿を表しはじめた

センターツリー!


やはりこんなにも近くに
アトランティスの浮き島は存在していたのだ

あの青いドームは
居住空間の環境調節だけではなく
外からの探索を困難にして
街を守る役割も持っていたのだ

隼の目の前で
センターツリーは中心から二つに裂け
すさまじい轟音と共に海に沈んでゆく

ああ
アトランティスが沈んでいく

その巨大な質量により
海は大きく揺れ
激しい流れは陸を襲う

突然の大波が襲いかかり
隼は鳥に変化し寸前でかわす

すさまじい景色
まるでこの世の終わりのようだ

このままでは新しい大陸も危ない
隼は焦りはじめた

森に向かってくれてよかった
あんなに沢山の街人たちが
海岸にいてはひとたまりもなかった

しかしこのまま海が荒れつづければ
もはや逃げ場はない

隼は高く飛ぼうとするが
巻き起こった激しい風に阻まれ
波を避けるのも難しい

いったいどうすればいいのか

ひときわ強い風に煽られ
隼は天地をなくしかけ
激しい波間に叩きつけられそうになる

その刹那
暗く陰った空の上方より
一筋の光が
今まさに沈んだ街めがけ
真っ直ぐに突き刺さった

アトランティスの存在した印でもあるかのように
海底から空の果てまで貫くような
光の柱が立ち上がった

一瞬遅れて
どおんと地鳴りが響き
じんじんとした振動が伝わると
海も風も
そのすべてが
突如静かに凪いでいった

隼は凪いだ風に掬われて
ふわりと砂浜に舞い降りた

破壊を定められ
ゆえに産み出す星の民よ

光の柱から声が響いた

汝らは
個にして全
全にして個

天に在るように地にも在れ

調和とは終息なり

この星の混沌と破壊は希望なり

生きよ

この地に有るものを
天に遷すなり

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