アトランティス幻視
その街は
半球状の青いドームにおおわれていた。
中央には樹齢にして数千年にはなろうかという
巨大な常緑樹が
ドームの天井沿いに大きく枝を広げている。
大木の根本に設えられた祭壇の前で
軽やかな羽衣を身に纏った巫女たちが
優雅な舞を捧げている。
そびえ立つ常緑樹の根本から
ドームの外に向かって
透明な水を称えた水路が放射状に延びている。
たっぷりと湛えられ
きらきらと光る水のなか
楽しそうに泳ぐ数頭のイルカの背が
水面に浮き沈みつつ
柔らかな日差しにつるりときらめいている。
その街に棲む人々は
常に満ち足りていた。
高い科学技術に基づく安定した気候。
遺伝子操作による
不老、不病、飲食不要の身体。
争いも、ほとんどない。
平和で安定した、楽園のような。
怠惰で堕落した、変化のない。
永遠を約束された場所、
アトランティス。
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