アトランティス幻視 崩壊前夜7 花依の到着

花依が風の神殿に到着すると
既に全ての神殿の主が揃い
花依の到着を待っていた

花束を抱いたままの花依に
天狼星は笑いかける

突然呼んですまない
花を摘みに出ていたのだね
せっかくの美しい花だ
私が預かろう

花依は小さく頷いて視線を伏せる
花を抱え直すと天狼星の立つ祭壇へ
静かに歩み寄る

花依が花を差し出すと
天狼星はふわりと笑う

これは美しいな
さすが花の主の摘む花よ

白い頬が優しく緩む
羽織る白のローブに色とりどりの花が映え
天狼星の澄んだ青い瞳を明るく照らしている

星読みさまは本当に美しい
花依はうっとりとその様子に見惚れる
いつも穏やかで優しく
光輝くようだ

薄く青みがかった銀の髪
瞳は軽く透明な青
透けるような白い頬に
いつも優しい淡い唇

そしてその額には
雫型の青い石が輝いている

その昔この街の始まりに
朱斗より星の主を命じられた際
神の手によりその額に収められ
今もなお変わることなく輝き続けるその石は
コアクリスタルの欠片であり
永遠のエネルギーを天狼星に与え
一度たりとも器替えの必要を
生じさせることはなかった

花依が手渡した花をいとおしげに抱えながら
天狼星は語り始める

皆を集めたのは他でもない
そなたらに頼みがある

話始めた途端光を強める青い瞳
強い眼差しに主らは表情を引き締める

コアクリスタルが回収されることになった
この島が落ちぬうちに
街を移さなければならない

その言葉は誰のも予想を超えていた

静まり返る風の神殿に
庭で祭の準備をする神官たちの
明るい声が響いていた

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