アトランティス幻視2

もうすぐ正午の祈りがはじまる。
太陽が最も高く昇るこの時間。

センターツリーの程近く
きらきらと光る粒子が弾け
刹那
音もなく姿を表したのは

顔は鬣をゆらす黄金の獅子
豪奢な金の鎧を身に付けた
屈強な一人の男

彼は静かにセンターツリーを見つめた。
正確には、センターツリーの奥深くに
隠されたコアクリスタル。
青く光る宝石を。

アトランティスをアトランティスたらしめる
高度に凝縮されたエネルギー体であり
全ての生命を生み出し
増幅させ、安定させ
癒し、慰める。
アトランティスの、宝。

忘れ去られ、捨て置かれた宝。

祈りの時間を前に、集まり始めた巫女たちが
祭壇へ向けて歩いていく。

ふわりとたなびく羽衣
笑いさざめきながら
軽やかな足取りで進む少女たち

生まれてから
一度も争いを知らず
病を知らず
明日も命が続いていくことを疑ったこともない。

永遠に続く今が、ここにある。

たたずむライオンに気がつくと
少女たちは一様に軽い驚きを示し
ヒソヒソ囁き合うものもあれば
会釈をおいていくもの

むしろ何かのアトラクションと思ったのか
嬉しそうに笑いかけてくる者もあった。

ライオンは、空を見上げた。
晴れ渡る青い空を映す青いドーム。
広がる枝に憩う小鳥たち。
水路で楽しげにはしゃぐイルカたち。

正午の祈りが始まった。
高く澄んだ祈りの歌。柔らかな衣擦れの音。
恍惚の表情で舞い踊る少女たちは
喜びに満ちて、輝くばかりに美しい。

この都は、こんなにも美しい。
ライオンは独りごちた。
オリハルコン。
汝は何を望むのか。

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