幻夢京鬼譚 百鬼夜行

陸の辻に鬼が出る
終いの見えないほど長い
鬼の行列が

月の無い夜に
衛士がひとり拐われた
残るひとりは狂ったそうな
あなおとろし

陸の辻に鬼が出る
長い鬼の行列が
何の行き先は
口が裂けても云えやしない

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朝霧のなか
足音もたてず走りゆくのは
首の後ろでざんばらに髪をくくり
襤褸の着物から細い手足を長く晒す
年の頃は拾四伍の少年

息のひとつも乱さずに
ひたすらに京の辻を走りゆく

竹藪に囲まれた屋敷が視界に入ると
素早く辺りを見回して
細く空いた藪の隙間にするりと消えた

かさりと乾いた草を踏む音が鳴ると
屋敷の中から声がかかる

お戻りでございますか

狐面に白い着物
細い腰に紫の帯の若者は
ゆらりと立ち上がった

少年は狐には目もくれず
縁側の縁にぽとりとなにかを落とすと
竹藪に沿うように配された石畳を
軽やかに走り抜けてゆく

狐面はその後ろ姿を見遣り
ゆっくりとした動作で
結び文を拾い上げた

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