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いざ、トリターブの世界へ!トリターブ音律論!【033】

こんにちは、こんばんわ、ユートピア!
変拍子兄さんがやって参りました。

前回、平均律全体を俯瞰するための足掛かり
「基本平均律」というものについて考えました。

基本平均律の詰めた話に踏み込む前に
基本平均律では、拾いきれなかったノンオクターバルの世界にも
切り込んでみましょう。

(現在書ききれてない、項目がありますが
更新を楽しみにしててください。)


§1.1 ノンオクターバル・テンペラメント

通常の音律、いわゆる何平均律とかいう平均律においては
音組織はオクターブを単位として音域全体に広がっています。
2倍音を何分割かするというのは至極当然で、
オクターブ別の場所へ移すという行為はもはや、違う音に変わったという認識はありません。

ここで仮に2倍音を基準としている音律の総称を
オクターバル・テンペラメント
としましょう。
それに対して、2倍音=オクターブという原理には囚われないという
平均律のアイデアもあります。
こちらをオクターバル・テンペラメントに対して
ノンオクターバル・テンペラメント」と
呼ぶことにしましょう

ノンオクターバル・テンペラメントの代表として頭をよぎるのは
・ボーレンピアス音律→3倍音を13分割する
・トルコのマカーム→9/8を9分割する
アルファスケール/ベータスケール
といったところ

オクターブではなく、何を基準に分割するのか?
何を1Stepとして積み上げていくのか?
という自由度が高すぎて途方もない世界が待ち受けています。

まあ、今回はノンオクターバルの中でも、
比較的簡単なボーレンピアス音律・トリターブに関して踏み込んでいきましょう。



§1.2 トリターバル・テンペラメント

2倍音を音程として言い換えると、オクターブと呼びますが
3倍音を音程として言い換えると「トリターブ」と呼びます
以前、僕の記事でも触れたノンオクターバル・テンペラメントの代表格
ボーレンピアス音律では
3倍音=トリターブを13分割するというものでした。

ボーレンピアス音律は、正直言うと使いづらい音律です
オクターブは1170¢ですし、1Stepも強半音(3/4音)なので
今まで培ってきたメロディやハーモニーの感覚が通用しません。

とはいっても、
トリターブを分割すること自体に意味がないと片づけてしまうのは
話が早すぎますね。

このようなトリターブN平均律を「トリターバル・テンペラメント」と呼ぶことにしまして
トリターブを何分割するといいのか?というところに切り込んでいきましょう。

ネタバレからしますと3倍音30平均律をメインとして使っていこうぜ!
となります

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§2.1 純正度計算方法

前回、基本平均律の記事にて
倍音の近似の精度を算出す方法をお伝えしました。
平均律の総ステップ数にlog(3,2)を掛け、Roundで整数にすることで
倍音に近いステップが分かります

これを、トリターブ・テンペラメントでも応用してみましょう

例として、3倍音13平均律(ボーレンピアス音律)の場合はこのようになります
黄色く線を引いたところが、2倍音近似ステップで
その外側が、実際のセント値を計算する式です。

面白いのが、底が3になってますね
オクターバル・テンペラメントでは2倍音をM/N倍するかという話でしたが
トリターバルの場合は3倍音をM/N倍するかという話に変わりますので
底の値が変わるんですね。

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3倍音13平均律で2倍音を近似した場合1170¢となります。
これが短8度(minor8th)
この音程こそが、ボーレンピアス音律の最大の攪乱要因でしょう

ここでは13と決めて、関数を入力しましたが、
実際には、13ではなく別のセルを参照して、あらゆる平均律を調べます
また、2倍音はLog(2,3)でしたが5,7,11,13倍音を代わりに入れることで
別の倍音の近似を求めることも可能です

さらに実際の倍音の位置との差(エラー)も同時に計算させることで
後々、純正度をランキングにしていきます

5倍音以降はトリターブの外に出てしまいますのでModをかけて1200以内の数値になっていますが、音律の精度を図る値とて問題なく使用可能です。
例えば13平均律の5倍音近似は379¢ですが、
1トリターブにはこの値のステップはなく、1トリターブに5倍音の近似ステップがあるということになります。

トリターブ移動すれば、まあいつかは当たるでしょうっていう
3倍音に関しては無頓着な調べ方になっています
(それがトリターバル・テンペラメントの性質)

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上の画像では29で終わってますが実際にはまだまだ続いていきます

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§2.2 トリターバル・テンペラメントの純正度比較

さて、倍音近似ステップと実際の倍音の誤差の小さい平均律を探しましょう

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数字だけ別の場所にもってきて、フィルター機能を使い
絞りを掛けたり、ソート(並び替え)を掛けたりして
誤差の少ない平均律を求めていきます

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このように誤差は-10~10¢以内の奴だけ表示させます
5倍音でも同様に抽出条件を入れていきます


通常の12平均律は5倍音との差が10以上離れているため
この条件だと12平均律はアウトとなりますね。
トリターバル・テンペラメントの中でも12平均律っぽい幅の3倍音19平均律がいますが、こいつはこの条件から漏れてしまいます。

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そうすると、残った平均律の中で最もステップが少ない平均律を見てみましょう。
そう、これが3倍音30平均律
2倍音との差は5¢、5倍音との差は3¢となかなか精度が高いですね。
そのほか誤差がほぼないやつには重要な平均律ということでマークしています。
もしかしたら、トリターバルにおいても基本平均律を考え出すかもしれません。

というわけで、トリターバル・テンペラメントに踏み出すなら
「3倍音30平均律」こいつから制覇しようじゃないか!
という結論に至りました。

§2.3 オクターバル・テンペラメントへの近似


3倍音30平均律、そんな言われ方をするとイメージができない!
と思って驚いた方もいらっしゃるでしょう
そのため、2倍音平均律で似たやつがいるなら、イメージがしやすいかもしれません。
そのように考えると、案外トリターバル・テンペラメントもそんなに難しくないと思えてくるでしょう。

ということで、手始めに普通の12平均律について
2倍音12平均律は19Stepで3倍音に近い位置に達します
7Stepがソ=純正音程3/2 に対応しますから
12+7=19で3倍音(3/1)に達することが分かります

つまりご存じ12平均律は、おおよそ3倍音19平均律といえるわけですね。
ではどのくらい違うのか?セントで比較してみましょう
ちなみに、2倍音平均律をEDO、3倍音平均律をEDTと書きます
Equal Division of Octave/Tritaveの略です。

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ごらんの通りほぼほぼ同じですね。
3倍音19平均律の方が、0.1¢…若干高いという結果になりました。
まあ、要するに3倍音19平均律≒2倍音19平均律と考えても問題ないということです

それでは、3倍音30平均律に相当するオクターバル・テンペラメントは
誰でしょうか…?
オクターブが何ステップか調べればすぐわかります。
19平均律 ですね。

30Stepもあると表が長くなってしまいますが比較すると
こうなります

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やはりトリターバル・テンペラメントの方が若干高いですね
聞いた感じは2倍音19平均律と見分けがつかないでしょう

§3.1 ボーレンピアス音律の音名

まずは、名前を付けるスタイルの変拍子兄さん
音名の話から入ろうというところですが
第3章はかなり手堅く分析していきます

音名を決めましょう
といってもいきなり3倍音30平均律の音名に踏み込むのは難しいので

その基本形となるボーレンピアス音律から始めましょう
ボーレンピアス音律用の音名がこの様に決まっていたりするのですが
今までの音名とかなり乖離のあるネーミングになっています

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例えば10番目のAであれば、1463¢となり
「全然Aじゃない…」と混乱してしまうことでしょう。
それならいっそ、全然違う見た目をしていればいいということで
僕は「干支Notation」という呼び方を採用しています

それがこちら↓
十二支+猫の13名で構成されています

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この書き方だと、音名の混同は防げます
デメリットとしては、画数が多い・音節が多いところですかね
この13音を基本として30平均律に応用していきます

§3.2 トリターバル30平均律の音名

この平均律では1Step=63¢となりおおよそ3分音です
このため臨時記号は3分音記号のサ/dlを使用します

さらに余計なことですが
丑と寅の間は、ほかにもなど
風水的な表記も含まれています
(寅dlとかで全然いいんですけど)

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結論だけまとめてしまいましたが、
ここからはトリターバルテンペラメントの音名の付け方を詳しく述べていきます

①オクターブの位置=申
②5倍音の位置=午・未
③7倍音の位置=卯・戌
④BPセントで大まかな位置
⑤モンゾ分析
⑥純正音程で位置を決定
⑦臨時記号

現状はこの手順で作りますかね
音名づけは目的に応じて、若干変わるのであくまでも一例としてお送りします。

①オクターブの位置=申
ボーレンピアス音律では8番目の申がオクターブ(1200¢)の位置となります

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これをそのまま30平均律にも応用して
オクターブに近いものをとします

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文句なしで1205¢の19番目ですね。これがこの音律におけるです

②5倍音の位置=午・未

5倍音で注意となるのが、
今までのオクターバル・テンペラメントの場合
厳密には純正音程5/4に対応するステップを考えていました
これは5倍音をオクターブ内に収めた純正音程となります

しかし、トリターバル・テンペラメントの場合
2倍音にはあまり信頼を置かないためオクターブ調整はせず
トリターブ調整を行います
つまり5倍音をトリターブ内に収めた5/3を使用します
5/3は884¢ですからこれに最も近い6番目のが5倍音の役割を果たします

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さらに、5倍音ユートーナルも同様です
単純に午が6番目なので、逆から数えて6番目のが役割を担います
もちろん純正音程9/5から考えてもOK
それでは30平均律にも応用してみましょう。

純正音程5/3に近い888¢がいますのでこいつが
逆側から14番目、対照的な位置になる16番目が
となります

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③7倍音の位置=卯・戌

7倍音も5倍音と同様にトリターブ調整をします
つまり純正音程7/3を使用するということになります

7倍音は今まで7/4として扱ってきましたが
トリターバルの場合、1以上3未満の値であればOKですので
7/3でも問題ありません
この7/3は1467¢です 

ボーレンピアス音律のなかであてはまるステップを探してみましょう

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10番目のが結構近い値をとりますので、
この子が7倍音担当となります
同様に逆サイド(7倍音ユートーナル)はとなります

30平均律にも応用して

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23番目の1458¢がとなり
逆順で23番目=7番目= となります

④BPセントで大まかな位置

こんな感じで純正音程とボーレンピアス音律を見比べながら
つづくのか…と面倒になってきましたので
新しい単位系を導入しようかと思います
それがBPセント

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トリターバルようの新たな単位系を導入することで
音名の決定するが楽になります

通常のセント値で表したボーレンピアス音律は数字もまばらでしたが
ボーレンピアス音律を基準に単位を作ったので、こうなります

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大分スッキリした見た目になりましたね
つまり下2桁が00であれば、ボーレンピアス音律に近いということが
直感的にわかるようになっています

30平均律もBPセントで表してみましょう

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こうすることで、残りの干支も楽に埋めれそうですね


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その結果がこうなります
先に決めたもの・明らかにずれてるものはグレーアウトしました
辰や酉は一発で決められたものの、2択までは絞れたというものがほとんど
ここからは純正音程が決め手になります

⑤モンゾ分析

セントから純正音程を考えていくのは面倒なので
結構テクニカルな手法で純正音程のリストを作っていきます
それが今回のモンゾ分析

モンゾとは2,3,5,7…と倍音ごとに何乗するのかをベクトル形式で表記したものです
例えば27/8という純正音程の場合
2^(-3)と3^3という風に倍音の中身を表すことができます
これを|-3 3>と表記します。これがモンゾ。

そして今回
倍音をそれぞれ何乗するかを…

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このように並べて書いていきます
例えば一番上の音程は7/5を示します
この様に、モンゾからスタートすると、楽に純正音程が網羅できます

関数の説明に関しては省きますが
純正音程、そのセント値、対応するステップが自動的に出力される
装置を作りました

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3倍音に関してはトリターブ以内に収まるように自動的に値を決めてくれます。
モンゾの方で、2,5,7倍音が±2以内になる値を入力して
ステップ順になるようにならべかえると
音名選考に必要な純正音程たちがこのように整列してくれます

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このモンゾ分析のリストを携えて、音名の最終選考に移るとしましょう。

⑥純正音程で位置を決定

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さあ、最終選考と参りましょう
の音程としてふさわしいのは2Stepなのか3Stepなのか?

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純正音程で、シンプルな奴を探しましょう
そこで選ばれたのは10/9
つまり3Stepがふさわしいという結果になりました

とまあ、このように
シンプルな純正音程で表せるステップの方にメインの音名は手渡していき
最後の2択に決着をつけていくわけです

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⑦臨時記号

最後の仕上げ、臨時記号を振っていきましょう
1Step=63¢であることから、3分音記号サ/dlを使用します

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さらに、この音名ルールを適応すれば30平均律の音名付けが完了します

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これを適用したバージョンがこちらですね

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音名付けに長々と、時間を割いてしまいましたが
3倍音30平均律はこれから始まるトリターブ論の要となる存在ですので
厳密に音名を決めました。

§3.3 インターバル

さて、音名が決まったところで
インターバル名も決めていきましょう

ボーレンピアス音律の利点として、度数の表現が
オクターバルの時の度数表現とあまり差がないという点
つまり、度数に関してはこれまで通りで問題なしということです
まあ転回に関してはルールが変わりますけどね

そのため、完全音程や長短あるいはインフラやウルトラといった表現は
同じように使うことができますから
普通にセントを見て、度数・クオリティを決めてOKなのです

その結果がこちら

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ざっくりとまとめますと
長短系→インフラ、マイナー、メジャー、ウルトラの4段階
完全系→
ディミニッシュ、マイナー、パーフェクト、メジャー、オーグメントの5段階
(11thは長短系としています)

この音律では長3度が純正寄りだったので、ニュートラルがいなくなったという感じですが、ニュートラルが出現する音律も今後出てくるでしょう。

§3.4 カラーノーテーション(更新予定)

§3.5 鍵盤デザイン (更新予定)

200306 じゅんびちゅう

§4.1 ベーシックエニアトニック

さあいよいよ、スケールの話です
トリターバル・テンペラメントの音階について考えていきましょう。

ベーシックたりうるスケールを作るからには
純正音程を基礎としたスケールでなければなりません。
そのため今回も純正音程から、スケールを生成するわけですが
手法としては以前、体系化したスケールファンクションという手法を
トリターバルテンペラメントに応用していきます

まずは、トニックについて
トリターバルにおけるトニックはトリターブとします
オクターバルではドミナント扱いのはずの3倍音をここではトニックとして扱います

トリターバルトニック、トリターバルドミナントという風にしたいところですが、長いのは嫌なので省略します
ここからは、トリターバル用の機能だと思ってください
(普通の機能との齟齬がつらくなって、このあたりの話を作り直すかもしれません)

つまり、トニックに関してはこの様になります

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お次はドミナントですね、
ドミナントはここで5倍音が担います
午がドミナントで、未がサブドミナントとなります

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お次はミディアント、
2倍音の方を後に回したのは、位置的な問題です
ドミナントとトニックの間の位置に2倍音が来ることから
2倍音がミディアント担当になりました
ここでは申がミディアント、巳がサブミディアントとなります

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次は、ネイバーと行きたいところですが
それほど、ネイバーといえる距離ではないので、
ここで新しいファンクションを導入します
それは「クアドラント
ミディアントのさらに半分の位置に置かれるスケールファンクションで
7倍音がその役割を担います

卯がサブクアドラント、戌がクアドラント となります

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さて、これで7音が出そろいました
どのようなスケールができあがったのか見てみましょう

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ここで思ったことをまとめてみますと以下のようになります。

・オクターバルではT→SDの間にいたところにMがいたが
 ここではD→Tの間にMが来ている(SD→Tの間と考えてもよい)
・サブが低い側、メインが高い側になっている
・3Stepと4Step と7Stepのみで構成されている

そう、ポイントは最後の項目
7Stepを3と4に分割することで、よりシンプルにできるのでは?
とひらめくことでしょう。
そこで、「ネイバー」の登場です

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子と卯の間にあるのは丑か寅ですから、この2択となります
まあ、3か4Stepに統一すればMOS音階になるわけですから
(MOS音階:Step幅が2種類の音階)
丑をネイバーとする方を採用しましょう

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というわけでできあがりました9音音階
これがベーシックエニアトニックです。
セントも併記してみるとこうなります↓

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§4.2 エニアトニックコード(更新予定)
§4.3 チャーチモード的な奴(更新予定)
§5 トリターブクラス(更新予定)
§6 実際に聞いてみる・テレプストラキーボードなど。(更新予定)

200306 じゅんびちゅう

(別記事にしたほうがいいかもなあ…)

◆〆

ということで、トリターバルテンペラメントの理論を構築してみました
オクターバル・テンペラメントとの大きな差はやはり2倍音近似のずれ具合ですから、
2倍音のクオリティによって聞こえ方の分類ができそうですし
逆にそこさえ押さえていれば、5倍音や7倍音平均律もあまり変わらないという結果になることが予想されます。

このまとめを書いてる時点では、まだ記事は完成していませんが
未知の世界だった、ノンオクターバル・テンペラメントの扱い方が少しずつわかってきて面白くなってきましたね。
こいつをドレミの歌に落とし込むことはできるのか?というところも気になります。


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