7つ基本平均律で微分音を攻略せよ!【032】
こんにちは、こんばんわ、ユートピア!
変拍子兄さんの時間です
わたくし、変拍子兄さんは、これまで24平均律をメインに
31平均律や53平均律などを触ってきましたが
ふとこういう疑問が頭をよぎりました。
「次は、いったい何平均律をつかえばいい?」
「いつまで続くの?」
微分音の世界は広大とはいえ、すべての平均律まで目を向けると
途方もないように思えてきます。
そこで、わたくし変拍子兄さんは考えました
「基本平均律」なるものがあればいいのではないか?
変拍子も数限りないとはいえ、2と3と5、拡大縮小、シンコペーションの組み合わせで攻略できますから、
微分音でもそんな感じの最小構成要素を突き止めれば、
あてのない平均律の旅にゴールが見える!と思いました。
…ということで7つの基本平均律というものを導き出しました。
◆7つの基本平均律とは?
53 24 29 22 31 25 28
ズバリ、この7匹です(暫定)
平均律の純正具合によって、7つ平均律を選びました
その7つの平均律のカテゴリ名として「Pure」だの、「Sour」だの
僕が勝手に格付けをしています。
Rowは白鍵、黒鍵を何倍ふやすか?という話ですが
これは、実際に使っていくときに踏み込んでいきますので
とりあえず、今回は触れません。
◆純正度
まずは「純正度」について
これは、倍音にどれだけ近い値を出すことができるか?という平均律のスペックです。
倍音の中でも基本的な3倍音と5倍音に注目して、平均律を分類
その中から典型例として代表選手を選びます
純正音程は、3倍音を複数回重ねることが多く
そのたびにズレが蓄積されていきますので、誤差は少ない方がいいですね
5倍音も少なくとも2回は重ねるので、こちらも重要ですが
3倍音のズレの方が優先度としては高いですね
ズレ具合、高め低めでカテゴリを分けると↓のようになります
さらに
「Pure」「Sweet」「Better」のカテゴリに分類されるぴったり系を3分割
5倍音=純正長3度(386セント)からも5セント以内となる場合
「Pure」の称号が与えられます
純正→Pure 高め→Sweet 低め→Bitter
としました。
①Pure:53平均律
さて、ここからは代表選手とそこに入りきらなかった子たちを見ていきましょう
53平均律は、長3度・完全5度ともにズレの少ない平均律で
純正系平均律として名高い平均律です
ピタゴラス音律をめちゃくちゃつづけていくと53で戻ってくることから
導き出されています
その他
34平均律、43平均律もPureに属しますが
53が圧倒的に有名であることから落選となりました
(メルカトルコンマというのもありますし)
精度に関しても53平均律が高い精度ですから
Pureの代表は53平均律でしょう
最近、速攻であらゆる平均律のテレプストラキーボードを生成できるようになりましたのでキーボードの方も張っておきます
画像クリックでキーボードが鳴らせます
この辺りの平均律はステップ数が多いので、タブレットで弾くのがオススメです。
・53ET
・43ET
本格運用するなら記号を見直したいところですが
適当に弾く分には十分でしょう
・34ET
②Sweet:24平均律
お次は3度がやや高めの平均律
純正の3度と比べ輪郭がはっきりするという利点もあることから
「Sweet」と名付けました
こちらの代表格は何といっても24平均律
12、36、46平均律もSweetのグループに属しますが
11倍音(551¢)を捉えているところから24平均律が代表となりました
・24ET
おなじみの24平均律ですね
11ステップ目が550¢で11倍音(551¢)に近い値をとります
24平均律の話では11倍音がしつこくでてくるのは、これが根拠となっています
・36ET
半音を3分割する6分音は7倍音を表しやすく
29ステップ目おAサが966セントと7倍音(969¢)に近い値をとります
7倍音系をやるなら実際36平均律がお手軽ですね
・46ET
こちらは12ET系と比べて純正寄りの値をとりますが
Pureまではいかなかったパターンです
典型例としてはふさわしくないですね
③Bitter:29平均律
長3度が低い場合の代表は29平均律です
372¢の次は、413¢となっているようにBitter系では
400を超えてくる3度が反対側にいます
仲間としては41,48,51平均律
純正系として有名な17平均律もBitterの類になりますが
352¢と結構低い3度となり、もはや中3度となりますので
代表にはなれませんでした
比較は下図のようになります
41平均律が386に近い!と言いたいところですが
今回はBitterの代表なので41平均律はPure寄りなので△
5度の純正度で見ると2番手は29平均律なので、代表となりました
・29ET
・17ET
E,Bが高めであることから、オッドノートになってます
以前の記事で作った17平均律とは風貌が違いますが
僕は新Verの方が好きですかね
純正よりの3度はEdlの方となります
・41ET
7,11,13倍音を程よく近似するので重要な平均律ですね
Bitterの典型ではないですが、別枠で扱うかもしれないです
・48ET
・51ET
④Sour:22平均律
5度の響きにやや癖がある系統の平均律です
5平均律の5度(720¢)の面影もあるもののまあ5度としてはワカル!という
響きがSour系の特徴です
仲間としては37,44平均律
その他にも色々いますが、長3度のズレが少ないのはこの3名
Sourの中でも、長3度のズレがある系を扱いたい場合は
SweetやBitterの感覚をつかんだうえでSourとの複合型として捉えるのがいいでしょう
・22ET
22平均律では純正よりのメジャーとピタゴラス音律よりの3度が両方あるところが面白い点ですね
・37ET
・44ET
⑤Mellow:31平均律
お次は5度がやや低めで、渋めの雰囲気を持つ平均律
代表格は31平均律ですね
5倍音と7倍音が近い値をとることから特に気に入ってる音律のひとつです
体系化も進めているところですね
https://note.com/nayuta_823543/n/n357c057f54e8
7倍音にリーチできる36平均律は、12平均律系で便利ではあるものの
5倍音へのリーチが弱いことから31平均律の方が純正的な響きを出せます
31平均律については自作音源もありますのでプッシュしておきたい音律です
仲間としては40,47,50平均律
3度が低めにはなりますが19平均律なども仲間ですね
・31ET
・50ET
5倍音、11倍音、13倍音に結構近い値が出せる音律です
41平均律と同様にハイリミットが近似できる系で重要なやつですね
・19ET
純正系の平均律としてよく取り上げられる19平均律ですが
5倍音が低めであることから系統としては
MellowとBitterの複合形という扱いになりそうです
⑥Acidic:25平均律
スレンドロ音階として有名な5平均律ですが
純正を避けるというコンセプトでは強力な威力を発揮する音律です
5度が720¢と3倍音の702¢を大きく上回る音律で雰囲気も
かなり独特で
理論的に解析する際も純正音程のアプローチが効かなくなりますせめて5倍音は純正音程が出せる25平均律を代表としました
5平均律系はパーフェクトペンタトニックをふたつ使用することで
クオリティが2種類に限定された10音音階をつくることができ
完全に振る舞いが違う構造をしています
純正音程と肩を並べる旋律の原理として着目すべきだと思っていますね
仲間としては18、13平均律などアトーナル色の強い音律です
下図の通り、こいつら5度の値はかなり高いですね
・25ET
・15ET
・18ET
・13ET
⑦Rotten :28平均律
5平均律とは逆に5度がかなり低めの存在が7平均律
ふたつの素数が対極の性質を表すファクターとなるのは非常に面白いところですね
これに関しても5倍音は純正に近い28平均律を代表としました
仲間としては11,16,23平均律と
これまたカオス系平均律が揃っていますね
5平均律系のカオスと7平均律系のカオスが2種類あると考えるとよいでしょう
5平均律系がオーグメント的 7平均律系がディミニッシュ的
という風な対比的な関係にあります
Rotten平均律はこのように5度が低めで不気味な雰囲気が特徴です
・28ET
(28ET、キーボードの設定ミスってる気がする... )
・11ET
・16ET
・23ET
◆どうやって純正度を把握するのか?
僕が調べ上げた平均律ならいいとして、
この記事に登場しなかった平均律のカテゴリを調べるにはどうしたらいいのか?
あるいは、きっちり自分で調べたいといった場合はどうするのか?
こちらはエクセルと数学よりの話で上級者向けなのですが、お話しましょう
それでは早速この問題について考えてみてください。
Q. あるN平均律で何Step目が完全5度(または最も近い音程)となるでしょうか?
これを導き出せれば、完全5度の純正度がわかります
手始めに「完全5度の周波数比」と「N平均律のMステップ目の周波数比」を求めましょう
「完全5度の周波数比」=3/2
あとあとModとか使うのであれば、3倍音の3のままでもOKです
「N平均律のMステップ目の周波数比」=2^(M/N)
この値が3/2に近ければいいのです
3/2=2^(M/N):まあ、簡単にするためにイコールで結んで話を進めましょう
↓
log(3/2,2)=M/N : Mを求めるように式変形します、まずはlog(底は2)
↓
M=N*log(3/2,2):そしてNを移す、これで完了です
さて、このMというのは整数でなければなりませんから
整数に近似する必要がありますね
ここでは少数点以下を四捨五入するエクセルの関数Roundを使います
Round(N*log(3/2,2),0)
これが答えです
さらにこのステップが何セントか把握するためには
1200*(M/N) を調べればいいので
1200*(Round(N*log(3/2,2),0) /N) こうなります
最後にNに好きな平均律の値を入れれば、5度が何セントなのかエクセルが教えてくれます。
長3度も5倍音というところから、応用が可能
1200*(Round(N*log(5/4,2),0) /N)
とすれば完了です。
僕は12~53平均律の5度と3度、
さらにここから純正の値(702、386)を引いてズレ具合を出し
データベース化し、並べ替えを行って
カテゴリ分けを行いました。
実際のデータがこうなりますね
C列が平均律
D列が長3度のセント値
F列が5度のセント値
E,Gはズレ具合を10刻みで揃えた値です
僕は区切りを10セント刻みとしましたが
別の区切りを定義して分類を見直してみてもいいでしょう
◆基本平均律で網羅できる?
5度のズレ具合と3度のズレ具合を体得すればその組み合わせで
ほぼほぼの平均律は攻略できますし
かなりずれた代表格の5、7平均律を押さえればアウトサイダーなやつも掌握。
ハイリミットな7倍音、11倍音、13倍音とこのあたりは合うか合わないかを
平均律のスペックとして確認しておけばOKでしょう
これで平均律を攻略する指針が立ちましたね
ですが忘れてるやつがいましたね
「ボーレンピアス音律」を代表とする
オクターブの常識をすてた系統「ノンオクターバル系」
基本平均律では、さすがにこいつらには対処できません
そして、ノンオクターバル系音律をどう分類したらいいのか
僕自身も見当がついていないので、
このゾーンがさらなる微分音の奥地となりそうですね。
それは基本平均律で遊び倒したあとに、突入しに行きましょう。
◆〆
今回、テレプストラキーボードが今まで以上に大量発生したので
聴き比べが非常に面白くなりそうな記事となりました
基本平均律コンセプトは、平均律全体を掌握するための要となります
さらに複数の平均律を同時に演奏するポリテンペラメント理論へ展開が出来そうなポテンシャルもありますね
平均律の分類が今回の考察でかなり進んだので
平均律を俯瞰的にみれる視座が身についたのではないでしょうか?
とはいっても今回は表面的な話でしたので
今後、各平均律を掘り下げた話もしていこうかと思います
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