33歳、SSRガンを引く①(精巣腫瘍について)

タイトルの通り、世にも希少な精巣ガンになりました。違和感を見つけたのが昨日5/27、急遽入院などが決まったのが今日5/28なのでまだ細部がよくわからない状況ながら、このケース自体が10万人に1人、かつ10代~35歳まで限定の悪性腫瘍であると非常に希少なため、noteを使ってちまちまと進捗を記録しながら全体を整理しておくことで、価値のある情報として今後の関係者に活かせればと思います。

※部位が部位なので生々しい内容になります。色々と人を選ぶので覚悟のうえでお読み下さい。

※収集した文中のソースを自己流に要約・整理したものです。著者は医療関係者ではありませんので、必ずご自身で情報元を確認し判断下さい。

発端と現状

2020年5月27日水曜日。風呂から上がった自分に妻が「〇マ〇マチェック!!」と言いながら掴みかかってきた。

自分は数ある奇行の一つとして流していたのだが、「やっぱり左が大きい…」というコメントをもらって自分でもよく見てみたら、確かに…言われてみれば、左側の〇マの方が明らかに大きいし張っている。

張っているだけなら人間の体のことだしそういうこともあるのでは…と思ったもののの、乳がん等ではしこりを早期に発見することで重篤化を防ぐことができるということを思い出し、もしかしたら腫瘍かも?と感じて二人で調べてみた。

痛みなし(そもそも指摘されなければ気付かなかった)、でも明らかに左側の様子はおかしい…大きいし、弾力がある。ポパイみたいだ。平成狸合戦ぽんぽこに出れば近距離パワー型タヌキとして人間どもを黄金の左で粉砕できそうな頼もしいそれは、ネットでどう調べても、精巣腫瘍の特徴そのままだった。

睾丸が膨張する症状は何も腫瘍だけではなく、他にもいくつかの症例がある。とはいえ最有力は腫瘍だったので、急ぎ近辺の泌尿器科を検索するも、あいにく翌日の木曜日に休みのところが多い…さらに手術の場合は大型病院への紹介になってしまうので、出足が遅くなるよりはと、初診で少しコストはかかるが木曜日も稼働している大型病院に行こうと決めた。

30代前半、新婚にして転職活動中、良い内定をもらい来週は妻の誕生日、キャリアも一つ気合を入れて伸ばしていくか、緊急事態宣言も解除されたしいずれは飲みにでも行きたい…という最良ゆえに最悪のタイミングでの、ガン。基本的に要因がわからない遺伝子のバグ。大体死ぬ(イメージ)。しかもまだ30代…それなり以上にリアリストな自覚がある自分でも、思わずのけぞるインパクト。短期的にも中長期的にも狂う予定が多すぎて途方に暮れるとともに、何よりあまりにも早い段階で最大級の重い案件を背負わされた妻への申し訳なさでいっぱいになった。

それでも、こと医療に関しては素人判断ほど危険なものはない。どんな結果になるにせよ、医療従事者のみなさんを信じて指示をよく聞くしかない。そう考えて床に就いた。

5月28日、果たして長い諸々の事前検査の後にエコーで一発、「ほぼ精巣腫瘍で間違いないですね」。準緊急とのことで、来週6月1日からの入院と手術が一気に決まった。実に20数年ぶりの短い(平日一週間)入院生活の始まりだ。進捗していた転職活動は打ち切り、現職にも色々と手を回し、保険の申請をして(コロナのせいでサポセンに繋がらない)、親戚に連絡し…週明けまでのわずかな自由時間を使って今このnoteを書いている。

精巣腫瘍とは?

〇概要

精巣腫瘍とは、その名の通り精巣内に悪性腫瘍ができ、それが肥大することによって精巣自体も大きくなっていく固形腫瘍型のガン。転移までの期間が短いと言われているが、その場合でも適切な抗がん治療によって概ね寛解しやすいと言われている。他にも睾丸が肥大する病には水が溜まる①陰嚢水腫や②感染症および精管がねじれる精管捻転などがあるが、①陰嚢水腫との違いは、陰嚢水腫がただの水の塊であることからライトを当てると光を通すのに対し、腫瘍は不良細胞の塊なのでぎっしりと詰まっており光を通さない点、②感染症等は肥大に伴い痛みが感じられるのに対し、腫瘍は実際に良く触れないとわからないほど肥大に伴う違和感が感じられないという点で違いがある。

非常にレアなケースではあるものの、乳がんなどと同様に定期的に触ってみることで妙なしこりがないか、左右で大きさや弾力に違いがないか確かめることが重要だといえる。

・手術

固形腫瘍というのがミソで、内部のガン組織を体内に流出させないために、一部を切り取って検査とか穴をあけるようなことは厳禁とされている。そのため、無傷で全摘出を行わないと内部の腫瘍の病理的判定ができず、また転移の有無も確認できないらしい。

実際の手術では、下腹部のビキニラインに小さくメスを入れて、睾丸に繋がる精管から引き出すように全摘出する。〇マ自体は下から押し出すようにして傷つけないように取るようだ。このあたりの流れは、下のオモコロの有名記事を是非参照されたい。

・検査

患部の全摘出を行うとともに、体内の他の部位への転移を調べるためのCTスキャンも併せて行う。摘出された腫瘍は病理検査の結果、ステージと転移可能性が判断される。この時の肝の一つは睾丸に繋がっている精管だ。上記国立がん研究センターの図解を見るとわかるかもしれないが、この管は睾丸から出て垂直方向に延びた後、奥の方に折れていく。この折れるところで腹の中、つまり体内に深く入っていき、ぐるっと縦に一回りして前立腺に繋がっていく。よって、この精管に腫瘍が伸びていると転移リスクがあると言える。他にも、血管やリンパへの転移(脈管侵襲)が見られるかどうかも重要で、転移が見られれば当然化学療法などの一般的な抗がん剤治療が選択肢に入る。

腫瘍自体にもセミノーマ(精上皮腫)型であるかそうでないかという二つの大きな類型がある。腫瘍がセミノーマである場合の転移リスク・再発率は低く、摘出後はほとんどの場合定期的な予後観察に移行することになる。(つまり、アタリ腫瘍)一方で、胎児性がんなど他の要素も含む非セミノーマである場合には、CTで発見できない細胞レベルの小さな転移の可能性があり、状況や患者の意思などに応じて抗がん剤治療が推奨される。またセミノーマに比べてやや再発率が高く、脈管侵襲があるかどうかによって更にリスクは高まる。ただし、日本癌治療学会のガイドラインによれば、ステージ1の早期であれば再発したとしてもその時に化学療法を行うことで治癒の可能性は高いので、直ちに化学療法を行うか、経過観察するかはケースバイケースとなりそうだ。具体的な確率についてはこのガイドラインがファクトブックとして使えそうで、実際に担当医師の方も詳しく知りたい場合はガイドラインを参照されると良いと仰っていた。

〇まとめ

10万人中1人という激レア罹患率!しかも10代~35歳ぐらいまでの若年層限定というなろう系の設定にありそうな特徴!

・あの爆笑問題田中もかかった片玉病!かかれば100%全摘だぞ!選ばれし者の証として〇マ〇マを捧げよ!

・ただし異能は身につかない

予後のリスク

①摘出後の再発リスクと死亡可能性

セミノーマ型であったとしても、低確率で再発の可能性は残る。ただし再発した場合に抗がん剤治療を行えば治癒率は98-99%。非セミノーマの場合は3分の1程度で存在する脈管侵襲の有無にもよるが再発リスクはより高く、とはいえ依然として抗がん剤治療が有効である。ステージ1で脈管侵襲がなければ経過観察も選択肢に入るが、そうでなければ抗がん剤治療が必要。総じて治療による治癒率自体は低くなく、”精巣腫瘍による死亡が、がんで亡くなる人全体に占める割合は0.1%未満”とされているため死亡のリスクは比較的低い。発症の時点で定期的なCTによる経過観察が行われるのは確定なので、むしろ早期発見がしやすいという意味では治療しやすいガンだと言える。

②脈管侵襲など高リスク時の、各種治療による副作用のリスク

場所が場所なので、放射能療法を行うと精巣自体にダメージを与えてしまい無精子症を誘発する。この場合、精子凍結を事前にすることで受精自体はできるが、男性機能が失われる。化学療法を行う場合には脱毛や倦怠感、吐き気などのヘビーな副作用はあるものの、このあたりの問題はないようだ。ただし化学療法の場合は血小板等の減少による免疫力の低下があり、入院生活が長くなるという弊害もある。

10万分の1を引き当てた男たち

非常に希少なガンではあるが、この病については京都発祥の精巣腫瘍患者友の会という互助団体もあり、関西中心ではあるが定期的に患者同士の交流を行っているほか、複数の寛解患者のコメントなどを確認できる。50代・後期ステージで転移しても化学療法で寛解したケースなどもあり、治療方法もさまざまだ。自分はこのレアな症状にかかったことでこの珍しい団体の会員に胸を張ってなれるのでちょっといいなと思う。コミュニティがあるって大事よね。

ちょっと見た感じnoteでも同じ症状に悩まれた方のポストがあるので参考になる。10万分の1って結構集めるとあるな…


所信とか

・妻すごい

この件については発見もそうだが、妻に尻を叩かれて年始に保険に入っていたのもかなり効いていて、この時期にかかったことで治療費のほとんどを保険でカバーできるだけでなく、ガン特約をつけていたことで以後の保険料を免除にできそうだ。かかったガン自体の死亡リスクが低ければ、他の要因で入院になってももらい得になる。申請が通れば低いリスクに最小投資で最大効果が出せるのでちょっと期待しているのだが、その分彼女に還元しないとね。少しでも遅ければ特約発効までの90日の待機期間に引っかかっていたので、まさしく命の恩人(?)だ。
身近な人は知っていると思うが、妻に会うまでの人生があまり愛着を持てるような内容でもなかったので、元々いつ死んでも良いような思いで生きてきたこともあり、不安ながらも結構淡々と受け止めているのだが、今はむしろ支えてくれる存在を思えば、どんな選択肢を取ってでもしっかり治療して生存していくということが重要だと思える。そういうモチベーションが持てるということ自体がありがたいことで、かえって今の自分はやっぱり昔より幸せになっているなと感じる出来事だと思う。

真面目な話、独身だとコレ本当に転移して何か異常をきたさない限り気付かなかったと思うし、気付いたとして素早く動いたかも疑問だ。保険なんて頭をかすめもしなかっただろうし。実際misonoの旦那さんのNosukeはステージ3で胃への転移を起こしており、今は快癒しているようだが一時はかなり危なかったようだ。そういうわけで妻さんには既に感謝しかない。引き続きよろしくお願いいたします。

・仕事と治療

職場は今のところ理解を示してくれており、強力な味方もいてくれるのですぐに蹴り出されることはなさそう。手術自体は一週間で終わるので、当面の穴が小さいのも幸いだ。幸か不幸かコロナでリモートワークが一斉化したので、この事情を汲んでもらい在宅ワークを続けながら化学療法も行う等の選択肢も検討できるかもしれない。治療費も限度額適用認定証をグループ健保から発行してもらうのと保険給付金の合わせ技で最小化し、貯金も少しはある。治療が長期化するとやりくりを考える必要があるかもしれないがとり合えず心配はない感じ。コロナ以後は冗長性の価値が見直されるとはよく言うが、まさしくこういうメジャーなイレギュラーに対応しやすい社会に少しでもなってくれていることがありがたい。

治療はそれぞれリスクがあるので慎重に考える必要があるが、化学療法は免疫力の低下とコロナリスクに留意すれば、抜けた毛はまた生えてくるし、再発率低下に有効であることが証明されている以上、早期にしっかり処置をして終わらせて取り戻すという考えもあるだろう。事前のレントゲン等の検査で他の部位に腫瘍も見られず、所見も異常なしなので、早期の化学療法または経過観察で乗り越えられるのではないか?という期待はある。

入院する病院はコロナ対策を厳しく行っているため、差し入れや面会などはできないが、外から見る限りでは人通りも少なく随分と落ち着いた様子だ。話を聞いた限りでは第二波を警戒しているが、全体としては少しずつオープンにしていきたいとのこと。ほんと増えないといいですね。

・心構えとか今日の学びとか

なんにせよ人はいずれ死ぬので、今日納得して死ねるか?を考えながら生きてきた身としては、もともと想定していたリスクが顕在化しただけであまりやることは変わらないのかなと。心配してくれる周囲への感謝を忘れないということだけでなく、経験を価値あるものとして昇華し、ペイフォワードすることでより質の高い生を送り課題に勝利したいと思う次第。

長らく未完のままにしているフリーCRPG『CardWirth』の自作シナリオの続編を作るにあたって、”個人から個人の、または個人からセカイへのリセット願望に対して、今出せる解とは何か?”をずっと考えてきた。伊藤計劃が病床で著した『ハーモニー』は、やっぱり生命に対する知性の敗北だったのだと思う。『FF6』ではケフカの問いに主人公たちは個々の執着で応えた。この人間世界において、「意味を見つけ出せる」ことはそれ自体が一つ上の階層を約束する才能や資質であって、「意味を持たない」者との格差と隔絶を生み出す。ゆえに、「意味を与えることができる」者は持たざる者の支持を集めるが、この「意味」という言葉はそのまま価値とか貨幣に置き換えられるようなもので、普遍的な要素ではない。だが少なくともこれまでは、意味を持つ者による反抗と勝利が定型だったのではないかと思う。しかし、耳と目を閉じ口を噤んで暮らす者を救えない・救わない社会は弱肉強食のサバンナと変わらない。では、この現代における包摂の思想とはどんなものになるのだろうか?…色々書いたけど、遍く生命が必ず死という終着を目指し負の方向へ向かう以上、負をまなざした上で、取りうる最も正の選択肢を打ち続けることが最良のバランスなのだろうというひらめきを得た。これを悪役の背景に照らし合わせることでそこそこいい線の回答が導けるような気がするので、全体をまとめながら上手く練りたい。

とりあえず週明けまでは準備して待機なので、また来週から色々と考えていく予定。



サポートいただいた方、誠にありがとうございます。サポートいただいた分はすべて精巣がんの治療費に充てさせていただいております。