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実家の風景

あまり手元に画像がないので、ちょっと昔のお話をするだけなのですが。

東京に住んでいると、田舎とは何であったか、考えさせられます。
先日幼馴染のお母さまの訃報を聞き、そういえば、と思い出すこともあったので。

うちの家は、見渡す限りの山々山さらに山々という、山に不自由したことが
一切ない、典型的な九州の山間地にあります。ドラえもんふうに言うと、「チダイラセンなんか一度も見たことがない」(地平線をチダイラセンと読んでのび太がバカにされる回の話ですね)のですが、これがのび太のもの知らずとして、全然おかしいと思えない。

なぜかというと、お天道様は山から上って山に沈むものだからです。

で、その山はというと、有名な日田杉が山の上の方まで植えられている土地で、頂上だけ、変な形の岩がむき出しという土地でした(日田杉は別に日田市にしかないのではなくて、その周辺の市町村一帯に植えられているのですよね)。
へんな形の岩というのは町内のあちこちにありまして、周辺一帯もそういったのがごろごろしておりました。
地学的な解説ですと、過去三百年前にできた溶岩台地の、その安山岩地質、ということです。

九州は案外低山帯が多く、我が家周辺も山際以外では標高が200mほどしかありません。
山間部ですので平地は猫ちゃんがニャーンというほど狭く、川は細く急で、子ども時代は田舎の棚田みたいなのが世界のベーシックな田んぼみたいなのだと思っていました。ちょっと(だいぶ)違いました(笑)
そして、どんな山も「変な形の岩」を抱えているものだと思っていました。ちょっと(だいぶ)違いました(笑)

町内の事件ではありませんでしたが、ご近所の町で何年か前、こんな事件がありました。

平成30年4月11日に大分県中津市耶馬溪で発生した斜面崩壊の地質概説|災害と緊急調査|産総研 地質調査総合センター / Geological Survey of Japan, AIST (gsj.jp)

九州北部はそもそもが梅雨明け時の集中豪雨でうれしくもなく名高いのですが、この崩落事件の頃はそういった長雨大雨は一切関与していなくて、要は突然の地滑りだったそうです。実家でも妹の知人が犠牲になったと聞きました。

全国大方の山林が昭和30年代にピークを迎えた後は外材に押され、山の管理の出来る山主がどんどん減っていく中、根の浅い針葉樹はいわば山の表面しか覆っていず、しかも間伐も行われていないので、成長不良の細い材が変な方向に倒れ込んだりして、山はどんどん、荒れていたりもします。

数年前田舎に帰ったとき大変驚いたのが、それは春の頃でしたが、山の色がどうも明るいのです。黄緑、若緑、萌黄色。

山に広葉樹や照葉樹が、どうやら戻っているようなのです。笑う山は、重苦しい杉林の深緑色でなく、春の若い葉っぱのそれでした。

近隣の山を見る限りですが、何か特別なことをしたわけでなく、広葉樹・照葉樹はじわじわと植種である針葉樹を駆逐し、山をあるべき姿の山に戻そうとしているのかもしれないと、思いました。
最近特に強くなった陽射し、酷暑の夏も関係しているのかもしれません(田舎の山間部でも、暑いもんは暑い)。

子どもの頃当たり前にあった、山頂部限界まで植えられていた杉はやがて消え、山の森はまさに色を塗り替える。今はその、過渡期なのかもしれません。


今はどこも水田の稲、あと2ヶ月くらいでこのくらいになり、水も引きます


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