フロリダ・プロジェクト
2017年のA24作品。正式な日本語タイトルは『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』なんですがそんな…そんなウキウキした映画じゃないよ!
フロリダのディズニーワールドのすぐそばでその日暮らしのモーテル暮らしをする母娘が主人公。ディズニーワールドには学生時代に友人4人で1週間ほど行ったのですがもうほんとシュールな所でした。だだっ広いエリア全てがディズニーの土地で、普通のディズニーランドみたいなテーマパークが5〜6エリアぐらいあって、そのパーク同士も結構離れてるので何もない広大な土地をバスで10〜15分走った…気がします。アメリカの他の場所を何も見ないまま帰国したので今思えば頭のおかしい旅でした。泊まったホテルもディズニー直営で部屋のテレビで見られたのはディズニーチャンネルだけで、その頃まだスマホとかなかったからニュースも分からなくてもはや隔離でした。
この映画の舞台はそんなディズニーワールドのすぐ側で、オフィシャルのホテルを予約できなかったような観光客目当てでいかにも夢と魔法の国!って外観のモーテルやお土産屋さんが建ち並んでるエリア。もうこの街全体が映画の主役って言っていいぐらいのインパクトであり、テーマの一つである「格差社会」を物語ってるのが見事です。見た目はキャンディカラーのおもちゃの国みたいでもそこで生活しているのはその日暮らしの貧しい人々で、子供が遊ぶ場所のすぐ側に麻薬中毒者や犯罪者の溜まり場があったりとにかく治安が悪い。旅行者だったら「映える〜!」っつって写真バシャバシャ撮って楽しいだろうけどそこで生きている(今だけ、と思ってモーテルに住んでいてもずっとここで生きていくかもしれない)人々にとっては何の感情も起こらない、空虚な風景なんだろうか。
フロリダといえば最近ではやっぱりトランプのイメージも強いし、なんとなく勝手に明るいイメージがあるけどそんな単純ではないですよね。
母親のヘイリーは娘のムーニーに対していつも惜しみなく優しく、愛情に溢れた人なんだけどそれでも彼女を「いい母親」と言えるかというとすごく悩むところなんですよね。擁護してあげたいけどこのまま子供を養育できるのか?と考えると自信がない。ムーニーも良く言えば「天真爛漫」ってやつなんだけどわたしは正直「この子…猛獣じゃん!」って思ってしまった。いたずらが笑えない犯罪の域に達しちゃってるし。今は夏休み中って設定なんだけどこの子が学校行くとこ想像できないよ!優しく見守るモーテルの支配人(ウィレム・デフォー)の人間出来過ぎだろ…と、はっきり言って子どもが苦手なわたしには驚愕でした。
外観かわいい〜!けど話重い〜けど色彩きれい!みたいな波状攻撃がつらい作品で全然「真夏の魔法」なんかじゃない!って思うけどラストのあの何て言ったらいいかわからない、地獄の崖っぷちを飛び越えて疾走する爽快感は「魔法」と呼べなくもないのかも。
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