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ベター・コール・ソウル

『ブレイキング・バッド』に登場した弁護士ソウル・グッドマンを主人公に据え、2015年から放送されたスピンオフドラマシリーズ。
2022年8月に最終回を迎え、14年に渡る“アルバカーキ・サーガ〟が完結。

『ベター・コール・ソウル』(以下、BCS)については以前も書きましたが先週とうとう最終回を迎えました。
いやもう、最終シーズンに入ってから、いやその前からずっと、異様な緊張感を持ってこのドラマを観てきましたが本当にこれで最後なんだな〜〜という寂しさなど、いろんな感情がごちゃ混ぜになって未だに余韻を引きずっている、そんな感じです。

本当に『ブレイキング・バッド』(以下、BrBa)も含めると今後これ以上のドラマシリーズは生まれないんじゃないかと思うぐらい。
とはいえ、今週から『ゲーム・オブ・スローンズ』前日譚となる『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』が始まるのでどうなるか分かりませんが、少なくとも特殊効果で魅せるタイプの壮大なスペクタクルものを除いた、現実が舞台の人間ドラマという点で見るとBrBa&BCSの“アルバカーキ・サーガ〟は間違いなく映像作品の歴史に残る化け物シリーズでした。

最高の最終回を迎え、既にいろんなレビューが出ていますが、本当にもうなんて所まで連れてこられたんだ、という気持ちです。
それはBrBaに初登場したソウルが仕事帰りに覆面を被せられ、車に乗せられて気付けば荒野で目の前に墓穴が口を開けていた…まさにそんな感じ。
あの時ソウルが口にした「ラロに雇われたのか?」「あれはイグナシオがやったんだ!」というセリフを書いた時、一体どこまでBCSを想定していたのかしていなかったのか?
スピンオフといえば「こことあそこが繋がった!」とキャッキャ喜ぶのが楽しいものですが、このシリーズに関しては何かもっと心の奥に潜り込むような、敬虔とも呼べるぐらいの気持ちになるのです。
第1話からアクセル全開だったBrBaと比べるとBCSの出だしは異様なほどスローで、そのペースはずっと続く事になるのですがそれこそが生みの親ヴィンス・ギリガンの思惑で、じわじわとそのペースに乗せられてきてたんだな、とその演出の妙に唸ります。
何が、どこで、いつ選択を間違えて狂ってしまったのか?
常に急な坂道を転げ落ちるようだったBrBaに対して、BCSは気づかないぐらいの下り坂をぐねぐねと曲がりながら、上がったと思っていたら少しずつ下っていた…というような迷路のような道のりでした。

ストーリー構成、撮影、演出…何を挙げてもまるでヒッチコック映画のように「教科書」とも呼べるほどの高みにまで登っていたと思います。
そして何より長く見てきた登場人物たちの人生と決断に感動する。
ドラマとして一番泥臭い、けど一番大事な部分がしっかりある。
なので、BCSの最終回感想を言葉にすると陳腐な言い方しかできなくなってしまう。
BrBaとBCSは共に麻薬ビジネスという犯罪で身を持ち崩す男の物語で、BCS最終シーズンには何度もソウルがBrBa主人公であるウォルターに見える瞬間があります。
けどやっぱり2人は違う人間なんだって事を最後の最後に、けど決して急がずに描いた最終話。
最大の違いはなんといってもソウルにはキムという最高の存在がいたって事に尽きますね。
BCSはラブストーリーとして本当にめちゃくちゃ素敵な作品だった。
2時間で終わる映画だとラブストーリーや夫婦ものは別れる話の方が断然名作が多いしわたしも大好物なのですが、この2人の別れは(分かっていたにしろ)めちゃくちゃ悲しかったです。
9月に発表されるエミー賞で作品賞はもちろんなんですが、個人的にはそれよりもキム役のレイ・シーホーンの受賞を望んでます。
あまり「これを観ていないなんて…」みたいな事を言うのは好きじゃないけど、BCSを観ていないとおそらくこの素晴らしい俳優をみんな知らないと思うから彼女の事だけでも知ってくれ…!!という気持ち。
これだけ書いても全然足りないんですが、この素晴らしい作品を世に出してくれてありがとうスタッフ&キャストのみなさん!!という気持ちでいっぱいです。

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