郷土史を知って過去からの連続性を想像してみよう

都市は常に姿を変えていて、建物だけではなくそこに住む人や働く人も変わります。にもかかわらず地域ごとに一定の雰囲気が保たれるのは、用途地域をはじめとした都市計画が定められていることが大きいのでしょう。
そのおかげで、例えば低層住宅地に高層ビルが建つことはありません。

東京23区やその近郊に代々住んでいる人でも、同じ土地に住み続けている人となると少数です。そういう人でも、多くは昭和に入ってから家を構えた
のではないでしょうか。現在の山手線から西側に移り住んだ人が増えたのは、関東大震災の影響が大きいそうですから。

人は同じ場所にある期間住み続ければ、当然その地域に対する愛着が生まれます。
昔の人達はどんな暮らしをしていたんだろう、と思うこともあるのではないでしょうか。
地域にはたいてい神社や寺が存在して、古くからの雰囲気を残しています。
また地域には名家が存在することも多く、お屋敷が残っていることも少なくありません。
その子孫と思われる人も少なからずいて、学校が一緒だったり日常で関わったりすることもあるでしょう。

私も生まれてから東京西部を点々としましたが、高校生くらいの時から自分が育った一円の郷土史に興味を持ち始めました。
例えば鉄道特に地下鉄は次々と新線が開通しましたが、その一方で既存の路線では支線や引き込み線がどんどん廃止されました。

それはそこにあった工場や施設が、時代の移り変わりで無くなったり、輸送手段が自動車に移ったことが理由ですが、廃線は何となく悲しい出来事じゃないですか。
その経緯を調べていくと、昔の暮らしや時代というものに想像が広がったのです。

戦時中の多摩地区は農村であったのと同時に、軍事工場も少なくありませんでした。子供の頃、友人のおばあちゃんに農家に野菜の買い出しに行ったら爆弾を落とされた話を聞いたことがあったのですが、当時はそんなことは全然知らず「なんで?」と思った覚えがあります。

もっと古い話になると、都内にも古戦場なるものも存在します。
例えば室町時代には、江古田・沼袋の戦いと呼ばれる太田道灌と豊島氏の戦いがありました。
戦いの経緯を見ると、現在でも存在する寺などが出てくるんですよね。
武具や馬の骨が沢山出土した場所もあるそうです。それが同級生の家の近所だったことも。そうなると歴史が一挙に身近な出来事になります。

また更に昔の話をすると、名前は無いものの小山状の古墳だったと思われる場所は都内のあちこちにあります。日本史ではその時々の超有力者のことしか習いませんから忘れがちですが、どこにだって地域の有力者はいた訳です。

もし郷土史に興味が湧いたら、手始めに市区町村にある歴史民族資料館に行くといいでしょう。地域にもよりますがそこで出土した縄文時代の土器や石器などを始めとして、様々な展示物によって近代までの歴史を知ることができます。
またそこでは沢山の書籍を販売しているので、購入してじっくり読むのも楽しいです。

最近のマイブームは、明治以降の古地図を眺めていると、こんな場所にこんな施設や工場・学校があったのかと発見することです。多くは現在は場所を変えて存在はせず無くなってしまったものも多いのですが、ネットで検索すると何だったのかが分かることもあって好奇心が満たされます。

また日本中に郷土史好きの人や研究家が存在し、サイトを開設してくれているので地元の思わぬ話を知ることもあります。

思うのですが、現在の街並みもデジカメでいいですから、ぜったい写真に撮っておくべきです。失われた風景は二度と戻りません。のちのちその風景を知りたがる人が必ず現れます。

郷土史は単なる昔話ではありません。過去からの連続で自分の今があります。たまには想像の翼を広げてみませんか。

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