読書感想文『奇面館の殺人』

綾辻行人の館シリーズ、全10作予定のうち9作目。10作目はまだ出ていないらしいので、現時点での最新作のようだ。

鹿谷門実が最初から最後まで大活躍で、私としては大満足。
作者のあとがきによると、鹿谷門実(島田潔)が視点人物の1人になるのは本作がはじめてらしい。
言われてみれば確かに、今までは河南など周りの人物の視点から、変わり者として描かれるケースばかりだった。
鹿谷の視点に立ってみると、意外とマトモな人という印象を持った。あまりにも普通でない経験をしすぎているだけで。

ミステリーの部分に関しては、
殺人が起きた時点で容疑者(館に招かれた人々)が皆同い年、背格好も近く、さらに鍵付きの仮面をかぶらされていて外せないという、設定としてはかなり奇抜というか、普通はありえない状況。
“同一性”がひとつのテーマとなっている。

犯人については、ものすごい意外性はない。(ただ、早い段階で目星をつけることは私はできなかった。気づけた人もいると思う)
皆を集め鹿谷が順を追って説明する場面になって、ああ、あの人かもなぁとわかってくる感じ。
推理→解決の流れが綺麗で心地よい。謎が解けて行く感じ、これこれ、この感覚が好きなんだよ〜と言いたくなる。

ただ、最後まで伏せられていた「ある点」について、私は全然気づけなかったし、驚かされた。
よく考えれば分かることなのに…作中の鹿谷の言葉を借りれば「忸怩たる思い」である。

これは若干ネタバレになるけれども、物語の最初に館の間取り図はあったのに、登場人物の一覧がなかった。館シリーズには必ずついているのに何でだろう、きっとこれも重要なポイントなんだろうな、とは思ったのだ。
なのになぜ最後まで気づけなかったのか…先が気になっても、一度立ち止まって思考することが大事だとわかっていたのに。
考えうる選択肢を全て検討してみるべきだった(やりすぎ?)。

ただ、作者があとがきで次のように述べているので、そんなに自分を追い込む必要もないのかも。

そんなわけなので、読者の皆様にはぜひ、なるべく気楽に(軽やかに)この作品を楽しんでいただきたいと願っている。

次に読む本だが、館シリーズも(今出ている分は)読み終わったので、ビジネス系をもう一冊くらい読みたいと思っている。

それと、綾辻行人×佐々木倫子がタッグを組んだ『月舘の殺人』の存在をあとがきで初めて知った。
佐々木倫子先生の漫画が大好きなので、これはぜひ読んでみたいと思う。佐々木倫子先生のシュールな笑いはミステリーでも健在なのか気になるところ。

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