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開発者が語る「クーリングシェルター、クールシェアスポット情報の提供はじめました」

こんにちは、co-yarn と taito です。
2人とも地点検索システムの研究開発を担当しています。

今回は、 2024年8月2日 にプレスリリースを出した「クーリングシェルター、クールシェアスポット情報の整備提供」について、提供までの流れや技術の話、担当者の思いも込めつつお話します。


どうしてクーリングシェルター、クールシェアスポット情報を提供しようと思ったのか?

ナビタイムジャパンでは「安心安全な移動の実現」は社内でも大きな目標として掲げられています。実際、社内でも各チームが知恵と技術を総動員させて、様々な機能を提供しています。

そのため、私たち地点検索システムの研究開発チームもその目標にどのように貢献できるかを検討していました。

では、どのようなときに、移動時に課題や不安を感じるだろうかと考えたときに、様々な案の中で「猛暑」というキーワードが出てきました。

それをきっかけに、私たちは猛暑に関するニュースをかき集めるようになり内容を注視するようになったのですが「暑い日には外出を避け、クーラーを点けて、給水しましょう」ということ以上の対策が出ていないことに気が付きました。

しかし、どんなに暑い日でも仕事や何らかの用事で外に出なければならない方も多く、そのような方に対してのサポートが不十分なのではないか?と思うようになりました。

そんなこともあり、ナビタイムジャパンとしてどのようなことができるだろうかと検討していたところ、環境省より公示された気候変動適応法の改正に関連して、熱中症特別警戒情報(熱中症特別警戒アラート)の新設と「クーリングシェルター、クールシェアスポット」の整備が進められていることを知ったため、地点検索システムにこれを組み込もうと企画しました。

「クーリングシェルター、クールシェアスポット」の詳細については、以下のページをご覧ください。

実現までに

企画をした後チームで戦略を練り、大まかに以下の3ステップを踏むことで実現することができることがわかりました。

クーリングシェルター、クールスポットデータ提供の戦略
  1. データを集める

  2. ナビタイムジャパンが保有する地点データと紐づける

  3. ナビタイムジャパンのサービスを通して、機能提供する

リリース後に改めて振り返ると、このプランを実現可能にしたのは以下3つが大きな要因と考えています。

  • もともと地点データを大量に保有していて、そこに紐づければ提供できる仕組みが整っていたこと

  • データを集め、処理するノウハウを地点検索チームが持っていたこと

  • 機能提供の部分まで、社内で完結したこと

どれも ナビタイムジャパンの強みが出ていると感じたため、この3つの要因を軸にお話していきます。

もともと地点データを大量に保有していて、そこに紐づければ提供できる仕組みが整っていたこと

ナビタイムジャパンでは、すでに大量の地点データを様々な手段で収集しデータ化しています。このデータを活用してサービスが作られているため、このデータに対してクーリングシェルター、クールシェアスポットの情報を付与するだけで活用するようになっています。

昨年度の取り組みですが、「給水スタンド」のデータを提供する際にもこの仕組みを活用しています。

今回の対応のために、地点データの形式や提供方法諸々を1から仕組みを組むことになってしまうと、到底提供まではこぎつけなかったと思います。

ナビタイムジャパンの地点データと紐づける

実は地点データの紐づけ作業がとても大変でした。

紐づける作業の例

紐づけると言っても、元のデータソースが違うため、地点名称や住所の表現がそれぞれ違いが出ていました。さらに、今回は市区町村ごとに発表されているデータを処理しているため、その市区町村ごとにデータの特色が違いました。

人間の目で全部の行をみて紐付け作業を行うとなると、作業が終わる前に夏が終わってしまいそうだったため、今回はマッチング作業をある程度機械的に行うことにしました。ここで活きたのが検索チームが持っているデータ処理・検索技術でした。

地点名称や住所データの検索は、ナビゲーションにはなくてはならないシステムということもあって、昔からナビタイムジャパンで磨いてきた技術でした。最近では以下のようなプレスも出しています。

この技術のお陰で、ある程度ゆらぎがあるデータセットだとしても、地点名と住所さえあれば、8割弱のデータを自動的に紐づけることができました。その結果、その他必要な作業も諸々自動化することで、当初手作業で行う場合に立てていた見積もりの約1/40 の手作業で紐付けを実現することができました。

今回いい機会だったので、マッチング作業のシステム化も行い、更にもともと持っていた技術にプラスして生成 AI の活用も検討してみましたが、これも効果が見込めそうなため今後のシステム改善に組み込もうと考えています。このように、似たような案件にすぐ対応ができる状況が整いつつあります。

ちなみに、自動で紐づかなかったデータは、私たち含めチームのみんなで頑張って手作業で紐付けました。

機能提供の部分まで、社内で完結したこと

私たちは地点検索システムチームであり、『NAVITIME』 や 『movoco』 といったアプリ開発を直接担っているわけでは有りません。そのため、サービス開発を担っているチームに本企画を説明したところ、快く賛同していただくことができました。

このようにナビタイムジャパンでは、普段は裏側のシステムを開発している私たちからも企画提案が積極的に行われています。 このような風土も実現を後押ししてくれていると思います。

更に、データの収集や整備から始めたことで、なかなか不安定なスケジュールで進めることになってしまいました。そのような状態でも、アプリ開発担当の皆さんにもフレキシブルに動いていただくことで、どうにか対応できました。

このような動きも、 社内で案件が完結していたからこそできたのではないかなと感じました。


このように、地点データがすでにあること、地点を扱う技術があったこと、社内で案件が完結していることのナビタイムジャパンの3つの強みがあったからこそ実現できた案件だと感じています。

終わりに

以上が今回の「クーリングシェルター、クールシェアスポット情報の提供」の担当者談となります。

暦上ではもう秋ということですが、まだこれからも暑い時期は続きます。もし本noteやアプリで初めて「クーリングシェルター、クールシェアスポット」自体について初めて知ったという方は、ぜひ外に出る際には本機能を活用いただいて元気に夏を過ごしていただければと思います。もし身の回りの熱中症に弱い方がいらっしゃれば、「このような場所がある」だけでも広めてもらえたらなと思います。

また、今回、可能な限り対応をしましたが、それでも対応地域が限定的になっています。もしお住まいの地域・移動先の地域が未対応であった場合は、各市区町村が出している公式の情報をお求めください。

これからもナビタイムジャパンの地点検索チームとして、安心安全な移動の実現や、ワクワクするような新しい地点検索技術開発を頑張っていこうと思います。なにか新しい提案ができた際にまた noteで発信しようと思います!