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オンデマンドバスを経路探索できるようにした話

こんにちは、とっきーです。ナビタイムジャパンの研究開発部門で、バスデータの運用や改善に取り組んでいます。

オンデマンドバスとは


オンデマンドバスとは、通常の路線バスとは異なり、移動の需要に合わせてフレキシブルに走行するバスのことです。
一言でオンデマンドバスと言ってもいくつかの種類に分けられます。

オンデマンドバスの種類 「地域公共交通と連携した包括的な生活保障のしくみづくりに関する研究」(https://www.iatss.or.jp/common/pdf/research/h2298.pdf)をもとに作成
オンデマンドバスの種類 「地域公共交通と連携した包括的な生活保障のしくみづくりに関する研究」(https://www.iatss.or.jp/common/pdf/research/h2298.pdf)をもとに作成


地域住民の足として使われたり、観光の促進のために使われたり。
最近では都心部でも交通空白地帯を埋めるために走っていることがあり使い方によってはとても便利です。

当社での導入事例


これまで当社で導入していたバスはほぼ定時定路線の路線バスに限られていました。
「路線固定型」「迂回型」のオンデマンドバスは「予約制」と注記する形で導入している例もあります。

現在『my route』で提供しているオンデマンドバス「のるーと」のデータは当社で作成しています。これは「ダイナミック型」に分類されます。
my routeは、公共交通、自動車、自転車、徒歩など、様々な移動手段を組み合わせてルートを検索し、必要に応じて予約・決済までを行うことで、移動をサポートするサービスです(https://corporate.navitime.co.jp/topics/pr/201907/18_4835.html)。

のるーとの紹介記事を過去に掲載していますので、興味のある方はご一読ください。


データ作成にあたって


通常の路線バスは乗客がいようがいまいが、決まった時間に走っている公共交通機関です。
この場合、通過する停留所と時刻があらかじめ決まっているためダイヤ改正がなければ一度データを作ってしまえばそのままで問題ありません。
しかし、予約があるときのみ走る形態のオンデマンドバスの場合、リアルタイムで状況が変わるため現状の仕組みでは事前のデータ作成が難しいことが予想されました。


「仮想停留所」の導入

今回、「ダイナミック型」のオンデマンドバスを導入するにあたり、「仮想停留所」という概念を作りました。実は、完全に好きな場所で乗り降りできるわけではなく、あらかじめ決められたスポットでの乗降となるため、そのスポットをあらかじめ作っておき、その間を総当たりで路線として作成しました。この仕組みでは仮想停留所の数の二乗に比例して路線数が増えるためデータ量、経路探索時のパフォーマンスに不安がありましたが、経路探索エンジンを開発しているメンバーに確認いただいたところ、1000近いスポットがあっても問題のないことが分かりました。

苦労した点① ~Excelの最大列数オーバー~

苦労した点としては、データ作成時作業の一部を路線バスデータ作成手順を踏襲したため、Excelを利用する手順になっていました。路線数がスポット数の二乗に比例するため、スポット数が多いと最大列数(16384列)をオーバーすることがありました。ここは手動編集をしなくて済むように、スポットのリストを入力にして路線情報を自動で出力できるようにしました。

苦労した点② ~路線再編時の対応~

通常の路線バスではダイヤ改正にあたる路線やスポットの再編が発生した際の対応にも苦労しました。
路線バスの場合、時刻情報が紐づいた便の情報があるため、この便は〇〇日まで運行、この便は△△日から運行、といったように世代の管理をする仕組みがありました。
しかし、オンデマンドバスの場合、便の情報がないため、この仕組みを使うことができません。
そこで、路線単位で運行日の設定ができるような仕組みを作りました。例えば新しく乗降可能なスポットが10/1から増えるとします。既存のスポットと新しいスポットを結ぶ路線を作成し、これらの路線の運行日を10/1以降と設定することで改正日より前では新しいスポットで乗降する経路が出ないように制御しました。

新たにスポットが増えた際のイメージ

今後の展望


スポット間の所要時間は、実際に車で走行した際の所要時間をベースにあらかじめ作成しているため、実際の配車・走行時間とは異なる可能性があります。配車システムとの連携にリアルタイムなデータを利用してより正確にお届けできるように改善ができればと思っています。


実際にオンデマンドバスに乗ってみた


実際に千葉県で実証実験をしている「ダイナミック型」のオンデマンドバスを利用したことがあります。路線バスの空白地帯で移動しづらい区間を非常にスムーズに移動でき、ほとんどタクシーを利用しているかのような快適な移動体験ができました。
交通状況によって到着予想時間が前後することもありますが、これは定時定路線のバスでも同様のためあまり問題には感じませんでした。

偶然、オンデマンドバスの乗降ポイントを発見


アプリを入れて乗ってみました

さいごに


そもそもオンデマンドバスは移動手段として認知されていないことも多く、移動の選択肢の一つとして幅広く利用されるポテンシャルを秘めています。経路探索結果にオンデマンドバスが出ることでその一助になれると嬉しいです。
ぜひお住まいの地域やおでかけ先でオンデマンドバスを見かけたら利用してみてください。