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Jira を オンプレミス版からクラウド版に移行してみた

この記事は、NAVITIME JAPAN Advent Calendar 2020の 21日目の記事です。

こんにちは。ももたけです。ナビタイムジャパンで Jira や Confluence などのAtlassian製品の管理を担当しています。

2020年10月に Atlassian からオンプレミス型ライセンスの提供について発表がありました。たくさんの情報がありましたが、特にインパクトが大きかった情報は下記の2点です。

 - 2021年2月に新規サーバーライセンスの販売終了、サーバー製品価格の改定
 - 2024年2月にすべてのサーバー製品サポートの提供終了

弊社では2020年4月から移行準備をしてきたため、2020年中に移行が完了する見込みです。

Atlassianの記事をみてクラウド移行を検討されている方に向けて、私達がサーバー版からクラウド版に移行する過程で培った知見が参考になればと思い書いていこうと思います。

移行するメリットが気になる方

弊社がクラウド移行する中でメリットに感じたのは下記の点です。

- Upgrade
- Slack連携
- Automation
- Workflow
- ベータ機能

Upgrade

サーバー版を長い期間利用してきましたが、バージョンをアップグレードするタイミングの調整はとても大変でした。500人を超える社員が利用しているため、「平日まるごと稼働を止めることができない」「アプリ(拡張機能)の動作を止めることができない」「しばらくアップデート出来ていなかったため、予告なしでいきなり画面構成が大きく変わるかも」など様々なことを考慮してアップデートする必要があります。クラウド版であれば、事前に変更される点は画面にアナウンスされますし、夜間の誰も使っていない時間帯にアップデートされるため、休日出勤でアップデート対応をしないといけないということもないです。ありがたいですね!

Slack連携

弊社ではSlackを利用しているため、社内からは issue が作成された場合にSlack通知をしてほしいという依頼が度々上がっておりました。

 - Slack App の Jira Server Alerts と Jira の Webhookを利用した通知
 - Jiraアプリの「Issue Templates for Jira」 と 社内開発のAPIを利用した通知

などで対応してきましたが、「Slack上で issue をクローズしたい」「Slackから issue を作成したい」「コメントしたい」などの要望には応えられていませんでした。

Jira Cloudでは、Jira と Slack をリンクさせることによって出来ることが増えてます。詳しい話は今回は省略しますが、上の要望は解決できています!

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Automation

NAVITIME JAPAN Advent Calendar 2020の16日目の記事で取り上げておりますが、Jiraで出来ることが大きく増えました。(更に、管理者でなくてもプロジェクトで設定ができるため、管理者に頼まないといけないなどのコストも省略できます)

自由度がかなり高く、多くの改善が見込めそうなのでこれから使いこなしていきたいと思います。

ちょっと気になる点ですが、2020年12月現在、Export した設定を import できるのが管理者のみのため設定のGit管理などはできなそうです。

Workflow

Slack通知に続き、社内から度々要望があるのが、「Jiraで申請フローを作成したい」「クローズのタイミングでは必ず対応完了日を入力してほしい」などのWorkflowについての要望です。

これまで「JSU Automation Suite for Jira Workflows」などいくつかのアプリをためしながら、カイゼンしてきましたが、Cloud版ではデフォルトで上記の機能が追加されていそうでした。

Cloud移行後に作成した Workflow の一例を挙げさせていただくと、issueを作る人が作成時に「課長」「部長」のような責任者の名前を入力してもらい、Workflowの「課長承認」や「部長承認」トランジションが発生したときに、自動的に担当者が「課長」や「部長」に変更されるというものです。

プロジェクト内の issue管理 だけではなく、依頼や申請などをJiraで扱う場合は非常に便利ですね。

ベータ機能

ベータ機能の中には、社内で評判がよいものがありました。代表的なものは「ロードマップ機能」です。弊社では、セキュリティの問題で次世代プロジェクトは利用できていないのですが、クラシックプロジェクト(従来のサーバー版のプロジェクトとほぼ同等)にも「ロードマップ機能」がベータで追加されてます!

Epic issueの単位で「一週間」「一ヶ月」「四半期」などで可視化することができ、これまでカンバンボードでの可視化が有力だったのですが、新しい選択肢が生まれました。

マネージャーやリーダーの方は、プロジェクトの進捗などを管理しやすくなる機能でとても嬉しいものでした!現状だとEpicに紐づくチケットの期限は可視化できないため、そのあたりをアップデートしてもらえればと密かに期待しています。

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メリットはわかったけど、移行って大変?って思っている方

Migration Tool

Jira や Confluence には 同社が開発している Migration Tool があります。そちらを使えばある程度自動で移行が可能です。基本的に殆どの項目は上記ツールで移行可能になりますが、「個人で設定したフィルタ」「一部のカスタムフィールド」「アジャイル系の設定」など現在のところ対応していない項目がいくつかあるため注意が必要です。。

またスキームの設定などがサーバー版とクラウド版で異なっている場合はエラーになります。(最悪の場合はチケットの◯%だけが移行されていて、残りはCSVエクスポートなどでないと移行できないなどの状況になります)

このため弊社で移行期間中に気をつけたことがあります。

移行期間中

大規模で運用しているJiraをクラウド移行する場合は、どうしても一括で移行というのが難しいかなと思います。Migration Toolがエラーになったり想定以上の時間がかかったりなど、一括移行を難しくする要素はいくつかあります。参考までにチケット数が5万、添付ファイルが15GBのプロジェクトの移行には11時間がかかりました。このため弊社では移行期間を3ヶ月設け、各プロジェクトごとに日付を調整し移行を行いました。

順調に進みそうだったのですが、いくつか問題が発生してしまいました。

❶移行後に画面やワークフローの変更をしたい場合はどうするか
❷どこのプロジェクトが移行済みかわからない
❸社内問い合わせが思った以上に多い

移行期間中に発生した問題への対応

❶ 移行後に画面やワークフローの変更をしたい場合はどうするか

移行期間を設けて長期的にクラウド移行を実施した結果、新環境で設定変更したいプロジェクトからの設定変更をしたい連絡がありました。しかしMigration Toolでは、

またスキームの設定などがサーバー版とクラウド版で異なっている場合はエラーになります。

の状況が発生する可能性があります。

Jiraの設定の「スキーム」という仕様上、複数のPJが同じ「スキーム」を利用していて、そのすべてが移行しきる前に変更を行うと、今後移行するPJの整合性が取れなくなります。できるだけ移行された設定について変更を加えたくない事情がありました。

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このため、クラウド版に移行したプロジェクトはすべて既存の設定のコピーを割り当てることで、既存の設定は絶対に変更しないようにしました。

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❷ どこのプロジェクトが移行済みかわからない

これまで他のプロジェクトに依頼をする場合はJiraで課題管理をしており、移行が各プロジェクトでバラバラに行われた結果、依頼をどこから行えばよいか不明確になってしまう問題がありました。

ここで出番になったのが、設定の「プロジェクト名」と「権限スキーム」です。プロジェクト名は【移行済み】というプレフィックスをつけて、権限スキームをプロジェクト内外関係なく参照のみに変更しました。

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❸ 社内問い合わせが思った以上に多い

移行当初は「今週は各担当者で3件のプロジェクトを移行しよう!」とやっていたのですが、早速問題が発生しました。問い合わせが多いことです。「ある項目が移行されていない」「この設定はどうすればよいか」という問い合わせが1日数件届きます。

このためサポート専任のチームを作成しました。サポート専任チームはMigration Toolがサポートしていない項目などの移行を行う、内製Toolを作成する時間が取れるため、よりユーザーが満足できる移行のサポートが可能になります。

ちょっと気になるところ

UIの変更

サーバー版からクラウド版に移行するにあたって、画面のレイアウトがガラリと代わりました。

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カスタムフィールドが右に移動・まとめられたり、フォルダになっていたりなど、一目では分からなくなってしまったのでまだまだ慣れが必要そうです・・・!

プラグインについて

内部のAPIが大きく変わっているのか、同じプラグインを利用していたとしても使い方が異なっているものがありました。※「Issue Templates for Jira」など

そもそも対応していないプラグインなども多数あったため、今後に期待したいです!

まとめ

Jiraをクラウド版に移行して、新機能がバージョンアップ対応無しに入ったり、Slack連携が圧倒的に便利になったため良いところがたくさんありました。本記事のメリットとハマりポイントを参考に、みなさんのクラウド移行の助けになりますと幸いです。