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【詩集】The Letter

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#詩

To Vodka

秋 途絶えた日記帳の 白いページの中から 突如 神の化身の如き数頭の馬たちが駆け出して ぼく…

The Basement Texts
9か月前
4

エデンの夏

水しぶきや歓声がそこら中でしていたのに 鉛色の雲に雷鳴が響くと  ぼくらは二人きりになった…

The Basement Texts
10か月前
2

Ground

月光の海の その無音の群青に いつまでも身を浸していると 魂はいつしか 降り注ぐ光の矢から …

3

Skypeを待つあいだ

Skypeを待つあいだ 火山が噴火した 遠い国にいる君も この国にいる僕も その音を聞かなかった …

3

五月の詩~To EL

何が 春に終わりを告げたのかは 誰も知らない ただ 初夏の風が 手紙のように届けられ    …

4

Just passing trough~to Hans Coper

古代美術に触れ その作者にまで想いを馳せる人は稀だ まるで宇宙の創生から すでにそこに在っ…

2

手、あるいは静止した惑星 to Lucie Rie

轆轤(ろくろ)を楽器にして 独自のフォルムを奏で続けた手 <いや、違う アルビオン・ミューズの 自宅兼工房のキッチンで ケーキとコーヒーを準備する 老女のありふれた手 > 轆轤の回転は 惑星の自転に似ている その時 作品を仕上げる彼女の手は 創世記の神の それに似ている <鉢や花器の形をした無数の星々> 伝統とは拒否するものではなく 服従するものでもない それは生活の道具の中に 常に新しく在るべきもの 敬愛した物理学者への オマージュである造形と 元素記号による暗号化

花とカメラ T.Sに

美しいものを見るためには 身をかがめねばならない フンコロガシのフォルムに見惚れた アンリ…

12

 市街地の真ん中の  発掘現場に  古い溝が出てきた  大人の背丈より  深く  飛び越えら…

3

野鳥観測

空のミュージアムから 落ちてくる笛の音(ね) あの羽根の色を模写したい  そのノートから 同じ…

9

おやすみ

おやすみは“お休み” 目覚めていると結局 心は忙しく働いてしまうから 夜  自分の居場所は…

1

蛍火

焚火のあとの灰の中の 熱い蛍火に 風をはらませ 今一度 燃え上がらせてみようと してみたりし…

7

宇宙の輪郭

霧煙る 広角の黄色い荒野に 老いた精霊が少年を誘う 迎え火の日に それは生のありふれた暗い空…

6

火神(ひぬかん) 

to Shokichi Kina 三号炉からはまだ白煙が昇っている 線量計の数値もまた上がるだろう 避難区域からさらに南に20㎞ 届かないSOSが風に舞い 公園を避ける母親達の足元で また 影は黒く光るだろう 壊れたラーメン屋 垂れ下がる電線と 流れ着いた車の山よ 道に倒れた地蔵を 誰が 抱き起こすのか 犬、鳥、男 そして 海のあらゆる魚たち 猫、花、女 そして 森のあらゆる蝶たち その 被爆した傷を 一体 誰が 癒すのか 投げられた見えない毒の投網は 同心円状に