見出し画像

今日の短答 民法 占有の移転



第1 問題

ア Aがその所有する絵画甲をBに預けたままCに売却した場合において、AがBに対して以後Cのために甲を占有することを命じ、Bがこれを承諾したとき、Cは、甲の所有権の取得を第三者に対抗することができる。

イ Aからその所有する絵画甲を預かり占有していたBが、Aから甲を購入した場合、占有をBに移転する旨の意思表示がAB間でされたときは、Bは、甲の所有権の取得を第三者に対抗することができる。

ウ Aは、その所有する絵画甲をBに売却したが、甲の占有を継続し、以後Bのために占有する意思を表示した。その後、AはBへの売却の事実を知っているCに甲を売却し、現実に引き渡した。この場合、Cは、甲の所有権の取得をBに対抗することができる。

第2 解答

ア ×
第百八十四条 代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。
本問の場合、「Bがこれを承諾」ではなく、「Cがこれを承諾」したときにCが占有を取得します。

イ ○
第百八十二条 占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。
 譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる
第百八十三条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。
第百七十八条 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

ウ ×

Cは、処分権原を有しないBから甲の譲渡を受けているため、所有権を取得するには即時取得の要件を満たす必要があります。しかし、Cは「AはBへの売却の事実を知っている」、つまり、「善意」と言えず、即時取得の要件が充足されません。

第百九十二条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

第3 補足

「引渡し」:動産物権の譲渡人が譲受人に対して、譲渡原因に基づいて、目的物の占有権を取得させること。現実の引渡しや占有改定など4つの種類が法定されている。
・簡易の引渡しと占有改定の違い
 前者は、先に誰かのために占有していて後からその所有権を取得した人が自身の占有に切り替えるとき。後者は所有者がその代理人を通して間接的に占有するとき。直接的な占有者と所有者とが後者の場合は異なることになります。占有改定によって、所有者は占有代理人を通して間接占有をすることになります。

即時取得の「善意」とは、前主が処分権原を有していると信じていたことをいいます。即時取得や表見代理での善意は半信半疑を含まず積極的な信頼を必要とする点で、通常の善意(94条2項など)より狭いものとなっています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?