ウユニ-18

ウユニ塩湖紀行⑤

ウユニ塩湖に入って、40分程走ると大きなモニュメントが見えてくる。世界で最も過酷なモータースポーツ競技と言われているダカールラリーが開催される時に使われているものだ。広いウユニ塩湖で目印になりそうなものはこのモニュメントしかなく、ここで1ヶ月後に待ち合わせることにしていた。ドライバーに絶対忘れずに迎えに来てくれるようにお願いすると、笑いながら大丈夫だよと答えた。少し不安になりながらも荷物を全ておろすとチャーター車は早々に村に戻っていった。

このモニュメントがある場所には小さな塩でできた建物がある。そこはかつてのホステルとして使われていたが、今は観光客用のトイレになっている。決して清潔とは言えないが、塩湖の中で唯一のトイレがあるここにはこのシーズン毎日のように観光客が訪れて小休憩をしている。人が多くいるこの周辺では自分の望むような撮影はできないと事前に考えていたので、ここから10キロほど離れた場所にテントを張ることにしていた。

立つのもやっとなほどに重いバックパックを背負い、まずはキャンプ地を探す。と言ってもここには西も東も南も北もなく、どっちに向かって歩いても全く同じ風景になる。どうしようか考えた結果、村とは逆方向に進むことにした。大した意味はないが、少しでも村から離れ、人の気配のない場所で撮影したいと思ったのだ。

バックパックとカメラバックをかつぎ、登山用のストックを使いながらウユニ塩湖を歩く姿はかなり奇妙に見えたかもしれないが、そんなことを気にしていられる状況ではなかった。キャンプ道具やカメラ機材を含んだバックは時間とともに肩にくい込み、数分歩いて少し休憩、また数分歩いて少し休憩としなければ耐えることができなかった。また、一面真っ白な世界では自分がどれだけ歩いたのか全くわからず、かなり歩いたと思ってもモニュメントがまだかなり大きく見えていた。

なんとか2時間ほど歩き、モニュメントが見えなくなった場所でテントを張ることにした。別にこの場所がいい景色だとか、水が溜まりやすいとかそんな理由は全くなく、単純に僕の体力が限界を迎えたというのが理由だった。

30分ほど休憩してコンパスだけを頼りに再度モニュメントに戻らなくてはいけなかった。最初の場所に置いてきている食料と水の量を考えるとあとまだまだ往復しなければいけない。それを思うと億劫な気持ちになってしまうが、滴る汗をぬぐいながら重い荷物を運ぶこの修行のような作業は不思議と苦痛ではなかった。

やっとはじまる、そんなことを考えながら一歩一歩、塩と期待を踏み締めながら歩いていた。


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