【Meetupレポ】Nature Bath vol.5電力業界のゲームチェンジャーに学ぶ。「クリーンエネルギーの未来と可能性」
第5回目となる今回のNature Bathは、デジタルグリッドコンソーシアム 代表理事の阿部力也さん、株式会社Looop 取締役電力事業本部長の小嶋祐輔さん、デジタルグリッド株式会社 代表取締役社長の豊田祐介さんをゲストに迎え、「クリーンエネルギーの未来と可能性」をテーマにディスカッションしました。彼らはなぜ電力領域で新たな事業に挑むのか、エネルギー/電力領域の今と未来に迫ります。
電力業界のゲームチェンジャーに学ぶ。「クリーンエネルギーの未来と可能性」
塩出:なぜ弊社が「電力」というテーマで話すのか疑問に思う方もいらっしゃると思いますので、ご説明をさせていただきます。弊社はIoTのスマートリモコンを開発販売しているイメージが強いと思いますが、「自然との共生をテクノロジーでドライブする」(2021年11月より「自然との共生をドライブする」に変更)をミッションに掲げ、IoTプロダクトでクリーンエネルギーへのシフトを加速させることをビジョンに事業を行っている会社です。
僕は元々総合商社の三井物産で電力領域の事業開発に携わっていました。その当時現場で感じた違和感から、電力をクリーンエネルギーだけでまかなえるような世界を作りたいと思い、Natureをスタートさせました。今まで電気の世界は、需要側は好きに動いて供給側を合わせていくという仕組みでしたが、IoTデバイスも普及し、様々な家電製品をインターネットに繋ぐことができる時代になりました。それをうまく活用して、電力の需要をコントロールすることができたら1年で数百時間しか使われていないような非効率な発電所をリプレイスし、効率がよくクリーンな仮想発電所をIoTで実現できるのではないか?そんな想いから、エアコンに繋がるIoTデバイスの開発をスタートしました。
まずはNature Remoでホームオートメーションに特化して、たくさんのエアコンをインターネットに繋ぐことに注力していますが、昨年の末から「Nature Remo E」という新しいデバイスの販売をスタートしました。これは、太陽光システムや蓄電池、スマートメーターと連携できるデバイスです。ゆくゆくは、これらのNature Remoシリーズをマイクログリッドオペレーターとして活用することで、仮想発電所の実現、その先には電力の個人間売買ができるようなプラットフォームを実現することを目指しています。
阿部先生:私は10年ほど”デジタルグリッド”という概念を発信していますが、今日のような会が開かれることで、それが少しずつ実ってきていると感じ嬉しく思います。ただ、ここで満足せずに「もうひと暴れするぞ!」ということで、今年の7月にDGキャピタルグループという会社を創設しました。
この10年間を振り返ると、2011年の福島原発事故を機に社団法人のデジタルグリッドコンソーシアムを立ち上げ、その後はWASSHAというアフリカの未電化地域で電力の量り売り事業を展開する会社を創業しました。また、デジタルグリッド関連会社創業し、現在は今回の登壇者であり私の研究室卒業生の豊田君が社長をしています。
そして、新しく創設したDGキャピタルグループでは、電力系統の非同期連系に取り組もうと考えています。将来配電網が自由化された際に、再エネ100%を目指す配電網を従来の系統に接続する為の機器を製造する会社、デジタル式発電機やモーターを作る会社、配電網を運営する会社、これら全体を海外で行うための会社があります。
そして、作った電気はコンソーシアム会員を通じてデジタルグリッド社のプラットフォームに売電するという仕組みにしました。
なかでも私が一番力を入れているのは、再エネ100%になっても基幹送電線に影響を与えず、連鎖停電していくことがないような仕組みを作ることです。分散型のネットワーク、いわゆるセルグリッドと呼ばれるもので、すべての配電系統が一体化するのではなくて、小さな細胞群の集まりが再生可能エネルギーで生き生きとする世界を創っていきたいと思っています。
小嶋さん:弊社は2011年に設立した会社で、「エネルギーフリー社会の実現」を目指し、再エネを使って電気代を無料にするというチャレンジと、その先にある発展した社会における新たな事業に取り組んでいます。現在の事業は、太陽光・風力発電所設置、自社発電所の建設・運営、電力小売り、家庭用太陽光・蓄電池の販売などを行っていて、これらを積み上げて再エネの比率を増やすことを目指しています。
昨今の活動では、発電所の立ち上げや、自治体や様々な企業と協働を通して事業を推進しています。また、ベンチャーマインドを忘れないために去年スタートアップワールドカップに出場し日本代表になりました。株主には中部電力さんやエネオスさんなどのエネルギー系のパートナー企業が入っています。
おかげさまで新電力として電力小売りの件数が25万件まで成長することができました。小売り事業の実績としては、新電力の低圧シェアランキングでは現在8番目です。これまでは5年間基本料金ゼロを打ち出していましたが、これからはより再エネを供給するプレイヤーとして事業成長を狙いたいと考え様々なメニューを展開しています。
Bloombergのアナリストレポートでは、日本の低圧供給シェアのトップ10社の中でエネマネ関連の機能を多く有することが評価されました。より機能を充実させていくことで、新電力の中での認知を高めていきたいと思っています。また、同レポートのなかでも弊社はmost active retailerとして選ばれています。積極的な取り組みを行っていることはぜひ知っていただきたいと思います。
豊田さん:弊社は、「エネルギーの民主化を通じて人類を豊かにする」ことをミッションに事業を行っています。2017年設立と比較的新しい会社ですが、阿部先生との出会いはもっと前に遡ります。それは僕が東京大学の学生の時に研究室を探していたら、阿部先生が「電気の世界に革命が起きる!革命の世界にようこそ!」と目を輝かせて仰っていて(笑)。おもしろいと思って修士まで勉強しました。ただ、学生時代には最後まで阿部先生の考える「デジタルグリッド」の全貌は掴めなかったんですね。
卒業後は外資系証券会社に入って太陽光発電に投資する仕事を4年半ほどやりました。その後、久しぶりにお会いした阿部先生は起業の準備をしていて、「いよいよその時が来たよ豊田君!一緒にやろう!」と誘っていただき、現在のデジタルグリッド株式会社の創業当時から共にやっています。会社としてやりたいことはエネルギーの民主化、つまり自由に電気を売買できるようにすることです。再エネで発電できる量は世界で消費されているエネルギー量の200倍近くあるということが理論上明らかになっています。それをどう活かすかを起業家になった視点で考えたときに、大学時代に阿部先生が言っていた「革命」が、そういうことだったのかと気がつきました。エネルギーの制約から離れて、自由に電力を使えて、かつ持続可能な世界を作りたいと思っています。
デジタルグリッドはソフトウェア技術を活用し、自由に電気を売買できるプラットフォームを作っています。デジタルグリッドプラットフォーム、DGPと名付けています。また、それだけでなくてハードウェア技術も活用し、プラットフォームを有機的に結び付けていくことも目指しています。今年の二月にこのデジタルグリッドプラットフォームを商用で稼働開始しました。このプラットフォームでは、電気の需要家側では、電力会社だけでなく再エネ発電所など様々なところから太陽光などの発電源や価格などを自由に選んで電気を買うことができます。発電家側では、直接需要家に電力を販売する方式を提供することで、FIT 再生可能エネルギーの固定価格買取制度終焉後も再生可能エネルギーの普及に貢献できます。こうした自由に電力売買できる場の提供を始めました。民間企業によるこうした自由な電力取引プラットフォームは日本で初めてのものだと自負しています。
「Talk session」ご質問にお答えします!
Q.エネルギーの民主化はいいですね。一方で旧一電に有利に思われる制度をどのように自分たちが有利な方向に変えていこうと思われているのですか。
阿部先生:有利というレベル感ではないと思いますね。先ほどの豊田君の話の通り、再エネは無尽蔵で、そして実際に政府も再エネを主力電源化しようと考えています。また、菅政権になり温室効果ガスを2050年に実質ゼロや、配電網も自由化も進むことを考えると、このマーケットの規模は巨大だと感じることができます。旧一電か民間かなどは関係なくあらゆる人が参入し、電力とそれに伴う産業も含めて巨大なものが生まれてくることが想定されます。そうなれば誰かがパイを取り合うというゲームにはならないと考えていますね。
小嶋さん:一電に有利不利と考える必要はなくて、再エネの主力化ということであれば、再エネをどう増やすか、そして顧客に再エネのサービスをどう打ち出すかが重要です。それを純粋に突き詰めていくことで制度も変わっていくので、まっとうに進めていけばいいと思います。
豊田さん:大人なお二人のご意見だなと思ったのですが(笑)。僕も有利不利はないと思いますが、当社のような小さいベンチャーだけでは世の中は変わらないとも思っています。その中で重要なのは、小嶋さんのように容量市場など新しいものが出てきたときに志を同じくした人を集めて国に対してアクションすることです。そこに旧一電かどうかは関係なく、同じ志を持ったメンバーであればいいと思いますね。
塩出:切り口は様々あると思いますが、弊社の場合は顧客を先に取りに行くという戦法を取っています。便利なIoT機器を家に取り入れて無視できないリソースにいつか到達すると、1MWだったら耳を貸さないところが、1GWなら話を聞いてくれるようになると思います。したがって自分たちができることを日々やっていくことがやっぱり大事ですよね。
Q.現時点でもしくは近々でデジタルグリッドの導入事例などはありますか?
豊田さん:いろんな導入事例がありますが、直近ですと10月30日にプレスリリースを発信したソニーさんが電気調達にデジタルグリッドを活用開始いただいた案件があります。SDGsなど持続可能な社会づくりへの重要性の認識によって、再生可能エネルギーへの意識が高い企業が直接、太陽光発電やバイオマス発電による電気を購入するということは実際に起こってきていて、技術的にもビジネス的にも大きく動き始めていると感じます。
Q.電力の地産地消が可能になりそうですがいかがでしょうか?
小嶋さん:電力の地産地消は、可能になってきていて実際に弊社でもプロジェクトとして取り組んでいます。よく地域新電力というキーワードが出ますが、現状の課題としては推進できる人が不在ということです。そこを解決できる人の流れや事業、補助、仕組みなどがあるともっと進むと思いますね。
Q.クリーンエネルギーの未来に向けて、具体的にどのような取り組みを行っているか?各社の展望とNatureに期待することを教えてください。
阿部先生:我々は、グリッドフォームという形で電力系統を自分たちで作るということを進めていて、スケジュール感としては二年以内にできてくる予定です。それを進めていく過程で、まずクラウドのプラットフォームが必要です。それはデジタルグリッドでもできますが、もう一つ重要なのはお客さんの中に入ることです。そこでNatureが必要だと思っています。そして配電網の運営はLooopにやってもらいたいですね。
小嶋さん:発電所に関しては10年で1GW、供給は三年で100万件を目指しています。また、再エネに対して「安い」や「良い」というポジティブなイメージを世の中に感じてもらえるようにしたいです。今後は、蓄電池や給湯器などをエネルギーマネジメントできるような機能を作ろうと思っていますが、Natureに期待することはやはり家の中です。外のハードはLooopで、中に関してはNatureと連携できると面白いと思います。
豊田さん:まずこの先は電気調達の常識を変えていきたいと思っています。価格だけでなく、”どこから調達しているか”への意識を高めることをお客様と一緒に実現しています。弊社デジタルグリッドとしてはまずは法人に再エネ利用にコミットしてもらう、要は、大量に電気を使う法人が再エネを使うことを起点にすることで、再エネの発電所が増えると考え、それを動かす仕組みを提供しています。
Natureさんは家庭向けで、僕たちは企業向けに、もう少しごつい仕組みやシステムを売っているのでターゲットは異なります。それゆえに互いに協力して面白いことができるのではないかと思っています。それぞれのプラットフォームと有機的に連携してプラットフォーム同士で電力需給を管理できるような協力ができたらいいですね。
塩出:弊社も最終的には電力の再エネシフトを目指しています。具体的にはRemo Eを昨年末に発売しており、それらを組み合わせて、需要側を制御するだけでなく、供給側の状況に合わせて需要側もシームレスに動かすといったものが必要になってくると思っています。そういった太陽光も含めた統合システムを作ることができればNatureとして新しい世界観を提供できると考えています。
阿部先生:このメンバーは風雲児になるね!
どんどん業界を盛り上げて行きましょう!!
おわりに
いかがでしたか。各社ともに人材を積極採用中です!
ぜひ、Natureに興味を持っていただいた方はお気軽にご応募ください。
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また、年内は毎週Meetupを開催予定ですので、ぜひイベントへのご参加もお待ちしています!
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