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テクダイヤ耐摩耗kaikaノズル 使用レポート

テクダイヤさんの耐摩耗kaikaノズルのレポートです。結論から言えば良好です。これまではルビーノズルを常用していましたが、今は耐摩耗kaikaに切り替えて使用しています。

経緯

実は当初真ちゅうのkaikaノズルがリリースされたときには、あまり興味がありませんでした。私が普段使っているフィラメントはフィラー入りがほとんどで、摩耗性の高いものが多いです。いくら造形がきれいにできても、その造形品質は使用開始時だけで、摩耗によってどんどん劣化していくようであればコスト的に見合わないのではと考えていました。以前から興味深く拝見はしていたのですが、ちょっと自分には縁が遠い世界なのかなと思っていたわけです。そのため、これまではずっとルビーノズルを使い続けていました。

ことのはじめは2021年です。テクダイヤさんで耐摩耗ノズルを試作しており、当方のガラス繊維強化PLAを造形の摩耗評価で使いたいという小山さんからのお申し出が最初でした。

しばらく時間が経ち、この件は忘れていたのですが、ついにノズル試作品ができたという連絡をいただきました。これなら定評のあるkaikaの優れた造形性と、優れた耐摩耗性を併せ持つ、理想のノズルになるのではないかということで、2022年10月より耐摩耗kaikaを使用させていただくことになりました。

耐摩耗kaika(未使用時)

良かった点は3つ

総じて耐摩耗kaikaは良好でした。ルビーノズル比較で良かった点を3点記載します。

1つめは耐摩耗性です。ガラス繊維強化PLAを1kgほど使ってみましたが、条件を全く変えずとも造形仕上がりは変化なし。ルビーノズルに劣らず摩耗の兆候はありません。すばらしい品質です。ただ、これはテクダイヤさんでも十分に評価されたうえだと伺っていたため、それほど驚きはありませんでした。画像は耐摩耗kaikaでガラス繊維強化PLAを造形した時のものです。

耐摩耗kaikaノズルでの造形例(ガラス繊維30%PLA)

2つ目は糸引きです。繊維系フィラー入りとルビーノズルの組み合わせだとどうしても造形の際に糸引きが多くなりがちです。これはフィラーなしの樹脂比較で流動性が悪いこと、ルビーノズルはルビーチップ埋め込みの関係で内部構造が段付きになっていることから、フィラメント押出に高い圧力を要することが理由だと思われます。押し出した際の強い力が溶融樹脂にため込まれて残ってしまい、飛び石造形のノズル移動時に力が遅れて解放され、樹脂のタレから糸引きになるというわけです。

画像は糸引き評価の結果です。左がルビーノズル、右が耐摩耗kaikaの造形です。フィラメントは同じくガラス繊維強化PLAで、スライス条件は2つとも同じです。耐摩耗kaikaの方が糸引きが少ないことがわかります。耐摩耗kaikaの方がより小さい力でスムーズに押し出せていると予想されます。

糸引き評価結果。左:ルビーノズル、右:耐摩耗kaika
(ガラス繊維30%PLA)

3つ目はノズル表面の防汚性です。真ちゅうノズルの頂点付近はどうしても劣化した液状樹脂や、定着しなかった樹脂の切れ端が付着しやすいです。造形品に汚れが転写したり、付着したカタマリが引っかかり運悪く造形品がベッドから脱落することもあります。

汚れが付着した真ちゅうノズル

それに対して耐摩耗kaikaのノズル頂点はツルツルしており、汚れが付きにくいです。約半年使用させてもらいましたが、造形中の観察でもノズル先端にベッタリ樹脂がくっつく様子もなく、ノズルを外してみても表面に目立った焦げ付き汚れはありません。ルビーノズルだと先端チップはルビーですが、ボディは真ちゅうのため、どうしても汚れがついた際に丁寧にクリーニングしないと除去しにくいことがあります。それに対して耐摩耗kaikaは毎回造形終了時にさらっと表面をふき取るだけできれいな状態が維持できていました(全体的に黒いのは加熱で形成される酸化被膜)。

6か月使用後の耐摩耗kaika。防汚性良好。表面の汚れ付着なし。
(全体的に黒いのは加熱で形成される酸化被膜)

最後に

ノズルの摩耗管理は地味に面倒です。摩耗が進行すると知らず知らずのうちにベッド定着が悪くなったり、線幅が狂ってきたり、外観が悪くなったりします。もちろん都度補正しての合わせこみで使いこなせなくはないですが、目視では変化が緩やかでわかりにくいものです。管理や調整する手間はできれば省けるに越したことはありません。なにしろただでさえ不安定要素の多い3Dプリンタで、変動を起こすような要因を一つでも多く排除することの重要性は、造形に苦労したことのある方ならお分かりいただけるかと思います。耐摩耗kaikaが商品化されると造形時の無用な苦労が減り、ユーザー全体の造形レベル向上にもつながるのではないかと思います。

付記:この記事のノズルは2022年10月時点のものです。レシピを変えてさらなる改善が続けられており、「#耐摩耗チャレンジ」 として主に小山さんのツイッター上で随時テストユーザー呼びかけが行われています。
https://twitter.com/KoyamaSkoyama
https://twitter.com/tsume2_shacho

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