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#7 「平面製図と立体裁断の事」

前にブログか何かで書いたかもしれませんが自分が初めて針と糸を握ったのは小学生の頃だったと思います。
もう遥か遠い昔の事なので記憶が曖昧な部分もあるのですがそれらを使って何かを作ったのは家庭科の授業でのナップサックだった様な。もしくは座布団(みたいなもの)・・・だったかも。
その当時の担任の先生は良くも悪くも?面白い人で他のクラスではミシンを使って同じ物を仕上げていたのにも関わらず何故か自分達のクラスだけはミシンを使う事を許されませんでした。
その代わりとして一から手縫いで全てを仕上げるという初心者には超ハードルの高いことをやらされた記憶が。。。

一針、一針手で縫うのは作った事も、ましてや針を手にした事すら無かった自分には気の遠くなる様な作業で辛い以外の何物でも無い位な作業だったな。。。
(しみじみ)
もしかすると今思えばその先生はまだミシンの無い時代の大昔のお針子さん達の大変な苦労を体験させたいとか、
苦労して作った達成感とか、喜び、自分だけの作品への愛着とかを持って欲しい・・・
なんて事を考えていたのかもしれません。
違うかもしれませんが。

その先生の信念みたいなものは本人では無いので分かりませんけど
ただ、たまたま授業でそのペラペラした生地を縫わされていただけの事でもそこには知れば知るほどに厚みなんかがあって、掘り下げればどこまでも深みがあるって事を言葉では無くて行動から生徒に感じさせるのが上手い先生だったなぁと振り返って思う、気がする。

ただ、そんな辛い経験?のお陰で自分自身は家庭科があまり好きになれず針を使うことから遠ざかっていたのですが
ひょんなことからこの世界へと足を踏み入れる事となるのだから人生って面白いですよね。。。
その勇気を踏み出した一歩目、自分の中での服作りの始まりが専門学校での授業からとなるのですが
そこに入って初めて服作りには大きく分けて二つの方法があるって事を教わった。
厳密には服作りというか、服の型紙作りの仕方・・・になるのですが。


それがタイトルにある様に「平面製図」と「立体裁断」の二種類の方法、です。



服の型紙。設計図を形にする作業。


平面製図」とは人体の寸法と作りたいデザインを照らし合わせ、それぞれの部位を数値化して原型となる型紙やあり型(元になる型紙)などを使い物差しなどの製図用具を駆使して紙の上でデザインを落とし込んでいくやり方で
立体裁断」とはトルソー(人台)に直接布を置いて作りたいデザインを手とハサミと針を駆使して形作る方法です。

今現在日本で見られる「洋」服としての原型はヨーロッパから始まったのですが
ただ単純に布を纏うといった簡素な衣服から立体構成(立体裁断)の衣服に移行していったのは15世紀の初めだったそう。
そしてその後人体の解剖学の発達によりメカニカルな数値による割り出し製図(平面製図)の技法が生み出されました。。。



洋服の原型。学校ではおそらく最初に学ぶであろう製図の形だと思います。


日本の平面製図はアメリカで普及されたものを受け継ぐわけなのですが
日本人とアメリカ人(欧米人)との体型の相違で中々そのままを適用するという事が難しかったそうです。
そこで、日本人の体型に添った日本人による日本人のための独自の方式が生み出されます。

今はどうなっているのかは分かりませんが、自分が学生の頃はそれらの原型の製図を一から引くところから始まってその原型を使って実際の服の製図までを完成させるという授業を受けたなって記憶があります。

平面製図はその構造上服としての完成品を頭の中で構築しながら線を引かなくてはなりません。
着丈や身幅はもちろん、見た目のシルエットや生地の落ち感、ドレープやギャザーなどの分量、動いた時の筋肉の流れや体のラインに正しく沿っていてストレスが無いかなど見た目の美しさと機能性などをデザイン画を元に形にしなければならず
その分野においてかなりの熟練者でなければ求める物には辿り着かないとも言われています。


ヴィオネ。立体裁断の祖の人とも呼ばれている


それと対をなしたやり方である立体裁断。
人台(ボディ)に直接布をピンで刺しながら形作れるので視覚的にシルエットやライン、ドレープやギャザーなどのデザイン的な分量が分かりやすく、それにコントロールもし易い。頭の中で想像していたモノがダイレクトに目の前で形になる、といった感覚でしょうか。

布を直接カットしながら作りたいものへと形を変えるそのパターン作りは
想像力を最大限に落とし込めるやり方でもあり、型破りな服と言いますか、
まだ見た事もない様な服作り、複雑なカッティング、特殊な生地による落ち感や生地のダレ感などを確認するのに威力を発揮するのかなと自分自身は思います。。。

シルエット、人体に対するゆとり量の計算、地の目の正しい通し方、デザインと生地との融和性を導いていく事など一言で言えば「美しい服」かそうでないのかを判断するにはやはりこちらの製図方法もまた素晴らしい感性と熟練した技術が必要となってくるのだと思います。

これはどちらの方が優れていて、どちらかが劣っている・・・という訳では無く向き不向きの問題。
どちらかといえばカチッとフォーマルで普遍的なイメージの物は平面製図で作りやすく
どちらかといえば前衛的でコレクションブランドに見られるような見た事もない様なクリエイティブな服は立体裁断が得意とする所なのかも知れません。。。


自分が作る服はクリエイティビティと言うよりも日常に溶け込む様なディリーウエアがメインになっています。
なので平面製図を駆使して型紙を作るのですが、たっぷりなドレープやギャザーを駆使したワンピースを作る事も多いので時々立体裁断も取り入れたりと
服作りとしては中々にいいとこ取りの面白いやり方が出来ていますね。。。

まだまだ「熟練者」と呼ばれるには修行が必要ですが(汗)。

このブログを書くにあたり、久しぶりにヴィオネの資料本を開いたのですが
「バイヤスカットの創始者」とも呼ばれているヴィオネの作り出す独特のドレス達を見て凄く良い刺激を受けました。
と同時に「こんなに難しそうな形、どうやって考えたんだろう・・・?」なんて疑問も浮かんできたり。
作り手としてはいつか、時間が取れる時に写真にあるドレスを再現してみたい!なんて、ちょっとだけ思うのでした。



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