変身(アイドルバージョン)

ある朝、グレゴール・ザムザが嫌がらせのような夢から目覚めたとき、自分がベッドの上で一人のアイドルに変ってしまっているのに気づいた。
彼は鎧のような動きにくい服を着ていて、性別も変わっており、ベッドはアイドルの楽屋のような所にあったが、家にあるベッドと同じだ。
「私はどうしたんだろう?」と、彼(今となっては、彼女)は言った。
一人称も「私」になっていた。
ザムザは現在の状況を大方理解すると、ステージに向かった。すると、手が伸びて、ザムザを止め、
こう言った。
「だめでしょ、ルーゲンバッハ。開演は6時でしょ」ザムザは、もう現在の状況は大方理解したものの、今の設定がどうなっているのか、さっぱりわからなかった。
こんな声が、ザムザには聞こえてきた。
「今日のルーゲンバッハ、なんか変ね。」
「そうね、アイリス。何かちょっと顔も変わってるし。」
「マシュマロがまだ来ないから心配してるんじゃない?」
彼はますます分からなくなった。マシュマロって一体誰だ!?
彼女は更に二人の話を聞いた。
「キチー、“ノヴァ”はまだ続けられる?」
「もう財産不足だからあんまりだわ。」
「そしたら5人はどうすると思う?」
「財政難に陥るわ。」
これ以上聞くのはやめておいた。
ザムザは“ノヴァ”はキチー、アイリス、マシュマロ、ルーゲンバッハと後もう一人でできていることは分かったものの、“ノヴァ”が分からなかった。
もう開演時間だ。やるじゃないかと思うぐらい、大きなビーという音が出た。
後ろから声が聞こえてくる。男の声だ。
「開幕の前に残念なお知らせです。
ミス・マシュマロは本日休演……わぁ!」
激しい観客の声が聞こえてくる。
こちらにオレンジジュースの缶が飛んできた。
最初はまるで雲のようにふわふわ飛んでいたが、着陸してから乱暴な音がして地面を360度回った。
幕から、弱々しく男が出てきた。
蝶ネクタイに黒いスーツという、喜劇スタイルの服を着ていて、彼は弱腰のまま小走りで逃げていった。
その時、またアイリスの声がして、
「あ〜ら、マシュマロ!みんな待ってるわよ。」
どうやらマシュマロが到着したようだ。アイリスは叫んだ。
「みんな落ち着いて!マシュマロはここについたわ!」
わぁーという声が響く。
「ラーマも着いたわ!!さあ、行くのよ!」
よく分からないながらも、ザムザは舞台へと走った。
Ⅰ 終

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