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あの時の選択が今の幸せに:違う視点、同じ思い

15年ほど前、私は起業の準備をしていた。いくつものセミナーや講演会で、自己啓発に熱心な人々とともに過ごし、自分を高めようと努力していた時期だ。その頃、夫は単身赴任中だった。

ある日、女性起業家向けのセミナーに参加した際、講師の女性が白いスーツを颯爽と着こなし、こう言った。「失敗する時も勢いをつけて落ちれば、どん底まで落ちてもその反動で一気に浮上できます。」その言葉に共感し、週末に帰宅した夫に興奮して話した。

「私が今やっていることも無駄じゃないんだよ!」と力説した私に、夫はいつものように「へー」とか「ふーん」と流すかと思ったが、その時は違った。

夫は静かに言った。「視点が違うと思うな。家族にどん底を見せないために、俺は毎日頑張ってる。どん底から這い上がるのは並大抵のことじゃない。落ちるなら、もし落ちるなら、できるだけ緩やかに、いつでも元の状態に戻れるように。」

夫の言葉に驚いた。
15年前と言えば、息子の太郎が思春期で手がかかる時期だった。家のことも子育ても一人でこなしていると思っていた。夫の仕事人間ぶりに不満を抱くことも多かったが、彼には彼なりの信念があったのだと気づかされた。

いつも私一人だけが戦っているつもりだった。夫も7人の敵と毎日戦っていたのだなぁ。

今振り返ると、夫のその言葉は家族を守るための責任感から来ていたのだとわかる。私が自分の夢を追いかける間も、彼は家族の安定を守るために働いていた。その違う視点が、今の私たちを支えているのだと思うと、感謝の気持ちが湧いてくる。

あれから15年、子どもたちはそれぞれ家庭を持ち、長男の太郎も今では立派な父親になっている。かつて仕事人間だった夫も、歳月を経て穏やかになり、来年からは年金を受け取る年齢だ。私は、そんな夫のおかげで、こうして涼しい部屋でnoteを書いている。

振り返ると、私たちは互いに支え合いながらここまで歩んできたのだと思う。違う視点を持ちながらも、家族を守りたいという共通の想いがあったからこそ、今の幸せがあるのだと感じる。これからも、互いに感謝の気持ちを忘れずに歩んでいきたいと思う。


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