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喜びのかたち:サプライズと待ちわびる楽しみ

7月の初め頃、80代の両親に冷凍食品を大量に宅急便で送った。
ケーキやサバの味噌煮、ちゃんぽんや今川焼きなど、自然解凍や電子レンジでチンすればすぐに食べられる、両親の好きそうなものだけを選んだ。

連絡をせずに送ったのにはいくつかの理由がある。基本的に、長時間不在にすることはなく、超田舎なので、不在でも玄関先に置いておいてくれることが分かっているからだ。もう一つ、実家には超大型の冷凍庫がある。そして何より、私自身が突然のサプライズが好きで、嬉しいと思うからだ。

冷凍食品の詰まった箱が両親の元に届いたときの反応は予想通りだった。まるで子どもがサプライズを受けたかのように、届いた瞬間からの様子を饒舌に伝えてくれた。突然のサプライズが、よほど嬉しかったのだろう。

昨日、「近いうち、また送るね」と父と電話で話した。今日、第2弾の発送を手配した。前回の両親の喜びようが嬉しくて、また驚かせて喜ばせたいと思ったのだ。

しかし、ふと夫が言った。
「連絡はしたの?」「してない」「なんで?」「突然が嬉しいから」「待つのが楽しみかもよ。」
夫の一言で、別の可能性に気付かされた。
もしかしたら、両親は事前に知っていて、楽しみに待つことが好きなのかもしれない。生まれてから一番長い付き合いの両親だが、どちらなのだろう?

試しに早速、母に電話をした。
「今日、宅急便送ったから、明日着くよ。お父さんが絶賛していたリンガーハットのちゃんぽんも、お母さんの好きなチョコレートも入れてるからね。」
「あ~、そう!! 明日着くの?? お父さんが、ナツから近いうち宅急便が届くぞ!と楽しみにしてたわ。」と、母の声も弾んでいる。

サプライズの楽しさも、期待の楽しさも、どちらも大切にしたい。どんな形でも、変わり映えのしない両親の日々の暮らしに喜びが生まれることが一番うれしいから。Images created with Canva

突然のサプライズが好きな人もいれば、予定を知って待ちわびることが好きな人もいる。この違いは何なのだろう?

考えてみると、サプライズを楽しむ人は、予想外の出来事がもたらす興奮を求めるのかもしれない。一方、待ちわびる楽しさを感じる人は、その期待感と準備の時間を楽しんでいるのかもしれない。今頃、両親は明日の宅急便の中身に期待が膨らみ、想像が広がる時間を楽しんでいるのかもしれない。期待が膨らむことで、受け取る瞬間の喜びもまた一層大きくなるのだろう。

なんてことないことを、宅急便ひとつで思いを巡らせた今日の午後。
さて、明日の両親からの電話を楽しみに待つことにしよう。


ナツ

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