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コント集

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オチのない世界で僕らは一体何を語ればいいのだろう。
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2021年7月の記事一覧

お盆に帰れぬ夏

 昨日田舎の兄から電話があった。兄は私が電話に出るなり今年は絶対に帰ってくるなよと言って…

25

尊氏と直義

 後に室町幕府の初代将軍と呼ばれることになる征夷大将軍の足利尊氏とその弟である三位の足利…

13

昨日いらっしゃってください

 人間は変わるもの。そして忘れやすいもの。だから人は変わってゆくし、過去のことなんてすぐ…

12

別れ

 二人の間に電車が走って来る。踏切越しの二人。もう踏切は降りて渡ることはできない。さよな…

14

戦国トライアスロン

 トップを駆けているのは足利三人衆だった。三人衆のうち義輝と義昭は兄弟で義栄は遠い親戚だ…

12

『オリンピック初めて物語』

 闘技場の門が重苦しい音を立てて開き、その中からアテネの闘技場に裸の男たちが現れた。今日…

26

長編小説の効率的な使用法

 古い友人に再会した。僕は友人に再会した瞬間奴の姿を見て思わず笑ってしまった。歳月ってのは人をこんなにも変えてしまうものかと思った。きっと奴も僕を見て心の中で笑っていただろう。「いやぁ、ほんとうに老けたものだなぁ」と。  僕らは再会の印にビールを注いだ。まずジョッキをカチリと当ててから思い出話や互いの近況を語り合った。不思議なことに二人とも独身だった。互いにモテないわけではなかったがこれも運命さと自嘲して苦笑しながらビールをチビチビとやった。それから僕は奴に今は何をしている

幸せすぎて

悲しくなるの。と彼女はつぶやいた。僕がどうして?と聞くと、彼女は逆にあなたはそんな気持ち…

21

初心に帰る

 初心に帰ってやり直す。そんなことが本当にできるのだろうか。一からリセットしてやり直す。…

18

離婚物語

 結婚に物語があれば当然離婚にも物語がある。岡崎夫婦は離婚届を前にして夫婦としての最後の…

16

恋泥棒

 すべてを失った僕は何もできずこうして立ち尽くすだけだ。あんな女に恋なんてするんじゃなか…

11

反転する宇宙

 その業績で世界のあらゆる賞を受賞し、残るのはノーベル賞のみとなった科学者春馬毛鈍博士は…

30

遺産相続

 父親が郊外の安アパートで孤独死したと連絡を受けた三兄弟は揃ってアパートへと駆けつけた。…

27

向こう岸の女(ひと)

 向こう岸の女が僕に手を振っていた。僕は彼女に応えようと手を振るが、二人の距離が遠すぎてまるで伝わらなかった。僕は彼女に会うために川を泳いで渡ることにした。幸いにも僕は水泳が得意だった。軽くストレッチをして僕は川に飛び込んだ。自然の川は急な流れて僕を飲み込もうとする。そして上からは何故か石が降ってきた。だけど僕は負けなかった。僕は降ってくる石に耐えながらクロールで水をかき分けとうとう彼女のもとにたどり着いた。そして岸へと上がり彼女を見た。  彼女はホワイトボードを胸にかざし