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自然の不思議なちから「フィトンチッド」   動くことのできない木が自分の身を守るために

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動くことのできない木が、弱肉強食の自然界で何年もかけて成長するのって、改めて考えてみると不思議じゃないですか? 本来なら、外敵から攻撃を受けて、成熟する前に淘汰されてもおかしくないはず。にもかかわらず、立派に成長できているのは「フィトンチッド」という物質を発散していることが大きく関係しています。今回はそんなフィトンチッドについてみていきます。

フィトンチッドとは
木が、虫や微生物といった敵から身を守るために放出する、さまざまな成分をひっくるめてフィトンチッドといいます。基本的には、虫や微生物にとって「毒」となる成分で、これを発散することによって葉っぱを食べつくそうとする虫を追いやったり、光合成をジャマする悪い微生物を寄せ付けにくくしたりしているんです。

そんなフィトンチッドがどんなニオイかというと、みなさんも一度は嗅いだことがあるであろう、あのやさしい「森の香り」です。虫や微生物にとっては厳しいニオイも、人間が嗅ぐとホッとするから不思議ですよね。

人間も、ものすごく高い濃度のフィトンチッドを吸えば毒となりますが、森のなかに漂っている程度であればよい作用をもたらします。少量のカフェインであれば、リラックスできるのと同じかもしれません。

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フィトンチッドの効果
私たち人間にとって癒しをもたらしてくれるフィトンチッドは、リラックス効果以外にも次の3つの作用を発揮してくれます。

<主な作用>
〇消臭
フィトンチッドは、くさいニオイの原因となる成分に付着して無臭化します。森のなかには動物の亡きがらや腐った植物などがあるにもかかわらず空気がさわやかなのは、フィトンチッドの消臭作用があるからです。

〇除菌・抗菌
フィトンチッドは、除菌・抗菌の力も秘めています。笹団子、柏餅が葉っぱにくるまれているのは、こうした作用を利用するためです。

〇抗酸化
老化の原因となる活性酸素を取りのぞき、酸化を防ぎます。お寿司屋さんやスーパーの鮮魚コーナーなどでは魚の下にサワラの葉を敷き、フィトンチッドによる抗酸化作用で魚の鮮度を保っています。

虫や微生物には厳しく、人間に優しいフィトンチッド。今まで何気なく嗅いでいた木や森の香りに、フィトンチッドという優れた効果が隠されていたと知れば、日々の生活が少し面白くなるかもしれません。みなさんもぜひ、日常に潜む自然のスゴさを探してみては、いかがでしょうか。

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