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映画「パーフェクトデイズ」で、街角の解体跡地を前に、お爺さんが平山さんに、ここなんだったかな? って聞くんですよ。 で、ふたりとも家の近所だったんですけど覚えてなくて。誰かが覚えてないと、すぐ忘れられてしまうんですよね。無かったことになっちゃうんですよね。何でも。 だから写真撮っとこう。散歩ついでに。日常を。って思っちゃいました。 PENTAX LX.
半径1キロ少々の空間に封じ込められた さまざまな事象を同時に定点観測できたとしたならば、それはどんな群像劇として私の網膜に記憶されるのでしょうか。喜劇たる狂言でしょうか? それとも悲劇たる能なのでしょうか? そのようなことはありえないのですが、半径1キロ以内の空間、前後1時間以内の時間が刻み込まれた36枚を内包した1本のモノクロフィルムを俯瞰して見た時、それは白昼夢として私の脳内に再記録されるのでした。 村田和人の「一本の音楽」ではないですが、1本のフィルムが私にそう
夏になると海のにおいが恋しくなります。 潮が「朝」のもので、汐が「夕」のものだと先日知りました。なるほど、文字ってすごいなあ。 私は朝の海も、ゆうやけこやけな海も好きですが、遅い昼の海も好きなのです。でもこれって汐・・・ってコト!? 違いますよね、通常は1日2回の高潮と低潮があるそうなので。 汐までもう少し待てば良かったですね。でもその前にタイムオーバー。遅い昼の海を散歩して、数回シャッターを押して、私は後ろ髪をひかれつつ帰路につくのでした。 Fantôm
あてもなくドライブする目的があるとするならば それは、夏かしい風景を探しているからなのかもしれません。私の記憶にあるはずのない風景。それでも心にはある風景。 記憶にない風景とは、忘れているということではありません。いままで一度も経験したことが無いであろうということです。 それでも心にはあるのです。あの夏かしい懐かしい風景は。おそらく口伝を聞くことで、もしくは小説や映画を観ることで、あるいは前世や来世の記憶なのかもしれません。 兎に角、私は、それらの風景を探
ガラスは固体か液体か 私はガラスを写すのが大好きです。 なにかのなにかでガラスは液体だと聞いた気がするのですが、先日アモルファスだという文書を目にしました。アモルファスという言葉をはじめて聞いたのは高校時代のことでした。 イギリスの文献学者 John Ronald Reuel Tolkien の小説「指輪物語(The Lord of the Rings)」の中で、ミスリルと呼ばれる架空の金属が登場します。 学生時代遊んでいたボードゲーム中に、こんな会話がありました。
思いましたが、やはり冬はくるのですね きょうはとっても寒いです。 今年の夏はとてもあつい夏でしたから、もう二度と冬は来ないのかもしれないと思っていたのですが、やはり地球は回っているということなのですね。 そして冬が楽しみになりました。 そして春が楽しみになりました。
冷たくされると泣きたくなる天気のはなし 冬ですね。 先日、ちらちらちらりと今年の初雪が通り過ぎていきました。 気温は0.2℃。氷点下まで下がらなかったですし、積もるということもありませんでした。初氷をまだ見ていない気がするので、今回の初雪は上空の冷たい雲からのギフトだったのかもしれません。 雪は美しいのですが、寒いとなんだか泣けてきてしまいます。 子どものころ、冷たい夕暮れ、一度だけ泣きながら下校したことがあります。地吹雪吹き荒ぶ時などは、歩道など逆に危険
縁日の金魚すくいに、濡れたポイ むかしむかし、私がまだ子どもの頃のことです。 春彼岸のお墓参りの日には、お祭りでもないのにお寺の門前に屋台が数軒並んでいました。流石に食べ物屋さんはありませんでしたが、子ども相手におもちゃ屋さんと金魚すくい屋さんが居たことを覚えています。 私はいままで一匹も金魚を掬えたことがありません(いつもおまけで一匹もらえます)。その時に使う、金魚を掬うための和紙製の道具を「ポイ」と呼ぶそうです。 ポイは最初に水に浸すのがコツだよ、と友人は言
短すぎる秋が通り過ぎようとしています 熱風を帯びた夏でした。 今年をいつか振り返ることがあるとしたならば、あるいはこのように思い出すのかもしれません。 でも今現在の私は、短すぎる秋への感傷です。 年々、春と秋が短くなり、夏と冬が永遠となる、なんてことにはなりませんように。 夏と秋の擦過痕が冬を呼ぶように、もう山頂は雪化粧です。それでも少しだけ、童謡の世界のような秋に浸ることができました。 涼しい風なのに、紅葉はまるで炎のよう。去りゆく秋に、残火のようなホムラ
線路と交差する坂道を 私の町に、鉄道駅はありません。 ですので小学生までは、駅とはバス停のことでした。 線路や踏切は、子どもが歩いて行けない距離にあります。それでも私にとって鉄道という言葉は、不思議と懐かしさを伴う音色でした。 ある日の雨の夜のことです。 しとしと落ちる水の音に混じって、ガタンゴトンと列車の駆け抜ける音が聞こえてきました。あんなに遠いと思っていた線路から届いてくる静かな音。それを寝物語として聞いた記憶が、懐かしさを醸し出していたのです。 ある夏